第2話
街からある程度の距離を取り、周りに人影が無い事を確認してから一応黒緋にも確認を取る。
「黒緋。周りにプレイヤーは居ないよね?」
俺の質問に相変わらず元気に「ワンワン!」と肯定っぽい返事を返してくれた。
ここならば、話しても誰かに聞かれることはないだろう。
別にそこまで気にする必要はないかもしれないけど、まだあまり出てない情報かもしれないし、ネットゲームでは、色々と怖いこともある。
気にしすぎと言う事もないだろう。
黒緋にも確認が取れたことだし、改めて2人に向き直り街を出てこんなところで話しをする理由を説明しはじめる事にしたんだけど…… どうもそんなに簡単にはいかないっぽい。当然って言えば当然か。
「えっと、それで話しなんだけど」
「ちょ、ちょっとまって! その前に、先にその足元の子の事を教えてよ。その子は……」
やっぱり気になるよな。それに、黒緋を気に入ったスイーツさんだし、翡吹も気になるのは当然だよね。
翡吹も黒緋に負けず劣らず、凄く可愛いし。
でも、何と言うかここまで必死になられると、逆に意地悪したくなると言うか……
別に俺は、ドSって訳じゃないんだけどな…… 少しもったいぶりたくなる。それに少し気になっていた事もあるし……
「あぁ。うん。そうだ! ミノール君。『ベルドッグ』可愛いね。でも、確か御法って名前の雌じゃなかったっけ?」
そうなのだ。確かテイミングした後に雌だからそんな名前にするって聞いたけど……
黒緋を名付けた時そうだったけど、犬の座り方は、雄雌で微妙に異なる。
だからあの時、その子は雌だと思ったし、ミノール君への甘え方からもそう思っていたんだけど。
「あぁ。それなんだけどさ。あの後街に戻ってスイーツと少し遣り合ってさ。んで一人になった時に、折角仲間になったんだからとコイツを鑑定したら、何か雄でさ。名前ミスったって激しく思ったら、名前の再設定? 何か付け直しが出来た」
いや。付け直しが出来たって。そんなの出来るのか?
出来ないと決め付ける事も出来ないし、実際にミノール君は付け直ししているし……
一体どういうことなんだろう。
少し思案しながらふと横に目を向けると、そこにはヤバイ状態のスイーツさんが居た。
何か体育座りしながらブツブツと「別に良いんだ。どうせ私は未だ一人だし……」とか呟きながら地面に『の』の字を書いている姿がある。
スイーツさん意外と打たれ弱いのかもしれない……
「そっか。理由は俺も想像付かないけど、今はそういうことも出来るんだとしか言えないね」
「ああ。それでコイツは雄だったんだ。それで名前は『フェン』って付けた。よろしくな」
ミノール君が『ベルドッグ』を紹介してくれると、傍に居たフェンが「ワン!」と返事をした。
『ベルドッグ』は、どの子も頭がいい気がする。
そんなやり取りをして、これ以上は危険だと思い改めてスイーツさんに目を向けると、こちらを見ていた。って何か目が、おかしい。目のハイライトが消えて死んだ目とでも言えば良いのか……
「あら。もう良いの? どうせテイミングしていない私は、そんな会話には入れないし。別に良いよ」
これは明らかにヤバイ。
「ごめんごめん。少し苛めたくなっちゃった。それでスイーツさんのテイミングと合わせてになるんだけどちょっと気になることがあって、それの話しをしたかったんだ」
改めて話しを再開させる。
死んだ目をしていたスイーツさんだけど、俺がテイミングの事と合わせてと言うと、今度は凄く悲しそうな顔になってしまった。
何か勘違いしているっぽいな。
「もしかして……私には、そのわんちゃんをテイミング出来ないとか……?」
あぁ。俺の言い方が少し悪かったか。
確かに今の状況だと勘違いしても仕方ない気はするが。
慌てて訂正する。
「違う違う。テイミングが可能かどうかは、正直に言うとまだ不明。でも、多分だけど出来ると思うよ」
俺の「出来る」発言に、凄く目を輝かせてこちらに向き直った。って近い近い。
「ほんとっ!? 私もその子ゲット出来るのねっ!?」
「近い近い! 情報が少なすぎて多分としか言えないんだけどね」
近づきすぎのスイーツさんを少し落ち着かせ、説明を始める。
「まず、この前のテイミングした時の件でテイミングにプレイヤーの種族が関係あるっぽい事が分かったよね」
あの事件は、ひどかった。
微妙に気まずそうにミノール君は、視線をずらしている。
「それで、プレイヤーの種族とテイミングするモンスターの種族は成功率に関係するんだとは思うんだけど、相性の悪い種族だからといってテイミングが全く出来ないって事じゃないと思うんだ」
俺の話しを聞いて、益々スイーツさんの目が輝いてる。
それを見て少し苦笑しながら話しを続けた。
「俺が黒緋以外にこの子を連れている理由にもなるんだけど、その関係でこの子をテイミングしたんだ」
「そう! その子よ! 何よその子。可愛いのはずるい!」
いや、それはおかしいだろ。可愛いのはずるいって…… 言いたい気持ちは理解してあげれるけど……
「まーまー。最後まで聞いて「あんたは黙ってて」ごめんなさい……」
ミノール君。俺を助けてくれるその心意気は凄く嬉しいが、タイミングが悪い。
「大丈夫。ちゃんと説明するから」
そう言いながら、俺の傍に「私の話し?」とでも言いたげな顔をしながら擦り寄ってきた翡吹を撫でながら続ける。
「この子は『コードラ』って竜種のテイミングしたモンスター。テイミング自体は、結構苦労したんだけどそれはまた今度話すとして、この子をテイミングした切欠は、クエストなんだ」
俺のクエストが理由って事が、今一分からないのか「クエスト?」と頭の中にハテナマークを浮かべるスイーツさん。
ミノール君は、もう話しに入らないと、フェンとじゃれ始めている。まぁ……今はそれが安全策かも。話し自体を聞いても理解出来ないってもあるかもしれないし。考えるの苦手って言ってたし。
「うん。黒緋を連れて始まりの街でクエストでも受けようと街の民家を巡っていたら、あるクエストを受けることになったんだ。そのクエストが【Rクエスト:苦手なテイミング】ってやつだったんだ」
俺のクエスト発言に予想外だったのか、ハテナ顔を浮かべながらも、しっかりと話しを聞いているスイーツさん。大丈夫だから、テイミング不可能じゃない限りは『ベルドッグ』をゲットするまで付き合うよ。だから、そこまで必死にならなくても良いよ?




