第20話
鬼の形相とは、多分この様な表情を言うんだろうなと変な事を思いながら、ベッドの傍に立つ人物を見る。
自分の母親であり、ある意味凄い人。
何が凄いかと言うと、仕事は一切していなく専業主婦であり特別な特技なども一切ないのにも関わらず、世界は自分を中心に回っていると思っているところだ。
小さい頃は、母親の役に立ちたい子供心のまま、手伝いを申し入れると、嫌悪感を出し何もするなと言われ、黙って何かをすると面倒をかけるなと罵倒された。
本当に良く俺は、普通の高校生になったもんだと改めて思う。
そんな母親が「ゲームばっかりじゃなく家の事もしなさい」と言うという事は、つまりは……せざるをおえない。
「悪かったよ。それで母さん、何をすればいいの?」
すでに諦め、半ば悟りを開いている様な状態だから素直に言う事を聞く。
「分かれば良いのよ。買い物に忘れ物があってね、スーパーまで行って買ってきて頂戴」
「了解。他には何かある?」
少し思案する母親だったが、特に思いつかなかったのか「ないから早く行ってきて」とお金を渡してきた。
俺は、そのままお金を預かり家を出るために着替える。といっても上に来ているTシャツのまま、下にジーパンを履いて出るだけだけど。
スーパーまでは、歩いて10分も掛からない。大通に出て通り沿いに歩きながらさっきの事を考える。
クエストは、クリアした。そして新たにスキルを取得した。
従者との絆と言う名前のスキル。効果は、従者の好感度が下がりにくくなる。
下がりにくくであり、下がらないでは無いところに、そこはかとなく運営の意地の悪さが伺えるけど、初期段階で全く下がらなくなる様なスキルを入手するのもどうかと思い直す。
先に進めば、同種のもっと強力なスキルを入手出来るのかもしれないし。
好感度。
初めて出てきた未知のパラメーターだ。
普通に考えれば、テイミングしたモンスターとの関係性に変化があると思って良いだろう。
だけど、これに関してもあの運営の考える事だと言う事が頭にチラつく。
まだ情報がほとんど出ていなく、俺が到着した時に開拓村に他プレイヤーの姿が見えなかったことから、これに関しての情報はすぐには出てこない予感はあった。
そもそもクエストの発動条件からして、少し特別な感がある事だし。
初期の段階だから、苦手モンスターのテイミング自体はされている気はするのだが……
MTO内で出会ったスイーツさんの様な、自分の種族など考えずにテイミングしたいモンスターをテイミングするといった事は、少なからずやる人が居るだろう。
それどころか、そこに居たからとりあえずテイミングをするといった行動をする者もいるはずだ。
そんな事を考えながらスーパーに到着した。
買い忘れた野菜と牛乳をスーパーの籠に入れレジへと向かう。一瞬お菓子やジュースに目を向けるが、余計な物を買った時の母親の反応が分かりすぎているのであきらめる。
すると、お菓子が販売されている棚のところからこちらに歩いてくる男女と目が合った。
目が合った瞬間声がかかる。
「おう! 神宮寺じゃないか」
「神宮寺君。こんにちは」
学校のクラスメイトである二人だった。
男性の方は『観刈谷 実』。
スポーツ万能で、学校のバスケ部のエースだ。身長も183㎝もあり、顔もイケメンと言って良い感じの顔つきをしている。
ただ、頭の方は少々残念な感じで、スポーツ馬鹿だとクラス内で認識される。元気があり良くも悪くもクラスのムードメーカー的なポジションに居る。
女性の方は『哀川怜那』。
こちらは、観刈谷と真逆で頭で考えてから行動をするタイプの人間だ。ただ、クラス内の共通認識であるところ『しっかり者だが、何処か抜けているところがある』との評価も受けている。
真面目なのに、宿題を忘れるのは日常茶飯事。悪い時は、学校の時間割を1日単位で間違っていて教科書などを忘れる事がある。
ちなみに外見はかなり良いのだが、背が低いのでクラスからマスコット的扱いを受けている。本人は胸が小さく背が低い子供っぽいのがコンプレックスらしい。
「神宮寺も買い物?」
「俺は、母親に買い忘れた物があるからって頼まれてね。二人は、デート?」
「神宮寺君。それだけは絶対ないわ」
無いとは分かっているが、一応の突っ込みをしてみた。
この二人は、良く一緒に行動をしているのだが恋人関係という訳ではない。
家が隣で親同士が、会社の同僚。生まれた病院も一緒で、生まれた日も一緒。更には幼稚園から高校まで、何とクラスもずっと一緒らしい。
普通ならばこんな幼馴染が居たら、恋の一つも生まれそうだが、お互い距離が近く知りすぎている為に逆に無理なんだそうだ。
クラス内でそんな話しになった時に、二人ともそう言っていた。
「俺はさ、ちょっと罰ゲーム的な理由で怜那に付き合ってんだよ。新しいお菓子の味見役兼財布らしい」
少しゲンナリした顔をしている。
哀川さんは、お菓子作りを結構やっているって話しだから、味見役は別に良いのだろうが……原因は財布役か。
「それはそれはご愁傷様」
「神宮寺君。良いのよ気にしなくて。この馬鹿が悪いんだから」
どうやら原因は、観刈谷にあるらしい。どうせいつもの馬鹿を発揮して、考え無しに何かをやらかしてしまったんだろうと簡単に推測出来る。
「あぁ、いつもの、ね?」
少し笑いながら言うと「そうなの」とこちらは少し困り顔で言ってくる。
「もう散々謝ったじゃねーか。もういいだろ」
散々謝ったらしい。ただ、反省の色はあまり見えないけど……まぁ、これもいつもの事か。
「あんたね……あれは、私だけじゃなくて全くの知らない人にまで迷惑かけたから当然よ。全く……ジンク君にどうお詫びをすればいいのか……」
ん? 何か、今、良く知った名前を聞かなかったか?
「あの人凄い良い人だったよな。確かにあの人には悪い事したのは分かってるから今度会ったらしっかり謝るよ」
「当たり前よ。本当なら私のわんちゃんになるはずだったのに! 全くもう……ってごめんね、神宮寺君。ちょっと新しいゲームで色々あってね」
これは、もしかして、いやでもそんな偶然……でもわんちゃんって。それに新しいゲームって。
この二人って……あの二人、なのか?
「おい、神宮寺。大丈夫か?」
「神宮寺君、どうしたの?」
二人とも唖然とした顔をして俺を見てきた。
そんな二人に、俺の推測を口にして確認してみた。
「もしかして、スイーツさんと、ミノール君?」
お気に入りとアクセス数が、えらい事に……
お気に入り500件突破しました! 本当にありがとうございます。
スローペースのままですが、今後もよろしくお願いします。




