第19話
どうやらクエストは、無事に完了した様だ。
改めてテイミングした翡吹に目を向ける。
相変わらず何処かマイペースを思わせる目をしている、何というか、感情をあまり出さないのかもしれない。
そんな事を思いながら、翡吹の頭をナデナデしてあげると「キュイキュイ」と鳴きながら頭を擦り付けてくる。なにこれ。凄く可愛いんだけど。
感情をあまり出さないって言ったの誰だ!?
凄い甘えてくるじゃないか!
どうやら撫でられるのが、というよりは、触れ合うのが好きな様に思う。
頭だけじゃなくてノド辺りも撫でてあげると、凄く喜んで居るのが分かる。
ゾクゾク!
な、何だ今の!? 凄い寒気を感じたぞ!?
背筋が凍るような感覚……
この感覚は……何処かで感じた記憶があるぞ。
不意に襲ってきた寒気を気にしながら、ふと翡吹から視線をずらしていくと、そこには「ウゥー」と低い声で唸るテイミング成功第一号様がいらっしゃった。
何か、薄っすら背後に般若が出ているのは、錯覚だろうか。
どんなシステムアシストだ? それともスキルか?
「く、黒緋! おいで!」
新しい仲間に嫉妬していたのだろうとアタリを付け、黒緋も構う為に呼び寄せると、先ほどまで背後に居た般若が一瞬で霧散し「ワン!」と嬉しそうに尻尾を振りながらこちらに寄ってきた。
それから十数分。俺の大切な仲間である2匹を交互に褒めるという苦行を行う事になってしまった。
まぁ、構うのは嫌いじゃないからいいんだけどね。2匹とも可愛いし。
クエストの条件を満たしたとログが出た事から安心していたが、条件を達成しただけであってクエスト自体はまだクリアされていない。
あの始まりの街にある民家のおばちゃんのところに報告に行く必要があるのだろう。
すでに辺りは夕日に染まり始めていた。
ちなみにこのゲームの内部時間(昼、夜の移行)は、リアルの時間に準ずるらしい。
日本の東京基準らしい。どうせ、この開発の会社がある場所基準なんだろう。
そんな訳で、早く始まりの街に戻らないと日が暮れてくる。
大抵こういったゲームでは、昼間と夜間と出現モンスターが違ったり、モンスターによっては補正が付いたりするはずだ。
動物などは夜行性だったりする場合もある事だし、イメージ的にモンスターは、夜に狂暴化したりするイメージがある。
レベル的に不安は無いけど、現状であえてその危ない橋を渡ることもないだろう。
「暗くなる前に、始まりの街に戻ろう。何があるか分からないし少し急ごうか」
一瞬、しばらくの間、開拓村を拠点にしてレベル上げをしてもいいかとも思ったのだが、先にクエストを完了させる事を優先させる事にした。
この辺りだと万が一があるかもしれないし、黒緋はまだしも翡吹は一緒に戦った事もないしね。
黒緋を見る限りだと、その心配はいらない気もするけど。初の戦闘である翡吹相手にいきなりであそこまで立ち回れたのだから……
2匹を連れて森林を抜け、空が夕暮れに真っ赤に染まる街道を始まりの街を目指し歩いて行く。
こういう風景を見ると、壮大というか何というか。VRMMOならではの経験だな。
実際に地球上の何処かで似たような風景は見れるのかもしれないが、ゲームにログインすれば手軽に体験出来るのだから。
この風景を見るだけでもVRMMOをやる価値がある気がする。
相変わらず草原にある街道からは『ばぶるん』がちらほら見える。
翡吹に手は出さないように言い含めて街道を街に向かって歩く。夕暮れ時にするペットの散歩ってこんな感じなのかな?
特に何事も無く、無事に暗くなる前に始まりの街に入る事が出来た。
始まりの街は、時間帯のせいか多くのプレイヤーを目にする。
っていうか、こっちを凄い見ているぞ。
一瞬なんでだろうと疑問に思ったが、俺の隣で「ワンワン」「キュイキュイ」と2匹が何やらやり取りしているのを見て納得してしまう。
まだゲーム開始初日。
今の時点で2匹もテイミング成功しているのは、稀だろう。それに『ベルドッグ』である黒緋はまだしも、草原では見なかった『コードラ』である翡吹を連れているのだ。
小さいが、見た目はまんまドラゴンだ。やはりプレイヤーの注目を集めるのは仕方ないだろう。
俺だって誰かが連れていれば見たかもしれない。
多くの視線に晒され、俺は少し気まずい感じをしながら街中を目的地の民家に向かって歩く。
隣を歩く黒緋は、何がそんなに嬉しいのか尻尾振り振りしながら。
翡吹は、やっぱりマイペースなのか我関せずのまま一緒に歩いている。
「すいませーん。おばちゃん居ますか?」
クエストを受けたおばちゃんの居る民家に入るなり、誰も居ないことを確認して声をかけた。
他のプレイヤーが居たら、気まずいし確認は大事だよな。昼間は、行列出来るぐらいだったし……
「あらあら。私が言った様に苦手な種族の従者を連れてきたのね」
そう言いながら翡吹をまじまじと見つめてくる。
やはりテイミングされているかどうか分かるみたいだ。もしかすると、誰のテイミングモンスターなのかの判別も出来ているかもしれない。
そうじゃないと、苦手種族をテイミングしたかどうか連れているだけじゃ分からないし。
パーティの仲間のモンスターを連れてきたりする人もいるかもしれない。
「良い眼をしている子ね。利口そうだわ。では、約束通り貴方には良い物をあげるわね」
おばちゃんが、そんな事を言った瞬間に「ぴろりーん!」と脳内で音が響くと同時に半透明のウィンドウが出現した。
【Rクエスト:苦手なテイミング】をクリアしました。
【Rクエスト:苦手なテイミング】の報酬をもらいました。
【取得スキル】従者との絆
どうやらクエスト完了で報酬をもらえたらしい。
ってスキルもらえるのか!? 従者との絆って、どんなスキルなんだろう。
スキルを確認すると
従者との絆:テイミングしたモンスターの好感度が下がりにくくなる
と表示された。
好感度……? 初めて聞くパラメーターだ。
これ、何かに必要なのだろうか?
おばさんにもらったスキルの事を聞こうとした瞬間、軽い酩酊感を感じ視界が暗転した。
一体何が起こった!?
酩酊感が抜け、目を開けると自室のベッドの上だった。
横を見ると……そこには、VRハードの電源コンセントを握りしめ憤怒の表情を浮かべる……世にも恐ろしい、母親の姿が……
「あんたいつまでやっているのよ! ゲームばっかりじゃなくて家の事もしなさい!」
どうやら、ずっとゲームをやっている俺にキレた母親が、VRハードの電源コンセントを引っこ抜いて強制ログアウトさせたらしかった……
えっと、あの、一体何が起こったのでしょうか。
お気に入りが、235件……しかも昨日のPVがいきなり倍の12,000超えを……
し、しかも!? 日刊ランキングに入ったらしいです!本当にいいのかな……?
誤字ばかりのこんな作品に、本当にありがとうございます!
感謝すると共に、不安いっぱいですが…………
本編がスローペースでしか進んで行かなく、イライラする方も居るとは思いますが、何とか頑張って進めていきたいと思いますので、今後も応援の方よろしくお願いします。
きっと、相変わらず誤字脱字があると思いますので、そちらのご指摘の方もよろしくお願いします。
【修正】泣きながら→鳴きながら




