第1話
「ただいま!」
玄関のドアを開け、靴も揃えず家の中を全力疾走するようにして2階にある自室へ向かう。
早くやりたい逸る心を帰宅時に何度も深呼吸して抑え、やっと帰宅したのだからこの状態も当然かもしれない。
―― 早く、早く、でも焦らない様に……
自室に入り、すぐに購入したVRハードの箱を空ける。
ベッド横にVRハードのセットを置き、すぐにハードにネット回線をつなげていく。
昨今のネットゲームは、ソフトと言っても全てがダウンロードによってハードに落とし込むタイプになっている。
今回のモンスターテイミングオンラインは、購入時に渡される説明書の様な物に、シリアルナンバーが同封されていて、それをネット上で入力、ダウンロードするという流れの物になっている。
全ての回線の接続を終え、シリアルナンバーを外部から入力。
これで、やっとゲームを開始出来る状況が整った。
―― よし! 早速やるぞ!
ベッドで、まだ製品の新しい匂いが漂うVRハードを装着し横になる。
期待に胸を膨らませ、モンスターテイミングオンラインの起動を開始するのだった。
『モンスターテイミングオンラインの世界にようこそ』
軽い意識の浮遊感とでも言えばいいのか、VRゲーム開始時の特有の意識の移行の後、システム的な音声が耳に届く。
『まずは、自己キャラクターの作成をお願いします』
最初にアバターとなるキャラクターの作成だ。
まず初めに選択するのは種族。これには種族によりモンスターをテイミングする時に補正がかかる様になっている。
マイナス補正もあるらしいけど……
まだ発売日で、攻略サイトなどのサイトも無く、事前情報もほぼ開示されていないので、もうこれは好きな種族で良いかな。
選択できる種族は、人間族、エルフ族、ドワーフ族、竜人族、天使族、魔族の6種類だ。
見た目的には、人間はそのまま。エルフは耳が長かったり、ドワーフは、背が小さく少しずんぐりしている。竜人は鱗が見え尻尾がある。天使は背中に真っ白な羽が生えているし、魔族は褐色の肌に背中から蝙蝠の様な羽が生えている。
天使族や魔族などの羽のある種族にして空が飛べるか試すのも悪くは無いかな。
でも、やっぱり最初はオーソドックスに、人間種族を選択する。
次にアバターの性別と外見を選択。
っとここでシステムから重大(?)な事実を教えてもらうことになる。
『次にアバターの性別、外見を設定します。本来の性別と別の性別を選択することも可能になりますが、音声は元々の声帯データを参照されますので、ご注意ください』
これは……つまりだ。
ネカマなどをやっても声は自分の声に近いため、まんまオカマっぽくなってしまうという事なんだろうな。
まぁ、元から女性キャラを選択するつもりは無かったから良いけど。
性別は男。アバターの外見は、デフォルトから少し自身に近い短髪を選択。髪の長さなどかなりの自由度で選択出来るみたいだけど、面倒だから適当な長さで決定する。
そしてアバターの名前を入力して決定する。アバターの名前は『ジンク』に決定。昔から使っているキャラネームだが、単純に本名を縮めただけで何の捻りもない。
『次にアバターのスキルを選択、設定します。プレイヤーは初期スキルとして、モンスター鑑定、モンスターテイミングの2種類のスキルを所持しております。選択可能なスキルは残り3種類になります』
どうやら3種類のスキルを取得可能らしい。これは、確実に少ないだろうけど……プレイしていけば増えていくものなのかな。
取得可能スキルは、普通のオンラインゲームの様な感じの物もあるが、それよりも目を引くのが補正関係のスキルだろう。
例えば、鉱石発見(鉱石を発見する確率が10%アップ)とか、素材収集(モンスターを倒した時通常の1.5倍の数素材を入手出来る可能性がある)とかだ。
そういった確率アップ系の補助スキル以外だと、大して特別に感じるスキルは無いようだ。
魔法もあるようで、基本の様な、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法や、それに加え精霊魔法何て言うのもある。
ただ、精霊魔法……これは地雷かもしれない。スキル説明に、精霊モンスターを仲間にした場合仲間にしたモンスターの協力を得て魔法を行使出来る、とあった。
使い勝手悪そうな感じだ。
そんな中、まず最初に選んだのは、回復魔法。これは自分にも仲間にも使えるスキル。やはりまずは死なないことが重要。それに初期だとお金などのあまりないだろうし、回復剤の節約にもなる。
次に目を付けたのは、付与魔法である。ゲームによって付与魔法というのは意味合いが違う。武器や防具に属性を付与する魔法だったり、キャラクター自身の能力を上げる効果を付与したり。このゲームでは後者の様だ。
最後のスキルは……武器に関係したスキルにするのが良いかな。
人間族の装備可能な武器は、片手剣、両手剣、槍、鈍器、弓(中位まで)杖(中位まで)となっていた。
最初だし、基本っぽい片手剣の装備だと考えると、これは片手剣のスキルを取るのがいいのかもしれない。
ということで、最後に選択したのは片手剣だ。
『最終確認です。このアバターでよろしいですか?』
種族:人間種
スキル1:回復魔法
スキル2:付与魔法
スキル3:片手剣
Y/N
先ほど選んだアバターの横にこの様に表示され、最後の確認をしてくる。
目線でYを選択すると、表示されていたアバターが消えて光に包まれた。
『では、モンスターテイミングオンラインの世界をお楽しみください』
やっと終わった。よし! 楽しむぞ!
【修正】モンスターテイミングオンライ→モンスターテイミングオンライン
【修正】――― さぁ! 楽しもう! の一文を削除しました。