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モンスターテイミングオンライン (仮)  作者: 南 風
第1章 MTOの世界~始まりの街~
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第18話

 あれから気絶を繰り返すこと実に5回目を突破。

 今は、SP回復のために座りながら黒緋と『コードラ』と呼ばれるモンスターの戦いを少し離れた場所から見ている。

 肝心のクエスト対象になるモンスターかどうか最初は不安だったけど、これだけ失敗しているのだからマイナス補正が掛かっているモンスターだろうと予測する。

 もちろんそれは確定的ではない。

 ただ、実際に苦手モンスターに属する黒緋を気絶1回分でテイミング出来たので、半ば確信しているけど。

 このクエストは、本来なら黒緋と同じような獣種をテイミング対象にすれば良かったんだと、今更ながらに気が付いた。

 問題は『ベルドッグ』以外の獣種が、近くに存在しているかどうかだけど。黒緋が居るから他の『ベルドッグ』をテイミングしようという気にはなれない。


 それにしてもだ、黒緋は相手を倒さずに、しかも自分も傷を負わず、更に相手を逃がさない立ち回りをしている。

 実際に相手には軽度の傷は負わせているのは、遠目に見ていても分かるのだが、それでもその立ち回りは凄いの一言だ。

 俺が黒緋と代わってやれと言われても、ここまで鮮やかに出来る自信は、全くない。

 つかず離れずの距離を保ちながら、時折接近して相手を翻弄している。


――― 今まで黒緋に戦わせてこなかったけど、ここまで戦えるとは……テイミングしないで戦っていたら、やばかったかもしれない。


 実際にあの時に黒緋をテイミングせずに戦っていても、今ほどのレベルにはなっていないからどうなのかは少し疑問に思うところだが、それでもこの黒緋の動きを見てしまうと敵わないと思えてきてしまう。基本的な動きの勘とでも言えばいいのか、それは変わらないだろうから。


 そんな事を考えていると、SPが回復しきりまた再チャレンジだ。

 俺が立ち上がっただけで、黒緋はこちらの事を察して相手をこちらの視界内に収まる位置取りを取ってくれる。どんだけ有能なんだ……あの子。後でいっぱい褒めてあげよう。

 6回目のテイミングチャレンジ。

 先ほどまでと同じくテイミングスキルを連打で使用するつもりでスキルを発動させたが、今回はこれまでと違った。


 ぴろりーん!


 連続使用の途中で聞いたことの無い音が鳴り、それ以降スキルの使用が出来なくなったのだ。

 これは!? と思い、ログを確認してみると、そこには……


【テイミング使用成功】

【テイミングモンスターに名前を付けてください】


 と出ていた。黒緋の時にも出ていたログだ。

 黒緋に成功したぞ! と伝えようとそちらに視線を向けると……黒緋の背中に乗っかってこちらに来る『コードラ』の姿が。

 黒緋は、大型犬。『コードラ』精々中型犬程度の大きさだから、確かに乗れないことはないのだが、明らかに無理をして乗っかっている様が分かる。

 むしろ、それを許容している黒緋が凄い。さっきまで戦っていた相手なのに……

 もしかしたら、モンスター同士で何かしらの判別が行われていて、テイミングが成功した段階でその機能で判別されて争わなくなったとかかもしれないが。特に同じマスターにテイミングされたモンスター同士だと何かあるのかもしれないし。


「テイミング成功した。黒緋ありがとうな」


 黒緋に感謝の言葉を伝えながら頭を優しくなでてあげると、今までの3倍増しぐらい、と思う様な勢いで尻尾を振りながら「ワンワン!」と返事をしてくれた。

 そんな黒緋の背中から、のっそりと降りた『コードラ』は、何というか……黒緋と違ってマイペースな感じがする。

 今のやり取りにも特別反応することなく、黒緋から降り俺の傍まで歩いてきて座っている。


 改めてテイミングの成功した『コードラ』をじっくり観察する。

 先ほどまでは、少し遠目で分かりにくかったが、身体を覆う鱗は綺麗な翡翠色に輝いていた。

 決して堅そうな印象を受けない鱗だが、実際に竜種であることからある程度の堅さはあると想像出来る。

 中型犬程度の大きさで、その背中には蝙蝠の羽の様な、皮膜があるタイプの小さな翼を持っている。もしかしたら、飛べるのかもしれない。いや、飛べるならば飛んで逃げているか。

 そしてその瞳は、綺麗な金色の色彩を放っていた。

 爬虫類特有の瞳をしているが、怖さなどは微塵もない。むしろ、綺麗だとしか表現出来ない瞳をしていた。


「さて、テイミングが成功したし、まずは君に名前を付けてあげないといけないんだけど……どうしようかな」


 名前を考える。黒緋の時……確か安直な名前を言ったら、何か視線を反らされた気がしたが。

 そっと黒緋を見てみると……視線が合った瞬間、顔を背けられた!? さっきまでの尻尾振り振り全開は何処行ったんだよ!? って言うか、安直な名前でもいいじゃないか。覚えやすいし……

 視線を『コードラ』に戻し、少し気落ちしながらもその瞳を見つめる。

 何か、まるでこの『コードラ』に「良い名前つけろよ?」とでもプレッシャーを与えられている気分になるな……被害妄想だろうが。実際、思ってないよな?


 黒緋は体毛と瞳の色から名前を取ったし、同じような感じにしよう。

 やっぱり自分のテイミングモンスターは、何かしらの縁を持たせるのが良いよな。

 そういえば、この子性別はどっちだろう? そう思って『コードラ』に男の子? と聞いてみると何故か黒緋が吠えた! しかも威嚇する様な吠え方。明らかに「違うよ!」と言っているのは分かった。

 この子は、女の子だったんだね……ごめんね……って言うか、黒緋が怒るのか。

 そうすると女の子っぽい名前……黒緋と統一するためにも色々考える。

 翡翠色の体色で瞳が金って事は、翡金? いや、これ名前としてどうなんだ。

 翠金? これもおかしい気がする。意外と難しい……

 金色……確か金色って黄色とか山吹色が金属光沢を持っている色だったはず。

 そうだ!


「よし、君の名前だけど『翡吹(ひぶき)』は、どうかな?」


 少し、恐る恐るではあるが『コードラ』に向かって提案してみる。

 すると『コードラ』は「キュイ!」と可愛い声で返事をしてくれた! なんだこの可愛い鳴き声は!?

 いや、それは良い。とにかく気に入ってくれたみたいだ。

 新たにテイミングし仲間になった『コードラ』を翡吹と命名した。

 何か、黒緋が向こうで、凄く安堵した顔をしているのは気のせいって事にしておこう。じゃないと俺の心が折れそうだ……


 そんな事を思っていると、頭の中に「ポーン!」と機械的な音が鳴り響く。

 初めて聞く音に少し驚くが、すぐにシステム的な物だと思いログを確認する。

 そこには……


【Rクエスト:苦手なテイミング】の条件を満たしました。


 と表示が出ていた。

 どうやら俺は無事にクエストをクリア出来そうで安心するのだった。




【修正】被膜→皮膜

【修正】俺が黒緋と変わってやれと→俺が黒緋と代わってやれと。

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