第15話
さて、初のクエストという事で、実は内心結構ウキウキだったりする。
しかも普通のクエストではないっぽいところが、俺の心の高揚に拍車をかけている気はするがぬか喜びにならないように気を付けないとダメだな。
下手するとRがレイドってパターンも考えられるし……レイドだったら、きっとソロじゃ達成不可能だろうし。
ただ、クエストの内容的にレイドではないとは思うけど。
黒緋を連れてクエスト実行のために、また街を出る。
今度は一人でだ。先ほどの二人の事も何となく気にはなるが、今はこっちの事に集中しないと。
街を出て草原フィールドにある街道っぽい道に沿って歩いて行くと、途中に分かれ道がある。
さっきは『ばぶるん』討伐のために街道から少し外れて動いていた為、その分かれ道置いてある看板の存在に気が付かなかった。
どうやら行先が書いてある。
←開拓村 レットリー→
看板を確認すると、上の様な表示が出ていた。
開拓村にレットリー。
新たな名前の村と街だけど、想像するにこれは、開拓村の方はイベントとか関係で行く場所。レットリーと書いてる街は、第2の街っぽい感じがする。
第2の街が開拓村で名前のある方が関係無いという事はないだろう。
普通のRPGの様に順番に街を巡っていく仕様ではないとは思うのだが、最初の街の状態を考えると冒険者ギルドすらない場所だったため、次の街はそれなりに大きい街だと予想出来るし、それが開拓村何てことはさすがに無いと思う。
でもここは、一応頼りになる相棒に確認してみるかな。本人も任せろ的な返事をさっきしていたしね。
「これ、黒緋はどっちに行くのが良いと思う?」
黒緋に聞いてみると、看板を見つめながら少し思案している様な顔だ。ってか、これ本当は中にプレイヤー入ってるとかじゃないだろうな。やけに人間くさい動きな気がするのは気のせいだろうか。
少し思案した結果、開拓村の方に顔を向けながら「ワンワン!」と吠えた。
どうやら頼りになる相棒も開拓村をお望みの様だ。
意見が一致したこともあり、黒緋と開拓村の方に向かって歩き出す。途中で『ばぶるん』に遭遇するが、問題無く武器を投擲しながら倒していく。
当然の如くレベルは上がらない。やっぱり思っている通りなのだろう。俺も上がらないし黒緋も上がらない。
これが取得経験値が低いのか、それともレベル21への必要経験値が跳ね上がったのかは、今の段階では判断は出来ないけど。
このゲームは、普通のネトゲなどと違いMAPの切り替えが無い。
無駄にリアルと忠実というか、リアル志向というか。とにかくリアル世界と同じでそのままフィールドの風景が歩いて行くと変わっていくのだ。
開拓村の近づいたのだろうか、草原から森林にと言った風景に変わってきた。
周りには木々をチラホラと目にする様になり、そのまま歩いて行くと、ある程度の見通しが出来る木々が生い茂った場所に入っていくことになる。
これまでと全く違う風景だ。ここまで来ると草原と言う言葉は、すでに無い。
草原フィールドを抜け、森林フィールドにでも入ったと言った感じか。
ただ、モンスターも変わるか? と思ったが、そうでもないらしい。相変わらず『ばぶるん』を中心としているらしい。というか、ここまで『ばぶるん』しか出会っていない。どんだけ『ばぶるん』率高いんだよ。
そんな事を思い『ばぶるん』を討伐しながら開拓村に向かって歩いて行く。
もしかしたら、クエストだしクエストモンスターの存在があるかもしれない。しかも、それは開拓村とか別の場所に行かないと条件が満たされずモンスターと遭遇出来ないという事も考えられる。
このゲームの運営の事を考えると、どんな厭らしい仕様も納得出来てしまうので、ある程度の心構えはしておかないと精神衛生的に良くない。
森林の中に入り、木々の中を進んでいく細くなった街道沿いに歩を更に進める。
黒緋は『ばぶるん』に対して攻撃することが出来ないから暇かと思って黒緋を見るが、俺の近くで尻尾を振りながらご機嫌の様子で付いてくることから、特に何も思わないようだ。
むしろ、その尻尾振り振り状態で時折こちらの顔を伺ってくる様子に癒される。
ペットとか飼うのは、こういう感覚なのだろうか。
そうこうしていると、視界に村の入り口っぽい物が目に入ってきた。
そこは、森林を切り開いて作ったように少し開けた場所にあり、いかにも手作りといった感じの木の柵で村を囲んでいる。
モンスターの跋扈する地域に人が開拓をしているといった様相が見て取れる。
見たまんま、開拓村だった。
村の入り口に、2名の兵士っぽい皮鎧に身を包んだ人が立っている。
プレイヤーは目につかない。皆こっちではなくもう1つの街の方に向かっているのだろうか。
「こんにちは」
入り口の兵士に挨拶をしてみると、意外とフレンドリーな感じで返事をもらえた。
「やあ、こんにちは。こんな森林にある開拓村まで大変だったね。まだ何もない村だが、ゆっくりしていくと良い」
まだ、ね。
兵士の言葉に、今後のアップデートの事を思わず考えてしまうが、まだ実装初日。そこまで考えるのは考え過ぎかと、頭を振るう。
挨拶を交わしたままに村の中に歩を進めると、村の中は数軒の民家と少しの商店っぽい建物が目に入るだけだ。
いかにも作っている最中といった感じを出している。
むしろ、田舎の農村みたいな感じを受ける村だ。ただ、普通の農村と違うところがあるのだが。
農作業をしている感じは一切受けない。
森林にある開拓村だし、農作業よりも森林を切り開くために木こり的な存在が中心に居るといった感じか。
とりあえず、こういった新しい村や街などに到着したら最初にやる事は、村内の捜索だろう。
どっかの某有名RPGの主人公よろしく、他人の家に入りツボを破壊したり、タンスを勝手に開けたりまでは出来ないけど。
というか、このゲームでそういう事やるとどうなるのだろうか……
リアル志向でそんな事やると、逮捕されるかもしれない。やっぱり下手な事は出来ないな。
案外そういった事をやって発生するクエストもあるかもしれないけど、それを実際に自分で試すつもりにはなれない。
では、村内を色々見て回りますかね。
村に入って少し足を止めた俺の周りを嬉しそうに駆け回る黒緋に声をかけ、村内探索に出るのだった。
御陰様で、累計ユニーク数が5,000を突破いたしました!
更にはお気に入りが120件を突破! これは、本当に何と感謝をすればいいものやら。
今後も頑張って更新、投稿していきますのでよろしくお願いします。




