第13話
スイーツさんテイミング大作戦開始。
最初は、付き合わせるのが悪いというスイーツさんの提案から、まずは俺が狩りに出てミノール君が護衛となった。
凄く嫌そうな顔をしていたが、それと対照的にスイーツさんは、テイミングへの期待からか満面の笑みで俺を送りだしてくれた。
俺は、相変わらずあれ以来『ばぶるん』しかみないので、周辺を捜索しながら『ばぶるん』に対して武器を投擲していく。
何度か『ばぶるん』を討伐していき、ついに俺のレベルは20に到達。黒緋も17まで上がっている。
俺の想像では、そろそろ上りが悪くなるか、経験値の取得自体が無くなると予想しているんだけどどうだろうか。
更にそこから数匹の『ばぶるん』を討伐していく。1匹づつ討伐後にレベルを確認していくと、10匹狩ったところで黒緋が18にレベルアップ。俺は20のまま。
レベル差もあるし、まだ判断はつかない。更に狩りを進める事にする。
大体10匹~20匹ぐらい狩ればいくらなんでも以前のままなら上がるだろうとの予測を立て狩り続けていくが、やはりと言うか何というか……ついには黒緋のレベルが20になった。俺のレベルは相変わらず20のまま。
やっぱりこれは、レベルの制限が掛かっているか取得経験値の減少か、今までの必要経験値とは次元の違う桁が必要かのどれかだと思われる。
実際にここで結論は出ないし、数値化されていない状態なので正解を決定づけるのも中々難しい。
このフィールドで狩り続けてレベルアップするかしないか見るぐらいしか確証を得る方法が思いつかない。それにそれは、確証させる意味が余りない。
別に俺は情報サイトに情報を載せる事がしたい訳でも、データマンでもないから。
時間的にそろそろ約束の1時間になる。『ばぶるん』の討伐も大分テンポ良く出来たのもあるが、この付近の『ばぶるん』の数が多かったのも良かった。
そんな事を考えながら先ほどスイーツさんが、テイミングしていた場所に戻るのだった。
スイーツさんが『ベルドッグ』相手に必死になっていたテイミング場所に到着すると、そこには、予想外の光景が目に飛び込んできた。
テイミングが成功していた! のだが……
別に成功を予想していなかったわけではない。成功もあり得るだろうとは思っていたけど、この状況はなんだ?
テイミングに成功したであろうと思われる『ベルドッグ』が尻尾を全開に振り振りしている…………土下座するミノール君の横で。
いや、待て待て。さすがにこれは予想してなかった。っていうか、出来る訳ない。
状況的に見れば、何となくは理解出来る。土下座して謝るミノール君の下げる後頭部へ、容赦なく踵を落としている涙全開のスイーツさんを見れば、嫌でも……
罵詈雑言を飛ばし、泣きじゃくりながら何度も何度も踵を落としている。
これは、あれだよな。
スイーツさんがテイミングを何度も失敗しているのを見て、ちょっと俺もとか思ってしまったミノール君がテイミングしちゃったら成功しちゃったパターンだろうな。
これは、どうすればいいんだろう。正直に言って、こっから更にまた『ベルドッグ』を捜索してから再度テイミングチャレンジは、したくないぞ。
変な状況になっている二人を少し離れた場所から唖然として眺めていた俺にスイーツさんが気が付き、泣き顔のまま突進してきた。
「ジンク君!!! 聞いてよ! あの馬鹿がぁ~うわぁ~~~ん!」
「何となく、状況は想像つきますけど……とりあえず泣き止んでください。落ち着きましょう」
失礼かとも思ったが、こちらに突進してきて目の前で止まったまま泣きじゃくるスイーツさんの頭を撫でてあげる。
一瞬驚いた表情に変わったスイーツさんだが、そのまま泣き止んで落ち着くまでしばらく頭を撫で続けた。
落ち着いたスイーツさんが、事情を説明してくれた。
大体は、俺の想像した通りだった。
スイーツさんのテイミング大作戦が開始され、数回の気絶までは大人しく見ていたらしい。
何回目の気絶かは分からないが、気絶から復帰し目を開けるとテイミングするはずだった『ベルドッグ』とミノール君とが戯れていたらしい。
最初は、普通にミノール君がモンスターとじゃれているだけかと思ってSPを回復するために座ってそれを見ていたらしいが、SPを回復していざテイミングを発動しようとしたらおかしい事に気が付いたのだと。
テイミングが、発動しない。
その時点で、もしかして? と思いミノール君に詰め寄ると、何故か成功してしまったらしい。
「いや、まさかこんなすぐ成功するとは思わないじゃん……」
それは思わないだろうな。
スイーツさんは、散々失敗しているのを見たし、一応種族が違う俺ですら、気絶状態までSPを使い成功したのだ。
それは確かにそうなんだが、だからって横取りの様にテイミングをしてしまうミノール君の思考回路は、何とも言えないところだった。
やはり深くは考えていないんだろうな。
「大体あんたが、何でやるのよ! もう本当に信じられない!」
未だ、怒り収まらず。
気持ちは分かるけど。
俺は、そんなスイーツさんにこれからの事を聞く。
「もう怒っても仕方ないよ。結果は変わらないし、テイミング譲渡自体は出来ないんでしょ?」
どうやら俺が合流する前に、俺に持ち掛けたモンスターの譲渡をしようと思ったらしい。
それが出来れば確かに問題は無いだろう。
でも譲渡が出来るのなら、それこそ種族でのテイミング補正の意味が薄れる気がする。そこにパーティーで行動する意味と他人との関係性を持たせているかもしれないという事は十分考えられるのだけど、今のところ無理らしい。
現状で俺たちは何も出来る事がない。
それこそ、スイーツさんに『ベルドッグ』をテイミングさせるには、もう1度探して再度同じ事をする必要があるだろう。
実際にそれをするつもりは、今のところ無いのだけど。
「ここでこうしていても仕方ないし、1回街に戻ろうか。二人はパーティーを組んでいたんだよね? レベルはどれぐらいまで上がったの?」
「それがさ……」
1度街に戻って色々と行動を考える必要があるだろう。
俺のレベル上げの状態からすると、二人は経験値を分割されているとはいえミノール君が色々倒していたしそこそこ上がっていると思う。
そんな俺の質問に、更に顔を気まずくさせるミノール君の姿。何かこれにも問題があったのか?
「この馬鹿はね、狩りする時に大分離れたところまで行っていたらしくてさ……私にほとんど経験値が入っていなかったのよ」
はぁ!?
えっと、ちょっと待ってみよう。
とするとだ。もしかして、今回は、ミノール君が一人美味しい状況なんじゃないのか?
「俺のレベルは12まで上がったんだけど…………」
「私のレベルは、3ね」
どうやら、先ほどのスイーツさんの怒りは、テイミングだけに向けられた物じゃなかったらしい。
本当に……スイーツさんには、掛ける言葉が見つからない。
少し落ち着きを取り戻したスイーツさんと、バツが悪そうなミノール君と、ため息しか出ない俺。
そんな3人の周りで、黒緋とテイミングしたばかりの『ベルドッグ』が、尻尾を振りながら走り回るのだった。




