第12話
「えっと、これは俺の想像であくまで仮説だと思って聞いてほしいんだけど、良いかな?」
俺の仮説を二人に説明していくことにする。
二人も割りと真面目な顔で聞こうとしてくれているのはありがたい。こういうところは二人とも真面目なんだと思う。特にミノール君。
「このゲームの最初に色々設定したよね。その時に種族があって、スイーツさんは、エルフ。ミノール君は竜人。そして俺は、人」
俺の言う事を聞いてもきっと理解出来てないミノール君だけど、そのまま真剣な顔をして聞いてくれている。普段もこうだったらもう少しスイーツさんの対応も違う気がするんだけど……
「それで、こっからはが仮説なんだけど……テイミングの成功率に、種族がかかわっているんじゃないかな? 多分だけど、エルフってイメージ的に森の狩人とか守護者とかでしょ? エルフって『ベルドッグ』みたいな獣形のモンスターと相性悪いんじゃないかな?」
俺は仮説を説明した。すると、スイーツさんは、この世の終わりの様な顔を浮かべる。いや、そんな顔せんでも……悲しいのは分かるけど。
種族でテイミングの確率が変わってくるとは思わなかった。実際にモンスターを仲間にするゲームにそういう設定はあまり聞いたことが無い気がする。
実際のところは、検証自体をあまりしていないので、確証とは言えないのは分かっているけど、このゲームの運営からすると無いとも否定は出来ないところが怖い。
実際問題として、これが低確率なのか? はたまた、確率がゼロになっているのかも問題だ。
低確率ならば、それこそ時間をかけて何度もすればいいが、ゼロだったとしたら……諦めて種族を作り直すか、それこそ譲渡する様なシステムの実装待ちになるだろう。実装されるかは微妙だけど。
「そうすると……私は黒緋ちゃんみたいな子を、仲間に、出来ないって事?」
悲痛過ぎる顔を浮かべながらそんな事を聞いてくるスイーツさん。アバターでも涙って出るんだ、とか変な事を思った俺は果たして有罪なのだろうか悩ましいところと言いたい。
「実際に確定的に無理だとは断定は出来ないけど、確率が俺の時よりは低くなっている気がする。これが低くなっているだけならば、それこそ時間を掛ければいつかはテイミングは成功するだろうけど、確率がゼロ以下になっているならばいくらやっても無理かも。今それを判断するには情報が少なすぎて判断出来ないから、後はスイーツさん次第かな……」
現状だと本当にスイーツさん次第だ。
ここで時間を掛けて、それが無駄に終わるリスクを取るかどうか。
「私は、それでも、欲しい!!」
おう。さっきまでの悲痛な顔から一転、そこにはかなりの決意が覗える。って、横で今度はミノール君がこの世の終わりな顔しているんだが。
「俺も狩りしたいから、この辺りで狩りして何度かここに確認しに来るよ。さすがに、気になるからさ。俺には頑張ってとしか言えないけど……」
「ううん。ありがとう。ジンク君のおかげで色々分かったし、まだ『ベルドッグ』をテイミング出来る可能性はあると私は信じたいしね」
可能性……あるかどうかは、本気で分からないところだけど。
「なーなー。俺は、それに付き合うのか……?」
うわ、ミノール君のテンションだだ下がりだ。今までの短い間の付き合いでもそれが、彼にとっては苦痛だと言うのは分かるけど。
でも実際に一人の時に暗転したら、結構怖いな。まだPKがあるかどうかの情報すらないからだ。
無いとは言い切れない。いくら開始して今このフィールドに居る人数が、プレイヤー数何万人、何十万人居るようなネトゲと比べれば遭遇する確率は少ないだろうが、その確率はゼロではない。
辛いだろうけどミノール君には、傍に居てあげて欲しいな。むしろ、居てあげる状況じゃないとやらせる訳にはいかない。
これで何かあれば、本気で後味悪すぎる。
「まず最初に確認なんだけど、スイーツさんはテイミングにチャレンジするって事でいいのかな?」
俺が確認すると、思いっきり深く頷かれた。この人、きっと危険とか何も考えてないな。『ベルドッグ』しか見えてない感じがする。
いや、ミノール君。分かったよ……分かったから、そんなに悲しそうで泣きそうな顔をしないでよ。
「テイミング出来る可能性はゼロかもしれない。ここで使う時間が全て無駄になるかもしれなくても?」
「分からないけど、でも! 私は、もしかしたらに掛けたいの!」
これは、相当熱が入っているな……
仕方ないか。よし。
「分かりました。では、こうしましょう。俺とミノール君で1時間毎に交代で付き合うようにしよう」
俺の提案に、凄い驚き顔を浮かべているな。なんで? って顔をしてるな。これ絶対危険度を理解していないな。
逆にミノール君が、これ以上ないぐらい笑顔を浮かべている。そこまでか……
「でも、何で? 別に私は、ミノールもいるし、一人でも平気だよ?」
やっぱり理解してないな。っていうか考えに浮かびすらしてないな。
「一人でって言うのは危険があるからダメだよ。下手するとPKが出来るかもしれない。それが可能である限り、一人で気絶状態になる危険は犯すべきじゃない」
俺の言う危険性が理解出来たのか、沈痛な面持ちに変わった。だけど、それでもって決意も何となくだけど見て取れる。
「きっとミノール君だけじゃ飽きてしまって最悪な事が起きる可能性もあるから、まぁ初日だし俺も黒緋をテイミング出来たし、付き合うよ。だからミノール君と交代でスイーツさんのテイミングを見守る事にするよ」
「あ、あのさ……これ、俺は、付き合う事確定なのか?」
ミノール君も想像してなかったみたいだな。そして、説明したのにこっちはその危険度も理解出来てないっぽいが。
「当たり前でしょ!? あんたは付き合うのは確定しているのよ! って言うか、ジンク君に付き合ってもらうの悪すぎるから、こいつにずっと付き合ってもらうので構わないよ?」
「いや、問題ないよ。俺は、そんな焦っていないからさ。それにこの結果が分かるだけで俺には得れる物もあるしね」
平気だよって意味を込めて笑顔で応えてあげる。
「そ、そ、それは、ありが、とう……」
何でそこでどもるんだ? まぁ良いか。
とりあえず俺とミノール君で1時間づつ交代で見守ることに決定した。
あんなことを言っていたミノール君も、諦めているのか最後は納得していた。
そんな感じで、スイーツさんのテイミングに付き合う事になったのだった。果たして成功するのか? それとも成功はせずに終わるのか。
俺としてはどちらでもいいけど、折角付き合うんだから成功してほしい気持ちはあるし、ここまで『ベルドッグ』に対しての熱さを見せられたら、応援もしたくなる。
俺は、ここまで熱くなれるのか……
そして、スイーツさんのテイミング大作戦が始まるのだった。
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本当にありがとうございます! 今後も頑張っていきます!
【修正】一人称『僕』→『俺』に修正しました。
【修正】種族でテイミングの確立が→種族でテイミングの確率が。




