第10話
ログアウト前に出会った人に再度ログインしてすぐに絡まれることになったが、その理由がひどかった。
黒緋を見て譲渡してくれとか言われて断り、自分でテイミングしろと俺が指南した通りテイミングしに行ったは良いのだが、どうやら目的の『ベルドッグ』は見つからずに男の竜人の方が焦れて『ばぶるん』に攻撃したところ、爆発に巻き込まれて死亡。悔しいのか何なのか分からないが何度もアタックしては死に戻るを繰り返していたらしい。
って言うか、俺が落ちてシャワーを浴びて昼ご飯を食べ再度ログインしたこの時間まで、あの時から延々死に戻りを繰り返していたらしい。
どんだけの時間同じ事してるんだよ。しかも学習はしないのかよ。
まぁ、話しを聞くとスキルか何かで自爆を使われて死んでると思っているらしいけど。自爆は自爆だけど、スキル使用じゃなくてダメージ判定で自爆する仕様なんだと思うんだけどな。シャボン玉みたいだし、ダメージで破裂的な……
でもここまでの話しを聞くと、この男の竜人は馬鹿だとは思うけど、それに付き合って死んでいるエルフの女性は、何となくだけど可愛そうになるな。
「えっと、黒緋の譲渡は何度言われても無理です。話しを聞いていて、お姉さんに同情しなくはないので、少しお手伝いしますよ」
仕方ないから、少しだけ手伝ってあげるかな。って偉そうな事言えるほど俺も分かってる訳じゃないけど……
そんな俺の言葉を聞いて、エルフの女性の方は一転笑顔になった。男の竜人の方も、仕方ないって感じだな。
「ありがとうございます! 本当にもう、付き合って死ぬのは嫌なので……あ、自己紹介もしてなかったですね。私は『スイーツ』って言います。見ての通りエルフです。こっちの馬鹿竜人は『ミノール』ですけど、覚えなくても良いです。面倒かけますが、よろしくお願いしますね」
「おい! それは無いだろ!? そもそも、俺が誘ったからこのゲーム出来てるんだろうが! ったく。おっと、こいつが言った様に俺は『ミノール』竜人だ。よろしくな」
なるほど。この二人リアルの知り合いか。道理で開始すぐなのに馴染んでる訳だ。
「こちらこそよろしく。俺の名前は『ジンク』見ての通り人族だ。こっちの『ベルドッグ』は『黒緋』俺の相棒だから俺共々よろしく」
「ウゥー!」
いや、黒緋さん……君が苦手っぽいのは何となく分かるし譲渡の意味も何となく理解しているから機嫌悪いのは分からなくもないけど、唸り声を上げるな。
「前も言ったと思うけど、まだ黒緋と組んで間もないから人に慣れてないから少し気を付けてほしい」
言葉が分かるのは俺が勝手に思ってるだけかもしれないし、とりあえず人に慣れてないって事でいいだろ。
「ああ、分かったよ。もう譲渡してくれとか言わないから、よろしく頼む」
「うん! 私はこの馬鹿とは違うから大丈夫だよ! 仲良くしようね? 黒緋ちゃん!」
何か、このコンビ良いコンビなのかもしれないな。リアルで知り合いでこうやって馬鹿やりながらゲーム出来る友達って言うのも……どうせ俺はボッチだよ。
簡単に自己紹介を終え、目的の『ベルドッグ』を捜索しながら『ばぶるん』討伐講習をするために、3人と1匹で街を出るのだった。
「えっと。歩きながら説明するよ。とりあえず『ばぶるん』自体は、そこまで強いモンスターではないと思う。それこそ、最初のフィールドの街近くに居る事も考えてね。このゲームはデスペナがかなりきつい設定になっているから死ぬ事は回避しなきゃいけないと思っているんだけど『ばぶるん』は爆発して巻き込まれて死ぬんだよね。俺は運が良く最初死ななかったんだけどね」
とりあえず『ベルドッグ』を捜索しながら俺の経験を含めて話しをする。
まずは『ばぶるん』の生態を教えないとどうにもならないだろうし。
「最初死ななかったとか羨ましいな。俺ら何か自爆率100%だったのによ……」
やっぱり勘違いしているな。まずは、そこを修正するところからかな。
「俺も自爆率は100%だったよ。偶々運が良く死ななかったのは合っているけどね。『ばぶるん』の爆発だけど、あれは多分こちらの攻撃判定が出たら勝手に爆発するんだと思う。見た目シャボン玉に見えるしそういう仕様なんだろうね」
「なんだよそれ!? んじゃーどうしようもないじゃんか」
いや、少しは考えようよ……
「えっと、俺の感じたことをまず説明するよ。あれは、多分だけどこちらのダメージ量に比例したダメージが来る仕様になってると思う。じゃなきゃ俺の時に死ななかったのが説明付かないし。多分君の方が最大HPも多いだろうしね」
今は俺のレベルが上がっているからそうじゃないとは思うけど。
「んー……つまりは、なんだ?」
分かってないな。っていうか、やっぱりこのミノールって人、頭使うの苦手なタイプで先に手が動くタイプだな。見たまんまって感じだけど。
「あんたは深く考えるだけ無駄だから、その辺は私が聞いて考えるからあんたは、周りを気にしてなさい!」
あーやっぱりこっちのスイーツって人が知能担当なんだね。まぁ、キャラもエルフだし、そんな感じするけど。
「それで、弱く攻撃しても倒せるんだけど、爆発は必ず起こって巻き込まれる。だから俺は最初軽く突いて爆発、座って回復してまた突くって感じで繰り返してたんだ」
「なるほど。それで安全に倒せる訳ね。弱い攻撃で倒せたから任意で自爆したわけじゃなく、攻撃の辺り判定で爆発する仕様って言ったわけね」
スイーツさんは、どうやら飲み込みが早いな。ミノール君はもう話しすら聞いてないし。
「うん。それでやっていたんだけど、とあるプレイヤーの狩りを見てもっといい方法を発見してね。それを教えようかと思うよ」
「え!? そんな、良いのかしら……そんな楽な方法を簡単に教えてもらって。私たち何もお礼出来ないわよ?」
お礼とか……スイーツさん意外と常識人なのか? 黒緋を譲渡してくれって言ってきたくせに……まぁあれに悪意とかは無かったっぽかったけど。
「ええ、構いませんよ。どうせすぐ情報サイトとかにアップされそうですしね。それでその方法ですけど、単純で、爆発に巻き込まれない距離から遠距離攻撃するだけです」
今思うと、攻撃して爆発するなら爆発に巻き込まれないように攻撃すればいいって簡単な図式がどうして思い浮かばなかったんだろう。
意外と俺も……残念なのか? いや、そんなことないはず! 最低でも、あのミノール君よりはマシなはずだ。
「えっと、私もミノールも弓何て持ってないんだけど……」
あぁ、少しそれも勘違いしているな。当然って言えば当然だけど。
「いや、装備は関係ないんですよ。このゲームってそういった方面かなり自由度が高いみたいで、普通に手持ちの武器を投げつけても攻撃の辺り判定があるんです。もちろんダメージを出そうと思うと難しいとは思いますけど『ばぶるん』に関しては当たりさえすれば倒せるんで」
「なるほどね。つまりは、そうやって倒して行けば比較的簡単にレベルは上がるのね」
そういう事だ。でも、そこまでの安心設計でもないだろうけど。
「最初のうちはそうでしょうね。このゲームはステータスも数値化されてなければ、経験値すら数値で表示されていないので確実とは言えないですけど、何処かのレベル帯で制限が来ると俺は思います。ですからそこまでは比較的簡単にレベルは上がると思いますよ」
俺の言ってる事には根拠は無いけど、それでも何となく俺の言う事で合っている気がする。
スイーツさんも俺の言った事に同意しているし。まぁ制限については今は考えても仕方ないのでとりあえずおいておこう。
「そういう訳で、ちょっと『ばぶるん』倒してみましょうか」
「分かったわ。ねねーあんたも少しは聞いてたんでしょ?」
聞かなくていいって言ったのにミノール君に聞くとか、割りとこの子も凄いな。
「ああ、要は武器投げつけてやればいいんだろ?」
「そうだけど、爆発に巻き込まれないようにある程度離れてからだからね?」
「了解了解! んじゃちょっとやってみっか」
言い終るか終らないかのうちに、少し離れた『ばぶるん』に初期設定でもらった武器であろう戟を思いっきり振りかぶって投げつけた。
やはり身体能力が高いのか『ばぶるん』に見事命中。爆発させる。っていうか、あれ攻撃力凄いな……あんな爆発見たことないぞ。ある程度距離があったのに結構ぎりぎりな感じだし。
「どう? 経験値は入った?」
肝心な事を聞いてみると、二人は満面な笑みを浮かべてこっちを見てきた。
「おー! 入ってる! こうやっていけばいいのか!」
「初の経験値! 苦労しただけあって……凄く嬉しいのは私だけ……? 初期の段階の弱い敵を倒しただけなのに……」
スイーツさんは、中々複雑な心境っぽいな。確かに、聞いたあの経験をすれば、その感動も分からなくはないけど。
『ばぶるん』を倒すのは完全にミノール君に任せる事にして『ベルドッグ』を捜索しながら出会った『ばぶるん』を狩っていくことになった。
特に問題も無く進んでいく。
そしてついに、目的の『ベルドッグ』と遭遇することになった。
【修正】あの時から永遠死に戻りを→あの時から延々死に戻りを




