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ショーカノ  作者: なるよし
救出少女編
3/3

第2話 助けた末に

 気がつくと俺は病院に居た。

 病院独特の薬品の匂いが俺の嗅覚を刺激し、横にある点滴は一定のリズムを刻んでいる。

 どうやらここにはほかの患者はいない様で、周りのベッドはどれも使われていなかった。

 しばらくすると病室のドアが開く。

 入ってきた人間は俺のよく知る人物だった。

「よぉ、春人元気か?」

「……姉貴には病院に居る人間が元気に見えるのか」

「お、その皮肉っぷりは元気そうだな」

 思いっきり悪態をついてやったつもりだったんだがどうやら効果はなかったらしい。

「俺はどうなったんだ?」

「居眠り運転で猛スピードで突っ込んできたトラックに轢かれそうになった女の子助けて気絶したんだよ。

 医者によるとなんとか……とか言うので脳が軽いショック状態になったんだとよ」

 やっぱり居眠り運転か。

 ていうかなんとかってなんだよ、それくらい覚えとけって。

 まぁ言われたところで理解はできないだろうけど……。

「あの女の子は、ちゃんと助かったのか?」

「…………」

 なんで、黙るんだよ……。

「もしかして……!」

「いや、無事だよ……一応はね」

「なんだよ、それ」

 姉貴が立ち上がった。

「ちょっと来い、動けるだろ?」

「あ、ああ」

「口だけより見たほうが早いだろう」

 俺は普段あんまり勘は鋭いほうじゃないんだが、なんだか少し嫌な予感がする。



 俺は助けた女の子の病室へと連れてこられた。

 俺と姉貴が病室のドアを開けると、そこにはスヤスヤと寝息を立てているあの女の子が。

 しかもちょうど医者がいて診察している最中だった。

「ああ君か、目が覚めたんだね」

 医者が俺の存在に気づく。

 姉貴が俺に耳打ちで「こいつがさっき言ってた医者な」といってくる。

 さっきの言動でなんとなく察しはつくのだが……。

 医者の話によると、どうやら俺がこの女の子を助けた際、軽く頭を打っていたらしい。

 それに加えて俺と同じようになんとか……とかいうやつで脳がダメージを受けたせいで今も目が覚めないとのことだ。

 あ、俺も姉貴と同レベルだ。

 なんてことを考えていると姉貴から軽く横蹴りが飛んでくる。

 「なにすんだよ」というと「なんとなく」と返ってきた。

 あんたはエスパーか。

「でもきっともうしばらくしたら回復するとは思うよ」

「そう、ですか」

 俺と姉貴がホッっと肩を撫で下ろす。

「では私はこれで、何かあれば呼んでください」



 医者の退室後、あのままあの女の子の病室にいても何もできないので、とりあえず俺たちは歩みを進めていた。

「そうゆうことだ春人、わかったか?」

「ああ」

 安心するのは早かったってことがな。

「俺はどれくらい寝てたんだ?」

「2日だ。全く、寝すぎだボケ」

 好きで寝てたんじゃねぇよ。

 にしても2日か。楓、心配してるだろうな……。

「楓ちゃんなら昨日とその前の日も来てたぞ」

「あんたはエスパーか!!」

「はぁ?何の話?」

 うっ、また心の中を見透かされた気がして今度はつい突っ込みを入れてしまった。

「なっ、なんでもない」

「まぁいいけど」

 ふぅ、どうやら何とかごまかせたらしい。

 危なかった……。

「それとあんた、しばらくは検査入院やら何やらで退院できないから」

 そういうと姉貴は俺に背を向けスタスタと歩いていってしまう。

「帰るのか?」

「当たり前でしょ、家のこともあるんだし……」

「家のこと?」

 姉貴の言葉が少し引っかかる。

 なんかあったのか?

「退院したら教えてあげる。んじゃね」

 姉貴が右手をダルそうにぷらぷら振る。

「あ、おい姉貴!」

 行っちまいやがった。全く、相変わらず薄情だな。

「さてと、どうするかな」

 すぐそばに掛けてあった時計に目をやると時刻は10時30分を少し過ぎたあたりを指していた。

「とりあえず、戻るか」



 部屋に戻ってきた俺はベットの横にある台に何かが置いてあることに気づいた。

 一体なんだろう。

 俺はその紙を見て思わず笑いがこぼれる。

「……ここには相変わらずの世話焼きが居るな」

『目が覚めたら連絡頂戴! 絶対お見舞い行くから!    楓』

「全く、面倒くさいな」

 なんていいながらもお節介な幼馴染にメールを送信する俺であった。

読んでいただきありがとうございます

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