6章:3つの再会(完)
「リリア、今何て!?」
ミリテラが言った時にはもう遅く、彼女は暖炉に飛び込んで、煙突の中を上に向かっていった。
「『リッド』って言ったよね?」
ワノンが窓の外を見ると、下の先の戦闘などでボロボロになった街路を、確かに緑髪の青年がゆっくり歩いているのが見えた。
「…あんな感じだったかもな」
すると、その青年の所に飛んでいく小さい影が見えた。
言うまでもなく、リリアである。
2人はしばらくの間話し込んでいたようだが、リリアに導かれて、青年は宿のドアをくぐったようだった。
「…リッド……やっぱり無事だったわね」
ミリテラがいつの間にかワノンの背後で窓を覗き込んでいた。
彼女は振り返ってヤイナに声を掛けた。
「ヤイナ、本当にリッドみたいよ」
どうやら、ミリテラに呼ばれるまで思考停止していたようで、きょとんとした顔でミリテラに振り向いた。
その時、部屋のドアが開いた。
青い妖精が連れて来た青年は間違いなくリッドだった。
「……皆……」
リッドは状況の急変についていけずに、呆然としていたが、次の瞬間には笑顔になっていた。
「久しぶり。心配かけて、ごめんな」
それを聞いた途端、1人を除いて全員が笑顔になり、リッドに向けて歓迎の言葉を言った。
その『1人』は、ミリテラに呼ばれてリッドに歩み寄ったが、その顔に笑みは無かった。
「…ヤイナ……」
リッドの声には、どことなく申し訳無さそうな響きが込められていた。
「リッド……さん…」
ずっと無表情だったヤイナだが、次第に表情が緩んでいったかと思うと、唐突に泣き出した。
「会いたかった……!」
そんな彼女の様子を見て、リッドは微笑み、彼女にそっと呟いた。
「ただいま」
ヤイナも涙を拭いて、微笑み返し、呟いた。
「おかえりなさい…」
彼女は続けて、リッドの胸に飛び込んだ。
リッドは困惑したが、彼女の背中に手を回して、優しく抱き締めた。
「わぁ、見せ付けてくれるじゃん」
ベッドに腰掛けるリリアが、隣に座るイオの肩を肘で小突いた。
「仲良いんですねぇ」
イオの発言に、リリアは吹き出しそうになった。
「違うでしょ!あれはもう、そんなレベルを超えてるわよ!」
…この日はミリテラ、ワノンとの再会、リリア達にとってはストリガロ達との再会、そして、リッドとの再会という、『3つの再会』があった日として、彼らの心に強く残ったのであった。
【6章:3つの再会】
―――《Fin》