6章:3つの再会(3)
外に出た彼等を待ち受けていた光景は、想像を超えたものだった。
あらゆる建物が倒壊し、道路は所々粉砕され、見るも無惨な状況だ。
人の死体が無かったのが、彼等には救いだった。
辺りは静まりかえっていた。
人々はその場から完全に逃げ去ってしまったらしく、姿も見えなかった。
今、彼等には、瓦礫の中から現れた銀色の巨体しか見えていなかった。
雪山にてリッドを半殺しにした(本人は殺したと思い込んでいる)張本人・スノーダイは、やっと現れた『獲物』を見て嬉しそうに叫んだ。
「最近はついてるな!」
「てめぇ、何者だ?」
シャルテオが銀色の巨熊を睨んだ。
「俺はスノーダイ。やっとお前らに追い付いた」
「追い付いた……?」
「ああ、あの剣士の仲間だろ、お前ら」
それを聞いて、ヤイナが眼の色を変えた。
「リッドさんを、知ってるんですか!?」
「ん?何だ?あいつの女か?」
スノーダイは嘲りに似た声で笑った。
「まぁ、『知ってた』と言うべきだな」
「え…?」
ヤイナの表情が凍り付いた。
彼女だけではない。
他の者達の顔にも、共通して『ある言葉』がスノーダイの口から出る事を恐れている様子が窺えた。
「リッドというのか、あのヘボ剣士は…。あいつなら、今頃、冷たい雪の下さ」
その瞬間、ヤイナ達の顔から血の気が失せた。
「お前、デタラメにしてはタチが悪すぎるよ」
少年ワノンが、キッとスノーダイを睨み付けた。
「証拠はあるのかよ」
「ああ、あるさ」
スノーダイは熊とは思えない邪悪な笑みを浮かべて、大きな掌を大地に付けた。
すると、スノーダイの前に縦長の六角形の水晶板が、大地から生えるように現れた。
そこには、ある光景が映し出されていた。
緑色の髪の剣士リッドが、胸から血を噴き出し、雪原に沈むように倒れる瞬間であった。
「…嘘…」
ヤイナは眼を見開いたまま、首を横に振った。
「そんなの、嫌……」
「あまりにも、弱かった」
スノーダイが彼女に追い討ちをかけるように言った。
「こんな奴が『花』を探す戦士として選ばれたなんて、信じられんな」
「…やめて」
ヤイナは物凄い憎悪の眼差しをスノーダイに向けた。
しかし、スノーダイは続けた。
「まぁ、あんな弱い男に惚れたお前も、哀れだな……」
「やめてって、言ってるのが聞こえないの!?」
突然のヤイナの怒号に、仲間達は飛び上がりそうだった。
「貴方はもう、許さない……!」
そう言うヤイナの眼には、この上無い殺気が込められていた。