5章:護花烈騎バンシェルラック(完)
どうやら、それ以後の作業はバンじぃがやってくれるらしく、リッドは彼に2つの金属を渡したら、暇になった。
リッドはバンじぃの作業を見守る事にした。
「しかし、なかなかマニアックな金属を選んだのう…」
バンじぃは金属を石の壺に放り込み、蓋をした所だった。
「それはマニアックな金属なのか?」
リッドは尋ねた。
「さよう」
バンじぃは壺を窯に入れて、魔法で窯に火を点けた。
「『カットラ』と『キャメイ』など、選んだ者はお主が2人目じゃわい」
「てか、その2つ選ばなきゃ、俺、死んでただろ」
「いや、実は『感電死する』というのは嘘じゃ」
「何ぃ!?」
「そうでもしないと、集中して選ばんからのう」
「まぁ、ね………」
リッドは先程本気で怒っていた自分が恥ずかしくなった。
「集中して選んだ金属から作った剣だからこそ、自分の真価を発揮する事が出来るのじゃ」
「そういうもんかなぁ」
「無論じゃ」
バンじぃは熱くなった壺をなぜか素手で持ち、蓋を開けて、ドロドロになった金属を刀身の型に流し込んだ。
「さぁ、ここからが本番じゃ。しばらくわしに話しかけるなよ」
*
それから1時間後。
「よしっ、完成じゃ!!!」
バンじぃの手には、バンじぃの身長の3分の2はありそうな長剣が握られていた。
リッドは感嘆のあまり溜め息をついて、それを見つめていた。
「ほれ」
バンじぃは剣をリッドに手渡した。
「試し斬りでもしてみんか?」
バンじぃが再び指を鳴らすと、金属の置かれた棚が床下に消えてゆき、代わりに岩の巨人が姿を現した。
「…1つ訊いて良いか?」
リッドは新しい剣を構えながら、バンじぃに尋ねた。
「何じゃ?」
「バンじぃ、まさか、こういう魔物を飼ってるのか?」
「まぁのぅ。お主みたいな者を鍛えるためにな」
「そうか、納得したぜ」
と、リッドは剣を振り上げ、岩巨人に突進した。
そして、剣を思い切り振るう。
―――特に音はしなかった。
だが、岩の巨人は頭から股まで縦に真っ二つにされていた。
しかも、切口は滑らかで、凹凸1つ無かった。
ズシン、と、巨人は床に崩れた。
リッドはいつものように剣を腰に差そうとしたが、ある事に気付いた。
「バンじぃ、鞘が必要だ」
【5章:護花烈騎バンシェルラック】
―――《Fin》