5章:護花烈騎バンシェルラック(4)
次にバンじぃがリッドを連れてきたのは、巨大な蔵のような、石造りの建物。
「まぁ、ここで剣を作っていくわけじゃ」
バンじぃはリッドを振り返って言った。
「…絶対に作らなきゃ駄目か?」
リッドは尋ねた。
いかにも作りたくなさそうである。
「どこかで買うとかは無しか?」
「チェスト!!!」
と、バンじぃはいきなりリッドのみぞおちを狙って正拳突きを決めた。
「ぐぉっ!」
リッドはその場にうずくまった。
「何、しやがる…」
「よいか」
バンじぃの口調が威厳あるものに変わった。
「この修業において、わしは師匠、お主は弟子。師匠の言う事には素直に従うのじゃ」
「…わかった」
「まぁ、それ以外にも理由があるんじゃが、面倒だから言わん」
「いや、言ってくれよ」
「…師匠の言う事には………」
と、バンじぃの目に殺気が現れてきた。
「すいませんでした」
リッドはとっさに謝った。
「わかれば良い。では、始めるぞ」
と、バンじぃはくるりとリッドに背を向けて、建物に歩いていく。
リッドもそれに従った。
*
建物の中には、ほとんど何も無く、中央に鍛冶をするための窯が設置されているだけであった。
「無駄な広さだな」
リッドは呟いた。
それからバンじぃに言った。
「あれで剣を作るわけだな」
「さよう」
と、バンじぃ。
「しかし、材料が無い事に気付いておるか?」
「そういえば」
リッドは再び建物の内部を見回した。
「とりあえず刀身と、柄の材料になる物が無いと、どうにもならないぞ」
「ふふふ…」
バンじぃは怪しい笑い声を出した。
「わしが次に何を言うかわかるか……?」
「材料を、自分で手に入れろ…とか?」
「いやいや、そこまで面倒な事は言わんよ」
バンじぃは首を振る。
「答えはこれじゃ」
バンじぃが指を鳴らすと、突如地響きが起きた。
そして、リッド達から見て窯の奥の石床から、何かが上がってきた。
それは、大きな棚であった。
よく見ると、棚には様々な金属の塊が並べられている。
「この中から2つ、刀身の材料となる金属を選ぶがよい」
と、バンじぃ。
「何だ、それだけの事か……」
と、リッドが棚に向かおうとした時。
「ただし」
バンじぃはゆっくりと大きな声で続けた。
「『ある2つの金属』以外の金属を触ると、感電死するぞ」
「はいィ!!?」
リッドはこの世の終わりのような壮絶な表情でバンじぃの方に振り返った。