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蒼月の覇者  作者: 鎖賦
13/21

5章:護花烈騎バンシェルラック(3)

 

「ほう!」

バンじぃは感嘆の声を上げた。

「見事じゃったぞ」


リッドは岸に立ち、蛸の沈んだ所をじっと見ていた。

半ば放心しているようだった。


(あの蛸に…勝った…?)

まだ彼の胸の中は疑いで一杯だった。

(これは現実だろうか)


「どうした?」

バンじぃは彼に歩み寄った。

「信じられんか?」


「…あの蛸には勝てると思ってた」

リッドはやっと我に返ってバンじぃの顔を見た。

「でも、まさか一撃で勝てるなんて…」


「一撃で倒してもらわなくては困るがの」

バンじぃは笑いながら言った。

「この先、『花』に近付くにつれ、『花』を狙う強力な魔物が出てくるからな」


「…ところでバンじぃ」


「何じゃ、次の修業か?」


「ああ」


「お主、『大地の剣』という技を使えるじゃろ?」


この質問にリッドは面食らった。

「どうして知ってる?」


「護花烈騎の情報網を甘く見るでないぞ」

バンじぃはニヤリと笑みを浮かべる。

「例えば、お主と行動を共にしておったヤイナという娘じゃが…」


「ああ」

リッドは真剣な表情で聞いていた。


だが、その表情はバンじぃの次の一言で崩れる事になる。


「…奴のスリーサイズなども知っておる」


「このエロジジィがぁ!!!」

リッドは今にもバンじぃに飛びかかろうとしたのを抑えた。


「いや、情報を入手したのはわしじゃないぞ」

バンじぃは慌てて首を振った。

「護花烈騎には女好きが1人おってな…。そいつじゃよ」


「そうか、じゃあそいつに会ったら殺しておくよ」

リッドはサラッと言ってのけたが、どうやらマジらしい。

「…で、『大地の剣』が何だって?」


「あの技を更に強力に出来るぞ」


「本当か!?」


「うむ。わしを信じろ」


「…でも、剣が無いぜ?」

リッドは両手を大袈裟に広げてみせた。


「作れば良い」

と、バンじぃ。


「ああ、なるほど。作れば……」

リッドはここまで言って、その言葉に驚いた。

「えっ?」


「作るのじゃよ」


「俺、剣を作る技術なんて無いけど……」


「何とかなるわい!」

と、バンじぃは右手の親指を立てた。


(面倒な事になってきたぞ……)

リッドは、この先が心配でならなかった。



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