5章:護花烈騎バンシェルラック(3)
「ほう!」
バンじぃは感嘆の声を上げた。
「見事じゃったぞ」
リッドは岸に立ち、蛸の沈んだ所をじっと見ていた。
半ば放心しているようだった。
(あの蛸に…勝った…?)
まだ彼の胸の中は疑いで一杯だった。
(これは現実だろうか)
「どうした?」
バンじぃは彼に歩み寄った。
「信じられんか?」
「…あの蛸には勝てると思ってた」
リッドはやっと我に返ってバンじぃの顔を見た。
「でも、まさか一撃で勝てるなんて…」
「一撃で倒してもらわなくては困るがの」
バンじぃは笑いながら言った。
「この先、『花』に近付くにつれ、『花』を狙う強力な魔物が出てくるからな」
「…ところでバンじぃ」
「何じゃ、次の修業か?」
「ああ」
「お主、『大地の剣』という技を使えるじゃろ?」
この質問にリッドは面食らった。
「どうして知ってる?」
「護花烈騎の情報網を甘く見るでないぞ」
バンじぃはニヤリと笑みを浮かべる。
「例えば、お主と行動を共にしておったヤイナという娘じゃが…」
「ああ」
リッドは真剣な表情で聞いていた。
だが、その表情はバンじぃの次の一言で崩れる事になる。
「…奴のスリーサイズなども知っておる」
「このエロジジィがぁ!!!」
リッドは今にもバンじぃに飛びかかろうとしたのを抑えた。
「いや、情報を入手したのはわしじゃないぞ」
バンじぃは慌てて首を振った。
「護花烈騎には女好きが1人おってな…。そいつじゃよ」
「そうか、じゃあそいつに会ったら殺しておくよ」
リッドはサラッと言ってのけたが、どうやらマジらしい。
「…で、『大地の剣』が何だって?」
「あの技を更に強力に出来るぞ」
「本当か!?」
「うむ。わしを信じろ」
「…でも、剣が無いぜ?」
リッドは両手を大袈裟に広げてみせた。
「作れば良い」
と、バンじぃ。
「ああ、なるほど。作れば……」
リッドはここまで言って、その言葉に驚いた。
「えっ?」
「作るのじゃよ」
「俺、剣を作る技術なんて無いけど……」
「何とかなるわい!」
と、バンじぃは右手の親指を立てた。
(面倒な事になってきたぞ……)
リッドは、この先が心配でならなかった。