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蒼月の覇者  作者: 鎖賦
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4章:雪山の魔獣(完)

 

「おい、起きろ!」


「えっ……」

ヤイナは太い声に反応して目を覚ました。

次の瞬間には寒気を感じ、少し震えた。


声をかけてくれたのはシャルテオで、その後方にテノースと妖精3人が雪の上に座り込み、彼女を見ていた。


「ああ、生きてたんですね、私……」

彼女はむくっと起き上がった。

だが、急に血相を変えた。

「り、リッドさんは!?」


「あいつに心配は無用さ」

テノースが笑う。

「こんな雪崩でくたばる男じゃないさ」


「……そうですよね」

ヤイナはホッと胸を撫で下ろした。


「うふふ」

何やら意地悪な笑みを浮かべるのは青い妖精リリア。

「リッドの事になると必死なんだね〜……」


「なっ…、違います!」

否定したが、ヤイナの頬は赤くなっている。

「私はただ、仲間であるリッドさんを心配して…」


「はいはい」

リリアはおちょくるように彼女の周りを飛び回った。

「ま、すぐに会えるよ」


「あのぅ…」

会話が一段落した所で、イオが口を開いた。

「私達が飛んでリッドさんを捜せば良いんじゃ…」


「…確かに」

ピシェラは頷いて腕を組んだ。

「俺達なら、すぐに捜し出せるんだよな…」


「じゃあ」

と、リリア。

「行きますか」


妖精3人は3方向に空高く飛んでいった。



(俺は死ぬのか……)

確実に全身の力が失われていくのを感じてリッドは思った。


もはや、傷口の痛みも麻痺しているし、意識ももうろうとしていた。

最期の時が迫っていた。


(シャルテオ、テノース、ピシェラ、イオ、リリア………ヤイナ)

彼は心の中で仲間の名前を読み上げた。

(悪い。俺は死ぬけど、『花』は頼んだぜ……)


―――その時。


微かに雪を踏む足音が近付いてくるのが後ろから聞こえた。


(スノーダイか?いや、違う……)

彼は様子をうかがうことにした。

下手に動くのはまずい。


足音はすぐ後ろで止まった。

自分の姿を見下ろされている感じがした。


「これは派手にやられたのう……」

しわがれた、老人の声がした。

「だが、死なせはせぬぞ……」



30分くらいして、妖精達は帰ってきた。


「駄目だ、どこにもいないよ」

ピシェラが残念そうに言った。

「もう、どこかに移動したのかも」


他の2人からも同じような報告だった。


「仕方ない。しばらく寂しいが、頑張るか」

と、シャルテオ。

「な、ヤイナ」


「ええ」

彼女は微笑んで返したが、どこか寂しげだった。



【4章:雪山の魔獣】

―――《Fin》


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