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吹けよ、ゆきかぜ  作者: 晴内
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私の陰鬱な午後

稚拙な文章ですがお目をお通し頂けると嬉しいです

「私」の心情の変化を感覚的に捉えられるようにこれからに活かせる表現、文章の上達を目指して書いていきます。


高校三年生の晩秋。

青森では昨晩降り注いだ初雪が、教室から見える景色全てを白く染めた。

こんな美しい風景でさえ、彼らは鬱陶しく思うのだろうか。


終業ベル間近の授業。

澄んだ青空に、先生の声とペンの走る音が淡々と響いている。

最後列、窓際の席はこの空間の様相が手に取るように感じられた。

クラスメイトたちはまるでロボット。

息を殺して、目の前の問題に意識を研ぎ澄ませる。

彼らが見えているのは、きっとそれだけだった。

そんな姿勢を横目に私はぼんやりを続けていた。

見えるこの空間の変わり様を真に受けてしまうと、無性に悲しくなるからだ。


そして、ふと思う。

進学を諦めていなければ、こんな感情とは無縁だったのかと。

彼らの仲間として、この輪の中に身を寄せていられたのかと。

クラスメイトたちは変わった。

“受験”という二文字の前に。

私が変われなかった。ただそれだけのことなのに、

彼らとの隔たりがこんなにも大きくなるとは知らなかった。

ここにあるのは、私と、私以外のような……

そんな孤独感が憎かった。


私のクラスはとにかく元気で温かい人達ばかりで、私にとって安らぎの場所であり、もうひとつの我が家のような場所だった。

楽しくて、楽しくて。

いつまでも続いてほしかった学校生活だった。

でも、くしくもそれはもうエピローグを迎えている。

この一つの大きな壁がその目印。

メインキャストからエキストラにドロップアウトした私。

つまりは、この閉まりゆくチャプターの片隅に私は居る。

果たしてエンドロールに私の名前はあるだろうか。

いや、ないだろうな。

誰にも気が付かれないようにそっと窓を開けて、冷たい空気を取り込む。

すこしの気分転換も程々に、彼らの邪魔にならないよう直ぐに閉めた。

そろそろ日が落ち始める頃だと感じた。

まもなくして授業終了のチャイムが鳴り、本日の日程は終了した。

私は荷物をまとめて、逃げるように教室を出る。

別れの挨拶を交わす習慣はとうに無くなっていた。

彼らはただただ課せられていた問いを解いていた。

きっとその先に待つだろう輝かしい未来を勝ち取るために。


冷気漂う廊下で不意に今まで私は心地好い夢を見ていたような、そんな感覚に襲われる。

無くなって初めて実感した温もり。

自分にとって大切だったものの消失がこんなにも恐ろしいなんて。

もし今、進学を決めていたなら。

再びそんな考えが頭をよぎる。

でも、今更そんな事を考えたって仕方ないのだ。

これが私の決めた道なのだから。


不意にあの時の記憶が懐古された。

私は生花店を営む夫婦の間に生を受けた。

私の両親は大嘘つきだった。


小さい頃私はテレビの向こうで歌う歌手に憧れて、それを真似てよく歌う子だった。

父親に歌を披露しては、『じょうずだね、うまく歌えたね』と誉められるのが嬉しかった。

母親の腕に包まれて歌った時の暖かさに幸せを感じて、『また明日も歌おうね』と、希望をはらんだ。

そして、歌番組が放映される度に、ステージで歌う自分の姿を想像しては、歌手になりたいという決意を堅くした。


私は今でも忘れてなどいない。

歌い終わった後の両親の笑顔。

そして、ただ一言、

「夢に向かって頑張りなさい」と。


私はその夢を高校三年生まで持ちこんだのだった。

私は音楽大学に進学をする。

幼い頃からの夢であることを知っていた両親はいつも私の事を応援してくれた。

夢は溢れるほどの光を放ち、私の未来を照らしていた。


あの日までは。


あの日、そう、あの日。

おそらく、あと一話、二話で完結します。


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