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千年巫女の代理人  作者: 夕暮パセリ
第四章  リヴォン川の渦巻く流れに
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逆巻く渦に抗して11 巌のガーク

「わたしの従者に会わせてください。パーヴォットといいます。まだ十五の少年でわたしの師匠から託された師匠のお子さんでもあります」


 祐司は警護の兵士に近づいてダメ元で聞いてみた。


「オレの娘にも会わせろ。ボティルっていう名だ。ルール通で働いてるんだが具合が悪いんだ」


 いつの間にかガオレが祐司の後ろについてきており、祐司に続いて兵士に言った。祐司はガオレが言った名に聞き覚えがあった。


 兵士は祐司達の言葉には答えずに、指で座っていた場所に戻るように指示した。


「ガオレさん、間違っていたらどのようにもお詫びします。ボティルさんていう娘さんは”黒猫亭”で働いていませんか」


 座り直した祐司はすぐにガオレにたずねた。祐司はリューディナの紹介でパーヴォットの手紙を託した、ひどくやつれた少女がボティルという名だったことを思い出したのだ。


「ああ、ボティルは”黒猫亭”で働いてる。オレの甲斐性がないもんで、辛い目にあわせてるんだ」


 ガオレは座り込むと、少し声を落として言った。


「あなたがボティルさんのお父上でしたか」


「名を知ってるってことはボティルと遊んだのか?」


 ガオレは少し上目遣いに祐司を見て言った。いくら、承知の上とは言っても、十代半ばの自分の娘を買った男として心が騒がなければ人として壊れているだろうと祐司は思った。


「いいえ、手紙を届けるように頼んだだけです」


 あわてて、祐司は弁解するように言った。


「すまん。あんたなら、あの子の様子を見て無理なことは言わないだろうな」


 ガオレが遠い目をして独り言のように言った。


「あの子が身体を損ねたのはオレのせいだ」


 それから、ガオレが黙り込んでしまったので祐司も何も聞かなかった。


 半刻(一時間)ほでして食堂のドアが開いてネースレンと市庁舎の老人がいっしょに戻ってきた。


 ネースレンは台の上に立つともったいぶったような口調で言った。


「義勇軍動員令の法的根拠である非シスネロス市民動員法、第二条第二項により義勇兵契約書に著名してもらう」


「その契約書はどこにある」


 ガークが火の王のような口調で聞いた。ネースレンは思わず頭を少し下げた答えた。


「今、作らせています」



「オレの志願はどうなった」


 ツハルツという若い兵士は倍ほども年が違うであろうネースレンにため口で聞いた。


「無礼な口のききかたをするな。わしは隊長だぞ」


 ネースレンは虚勢を張って答えた。


「噂は聞いたぞ。市庁舎じゃ、ネースレン隊長殿は冬至の太陽ってあだ名だってな」


 ツハルツは意地の悪い口調でネースレンに言った。


 冬至の太陽とはリファニアの慣用句で存在感がないことや、どん底状態の例えである。ネースレンは余程悔しかったのか半分涙目になりながら恨めしそうに、そして、何も言い返すことのできないのか黙ってツハルツを見ていた。


 祐司は中学校の頃に、気の弱い若い教師が学年のゴンタ連中に取り囲まれて威嚇され、涙目でうわずった声をあげていた場面を思い出した。


 見かねた市庁舎役人の老人がかわって答えた。


「非シスネロス市民動員法、第五条第三項および第六条一項を検討した。断ることはできないという判断だ。ただし、義勇軍に所属している間は市民権は停止される」


 ツハルツの目が笑った。そして、まだ涙目のネースレンを差し置いて市庁舎の老人に聞いた。


「おっかあたちに、銅貨八枚と食べ物は届くのか?」


「ワシは市庁舎で三十年働いておる。だから顔も利く。この隊の有象無象のことはワシが責任を持っておるから心配するな。必ず手配する」


 市庁舎職員の老人が朴訥な感じで言った。祐司には、それが老人の人柄をあらわしているようで言葉を信じてよいように思えた。

 ツハルツという青年もそう感じたのか、老人に家族の住所や人数を言う。それを、丹念に書き留めると老人は食堂を出って行った。



「ひょっとして、”いわお”のガークさんですか?」


 ガークに近づいてきた、少し素行の悪そうな感じを受ける、派手な服装の男が恐る恐る聞いた。


「そう呼ぶ輩もおる」


 ガークは背の高い彼を見上げていた男にぶっきらぼうに答えた。


 ガークという名は知られているのか、あちらこちらから驚嘆するような小声が聞こえる。


 集団の中から体格のよい四十代半ばと思える中年の男がガークの前に進み出てきた。上品な上着を着た男は雰囲気もなんとなく上品な感じがした。その男は決意表明をするかのようにガークに言った。


「ガークさん、お願いがあります。我々のほとんどは戦争には素人です。あなたに我々の隊長になってもらいたい」


「賛成だ」「ガーク隊長ならどこまでも着いていくぞ」 食堂のあちらこちらから賛同の声がする。


 上品な感じのする中年の男が手を振って食堂のざわめきを静めた。そして、食堂の端まで響き渡るような声で言った。


「みんなの意見はどうだ。これは生きるか死ぬかの選択になるかもしれない。よく考えて見てくれ。ガークを隊長として仰ぐからには絶対にガーク隊長の命令には服従だ。そして、わたしはガーク隊長に命を預ける。それでも賛成の者は手をあげてくれ」 


「ガークさんなら知っている。オレはいいぜ」「巌のガークに命を預けるぞ」


食堂にいた全員が手を挙げた。



「こら、隊長はわたしだ」


 ネースレンがあわてて叫んだ。


「あんたが ”巌のガーグ”より武勇戦術に優れているなら従おう」


 上品な感じのする中年の男が言い返す。


「勝手にしろ。だが、書類ではオレが隊長だ」


 ネースレンは完全にふてくされていた。六十代とも思える男がふてくされているのは祐司には、滑稽であり哀れであった。


「おっちゃん、さっきは悪かった。でもよ、隊長をガークさんに譲って楽になりなよ。そしたら、あんたを英雄にするよ。あの”巌のガーク”部隊を率いたのはオレだって自慢できるようにな」


 ツハルツがネースレンを慰めるように言った。


「書類上ではワシが隊長だからな」


 ネースレンの言い方は、どことなく子供ぽかった。



「ご老体、あなたが、このグループに入れられた理由は?」


 ”巌”のガークと呼ばれた男が、いつの間にかガオレに近づいてきて聞いた。


「わしは巫術師だ。降雨術はワシの得意とする巫術だ。今日の雨を見ただろう」


 ガオレは自信ありげな言葉遣いで答えた。


「昼間の豪雨を見ただろう。この人がやったんだよ。オレはすぐ横で見ていた」「あんな凄い術が使える巫術師はめったにいない」「えれえ、人がいたもんだ」


 あちらこちらで、ガオレを賞賛する声が上がった。



 その時、食堂のドアが勢いよく開いて、市民軍高官の正装を着込んだ男が護衛の市民軍兵士とともに入ってきた。


「バロォーミー・ガオレ・ハル・バンゼ・マール・ディ・ラウサ。ガオレ、懲罰除隊を取り消して市防衛隊に復帰を許可する。すぐに支度しろ」


 市民軍高官らしき男は、ガオレの姿を見つけると大声で怒鳴った。


「おい、ガオレさん。わしらと一緒に居てくれ。オレは馬を扱ってるナサーンって言う者だ。ここで見知っている者もいると思う。ただの武芸好きの親父だ。それが幸いして”巌のガーク”に会えた。りっぱな我々の隊長だ。

 そして、この隊にはどうしても巫術師の力がいる。あんたに毎日金貨一枚を出そう。もし、死んだら身内に金貨五十枚を補償する」


 あわてた様子で、ガークを隊長と仰ごうと言った、上品な感じのする男が、ガオレと市民軍高官の間に割り込んできてまくしたてた。市民軍高官はそれを無視して事務的に言葉を続けた。 


「改めてシスネロス市に忠誠を誓い、除隊の原因になった数々の悪口と反抗的な態度を上官に詫びるのだ」


 市民軍高官は最後はあきらかに感情むき出しで怒鳴った。明らかにガオレと面識があるようだった。


「テメエらのためじゃなく、今度はオレとオレの娘のためにだけ戦う。一昨日おとといきやがれ」


 しばらく、黙っていたガオレはツバを吐くと啖呵を切った。


「ゲス野郎、最後の手綱を離したな。勝手にくたばれ。上の方が戦で血迷ってるがオレはお前が名誉ある市民軍に戻ってくることなど願い下げだ」


 顔を真っ赤にした市民軍高官は、そう言うと護衛の兵士を引き連れて食堂を出って行った。その後ろ姿にガオレが吠えた。


「オレはこれでも歴戦の勇士だ。テメエらよりは戦を知っている。一つ教えておいてやる。戦場でオレがくたばるときはお前らも死ぬときだ。死にたくなかったら仮病でも使って家で寝ていろ」



「ナサーンさん、ワシはあんたの報酬でここに残るって決めたわけじゃない」


 ガオレは、ナサーンと名乗った上品な感じのする男に言った。


「でも、もしワシが死んだらワシの娘に金貨五十枚を渡してやってくれ。ワシの日給は生きて解放された時に、あんたの評価で払ってくれ」


「わかった。ナサーンは一度口に出したことを翻したことはない。それで、シスネロスの市民権がなくとも商売が人並みにできるようになったんだ」


 ナサーンは、節くれ立ったガオレの手を握って言った。



「ガオレさん、さっきはあんなこと言ってよかったんですか。市民軍の巫術師ってそこそこの待遇なんでしょう。市民軍に戻っての巫術師なら死ぬ確率は低いですよ。無事な姿を娘さん見せて欲しいです。

 ネースレンさんに頼んで見たらどうですか。あの人は頼りないけど一応市庁舎の役職持ちらしいですから」


 祐司の問いかけに、ガオレは首を左右に振った。 


「いいんだ。本当は傭兵隊の巫術師になりたかったんだが、腕が足りなかった。次にドノバ候に仕えたかったが身から出る器量が足りなかった。

 しかたなしに市民軍で雇って貰っただけだ。入るんじゃなかったよ。もう、二度と関わりたくない」


 巫術師の腕が自分たちの生死に関わる傭兵隊は、技量を一番に巫術師を採用する。シスネロスでは、長年、傭兵としてして勤めるとシスネロス市民権も獲得できて、年金もつくために、より優れた巫術師が集まる。


 ドノバ候親衛隊は少数精鋭で格式も重んじる。ガオレが器量と言っているのは身分的な要素に基づく言葉遣いや立ち振る舞いのことだろうと祐司は思った。


 市民軍は名の通りに、シスネロス市民の義務的な軍事組織である。年間に何回か訓練を受ける兵士と常勤の指揮官、文官組織から成り立っており当然、全員がシスネロス市民である。


 ただ、希少価値のある巫術師は鍛冶や焼き物などの仕事に必要であり、市民だけで専属の巫術師を集めることはできない。

 そのために、ガオレのような非シスネロス市民で腕が落ちる巫術師であっても雇用する必要がある。


 巫術師はプライドが高い。嫌々行った市民軍で、周囲は全てシスネロス市民となるとガオレが面白くない体験をしたとしても不思議ではない。


「ユウジ殿、貴公は信頼に足る人物と見込んでお願いがある」


 ガオレは思い詰めたよう顔で祐司に言った。


「娘さんのことでしょうか」


「そうだ」


「そんなことはあり得ませんが、あなたに万が一…」


「いや、娘の行く末はナサーンさんにお願いした。娘の幸せの為にオレの告解を聞いて欲しい。さっき、アハヌ神殿の神官が来ているという話を聞いた。ユウジ殿とガーク殿に立ち会い人になって貰いたい」


 このガオレの言ったことには少し説明がいる。


 リファニアの”宗教”儀式にキリスト教の懺悔ないし告解こっかいに類似したものがある。特に死に瀕して、聖職者と証人の前で自己の罪を告白して、神々の許しを得てから冥界に旅立つという形式である。


 ただ実際は死に臨んで罪を告白することが難しいために、死を意識しだした時に行うというのが一般的である。


 ガオレは祐司をともなってガークに、告解こっかいを行いたいことと立ち会い人になって欲しいと懇願した。

 ガークは尋常ならざるガオレの様子に思うところがあったのか、ガークは脅かすようにネースレンに神官を呼んで告解を行うようにと話をつけた。


 ガーク、祐司、ガオレは義勇軍兵士の武運を祈るために来ていたアハヌ神殿の神官とともに食堂の奥にある調理員の休息室で告解を行った。



 ガオレの話は次のようなものだった。


 ガオレは中央盆地の最南部にあるラウサ州の出身である。十代半ばまで比較的豊かな農家の次男として実家で羊の放牧などを行っていた。

 小さい頃から巫術の才能があったので村の巫術師になれと家族や村会のお偉いさん達から言われ続けていた。


 しかし、ガオレは折角の才能を小さな村で埋もれさすのが嫌で、たまたま村にやってきた流れの巫術師に無理矢理弟子入りして村を逃げ出すように出て来た。


 数年後に流れの巫術師が客死したので小さな傭兵団に入った。若い頃はあちらこちらを転戦しながら結構気ままに暮らしていた。


 しかし、三十歳半ばを過ぎた頃に傭兵団の内部争いで団はあえなく解散した。その時、駐屯していた小さな街で知り合った女中奉公のネリーナという若い女と駆け落ちした。

 ただ、巫術の力が目に見えておちだしたガオレを、常雇いで入団させてくれる傭兵団はなかった。子供はその間に三人出来たが旅の途中で二人の男の子に死なれて残ったのはボティルだけだった。


 ガオレ一家は巫術の半端仕事をしながら、中央盆地を放浪しているうちにシスネロスへ流れてきた。ここでガオレは一念発起して巫術を鍛え直してなんとか巫術師として市民軍に採用された。


 安心したのかガオレは、若い頃と同じように酒に女遊びという生活に戻ってしまった。それでも、ネリーナが生きているうちは、やりくりをして最低限の生活はできていた。


 ところが、長年、雑役婦などをしながらガオレを支えていたネリーナが寝込んでしまった。悪いことは重なるもので、ガオレは余所者扱いされていた市民軍の上官と大喧嘩の末に、市民軍を解雇されてしまった。


 それでもガオレは以前と同じような生活を続けていた。しかたなく、まだ十才になったばかりのボティルがネリーナの看病や家事をしていた。

 目がさめたガオレはできるだけのことはしたが、そのかいなくネリーナは一年ほどで帰らぬ人になってしまった。


 すでに借財はガオレの以前の年俸を超える額になっていた。住んでいた家から家財道具までたたき売ったがそれでもかなりの借金が残った。


「家を出るときに、ボティルがおうちが無くなるって初めて泣いたんだ。生まれてからずっと放浪暮らしでやっと人並みに落ち着いた場所だったからな」


 ここまで話をした時にガオレは涙で言い淀んだ。

 

「そこで、どうにもならなくなって、ボティルを以前客で通っていた”黒猫亭”に奉公へ出すことにしたんだ。あそこの親父はまだ信用できるからな」


「”黒猫亭”ならそうだろうな」


 ガークが突然、口を挟んだ。


 祐司はガークは、ひょっとして”黒猫亭”の常連ではないかと思った。ガークには、女遊びが好きだったキンガ師匠の匂いが少しばかりしたからだ。


「親父はまだ一二年は客を取らなくてもいいって言ってくれてたんだが、あいつは少しでも借金を返して、また、またオレと自分の家に住みたいって言うんだ」


 ガオレは決心したように言った。


「それで、客をとり出したんだ」


 次のガオレの言葉まで誰もが辛抱強く待った。


「ところが、孕んでしまってな。専用の巫術師に頼むと、堕胎する金が惜しいから、オレにやってくれって言うんだ」


 ガオレは力を振り絞るように言った。


「まだ、オレは完全に元に戻っちゃいなかったんだ。普通の親なら娘の堕胎なんてできっこない。でも、今日の酒代をどうしようなんて考えているうちにやっちまったんだ。

 そんなことやったことなかったからな。堕胎はできたんだがボティルがすっかり身体を壊してしまってな。後で診せに行った専門の巫術師に怒られたよ。もう、子供が産めない身体になってるかもしれないってな」


「これが、オレの悪行だ。神々は許してくれるか。いや、オレはどんな罰でも受ける。ボティルには幸せになって欲しいんだ」


 ガオレは少し涙ぐんでいた。


「バロォーミー・ガオレ、あなたの告解は、アハヌ神に伝えましょう。これからは娘さんの為にお働き下さい」


 神官はガオレの手を合わせてから、自分の手でガオレの手を包むように握った。


「ガーク殿とユウジ殿、あなた方はこの告解の証人になり、このバロォーミー・ガオレの名誉の為と、神殿で証言を求められた以外には、今日聞いた話は決して他人に他言しないと誓ってください」


 神官の言葉に祐司とガークは、リファニアでは承知というボディーランゲージである、右手を胸に当てて、何も言わずに少し頭を下げる仕草をした。これは、神々には、沈黙にして誓うという宗教的な慣習のためでもある。


「もう一つある。さっき市民軍のエライさんが来たときに、オレの変なプライドですぐに返事ができなかった。

 ナサーンさんが金のことを言ってくれる前に、本当にボティルのことを考えのなら頭を地面にすりつけてでも市民軍への復帰を承知するべきだった。でも、オレはへんなプライドの為にそれを躊躇ったんだ」


 まだ、涙ぐんでいるガオレに、神官は優しく言った。


「それはヘンなプライドではありません。そして、その反省が出来るあなたは今後、正しい道を選ぶことができるでしょう。どうか、アハヌ神があなたの心の中に示されます道をお歩きください」



 祐司は、ガオレとオークが部屋を先に出て、その後、神官が部屋を出て行くときに神官に声をかけた。


「神官様、わたしは一願巡礼のジャギール・ユウジと言います」


「何故、一願巡礼がこのような場所に?ご自分の意志ではないのですか」


 神官は、祐司の胸にある一願巡礼の印であるオオタカの羽に気が付いていた。


「有無を言わさずに拘束されました。どうか、わたしを釈放するようにお口添えを願えないでしょうか」


「すぐに、アハヌ神殿の神官長に連絡いたします。今、しばらくのご辛抱を」


 神官はゆっくり頭を振ると、祐司の手を握って言った。


 祐司はアハヌ神殿が、間に入ればすぐにでも釈放されるだろうと考えていた。ただ一願巡礼に対して、義勇軍召集令がどう取り扱うかの規定が無く神官長自らの要請を市庁舎に行ったにも関わらず返事はなしのつぶてだった。


 アハヌ神殿の神官長の要請を遠回しに断ることはあっても、無視するなどとは通常の職員が通常の勤務を行い、市参事会が機能していれば考えられない事態だった。


 その考えられない事態が、市庁舎の中で横行していた。



挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)



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