表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年巫女の代理人  作者: 夕暮パセリ
第十六章 北西軍の蹉跌と僥倖 下
713/1164

イルマ峠の紅アザミ7  イルマ峠城塞への道 四

 湖岸に到着した船から最終的な組み立てが行われた。少しでも軽くするために取り外すことのできる部分は別途輸送されていたためである。

最初に航行可能になった三隻で偵察が行われた。この三隻には百人ほどの兵士が分散して乗っており、北岸に橋頭堡きょうとうほを作りさらに北岸からイルマ峠城塞守に至るルートに目印を設置することになっていた。


 また先遣隊には周辺に人がいる場合は間者の可能性があるので、秘匿のために躊躇うことなく殺害せよという命令もモンデラーネ公軍別働隊指揮官オラヴィ準男爵から出ていた。


買収して道案内をさせた地元の猟師からの情報では、ホフ湖周辺に住むのは東岸に小規模な漁民の村だけで、希に巡礼が湖自体を参拝にくるということだった。

 巡礼はモンデラーネ公軍がアヴァンナタ州に侵攻して以来逃げ出すようにいなくなったのでその姿を見ることはなかった。


ホフ湖東岸にあるという漁民の村を襲撃するという案もあったが、やぶ蛇という恐れもあった。

 苦労してホフ湖まで隠密裏にやってきたが、集落を襲っても皆殺しは難しく北西軍に報告されてしまう恐れが高かった。


 猟師の話では漁業権の関係で彼等は集落付近でしか漁をせず、南岸や北岸に接近するのはほとんど見たことがないという。

 また彼等は湖の中央から東にはやってくることはないので、西岸を航行すれば見つかることはないとも猟師は言った。そこで湖で出会って目撃された場合を除いて漁師の集落は放置することになった。


 事前の打ち合わせではイルマ峠城塞の襲撃は六日後であり、明日以降漁民に見つかっても他の集落からは二日行程は離れているという集落なので北西軍は対応できないという算段もあった。


 この判断は当初の計画通りイルマ峠城塞守を奇襲攻撃で奪取できればなんら問題のない判断であった。

 実際にそうなったように城塞は早期に陥落せず包囲戦となり、さらに解囲軍が現れたような状況ではホフ湖の漁師も北西誓約者同盟地域住民である以上致命的な結果をもたらす恐れがあった。


 漁民の問題よりも時間がないために持っていく物資は最低限で、ともかく兵力を北岸に送り込むことに努力が傾注された。

 船が完成して湖に浮かぶと、モンデラーネ公軍には船舶工兵のような兵種はないので支配地から集められた川船の船頭や川漁師が操船のために乗り込んだ。

*話末注あり

 

 そして一隻について三十数人前後の兵士を乗り込ませた。船には横長の一枚帆が装備されており、自然の風と送風術のできる巫術師の力で推進力を得るために使用できた。


 ホフ湖南岸から北岸までは五十リーグ(約九十キロ)で、船は一日弱で到達できる計算だった。

 中世段階の内陸の移動手段としては魔法のような速さである。リファニアでは巫術師による送風術の恩恵があり、海上だけでなく内陸水運が発達しているのはこのアドバンテージがあるからだ。


 船の艤装が終了するとクレスタ達が作った筏が船に繋がれた。船に筏を曳航させて輸送力を増大させるためである。

筏自身に帆が艤装された上に、形は曳航される時に出来るだけ抵抗が少ないような形に工夫されていた。


 曳航時の速力低下は複数の巫術師を使用して無理矢理にでも維持されることになっていた。

 ただホフ湖は氷河湖というイメージから波の静かな湖だと連想されるが、冬季は北から夏季は南から相当の風力で風が吹くのと、周囲の山々から風が吹き下ろしてきた時に小舟などが翻弄される状態になる。


 このような状態になると筏は波を被って航行できなくなるので、船は常に湖岸を航行して波の状態が悪ければ筏を切り離すことになっていた。

 切り離された筏に乗っていた者達は湖岸に漕ぎ寄せて、そこで波の状態がよくなり新たな船に曳航されるまで待つという乱暴な計画だった。


計算では三往復すると全ての兵士と相応の物資を北岸へ運べる。日数にすると昼夜兼行で五日から六日になる。

幸いに太陽が沈むことがない白夜の季節であるので、すぐさま兵士の輸送が開始された。



クレスタは第一陣の船団に乗った。クレスタが乗ったのは筏だった。筏は大きな二本の丸太を一間(約一.八メートル)ほど離して平行においてその上から小振りの丸太と斧で急いで作った板で留めたような構造だった。


 丸太は兵士が乗り込んでも完全に水没することはなかった。このため筏といっても二本の丸太を船体とした双胴船のような形態になっていた。


 筏の先端は多少とでも水の抵抗が少なくなるように丸太が尖らせてあった。


 長さが八間半(約十五メートル)、幅が二間半(約四.五メートル)ほどの板敷きの床の上にいると思えばいい。ここに五十人から六十人ほどが詰め込まれる。

筏の中央には二間半(約四.五メートル)ほどの高さの帆柱があった。帆柱には一枚帆があって筏自体も多少の航行能力があるので曳舟の負担を減らしていた。


 その帆の操作や沿岸での筏の動きを調整するために筏にも船頭ないし川漁師が二三人乗り込んでいた。


 兵士は自分が建造作業をした筏に乗ることになっていたが、人数割りの関係でクレスタが乗った筏は自分が建造に関わった筏ではなかった。

 しかし乗り込んだ筏は自分が建造に関わり、かなりしっかりした出来だと思った筏よりさらに堅牢な造りになっていたので安心して筏に乗り込むことができた。


 クレスタは船については河川の渡し船程度のものしか利用したことがなく不安があったが出だしは順調だった。

 筏は安定性がありゆっくり左右に揺れる程度で、クレスタは安心して筏に身を任せることにした。


 クレスタの筏を操作しているのは、四十代半ばの気難しそうな男とまだ十代と思える若い男だった。

 クレスタはあえて気難しそうな男に「筏の扱いは上手いのかい」と聞いた。痩せ気味で頬が少しこけた男は「オレはデレット州の筏流しだ。気が散るから声をかけるな」と言いながら若い男を指差した。


 どうもしゃべりたいなら若い男にしろということらしかった。



挿絵(By みてみん)




 そこでクレスタは若い男に「名は何という」と声をかかると、若い男は「ナルドです。わたしはデレット州の川漁師でリヴォン川で漁をしていました。筏で漁をすることもあります。ただ人を乗せた筏とか帆のある筏は初めてなので今慣れているところです」とクレスタが聞きたいことを全部しゃべってくれた。


 クレスタが「どうしてここに来た」とたずねると、若い男は「リヴォン川で漁をするには御領主様に特許料を払わなければなりません。でもモンデラーネ公爵様の軍で働けば免除されるというので来ました。来て良かったと思います」とクレスタの顔色を窺いながら愛想笑いをして言った。


 クレスタは若い男は自分を怖がっているらしいと思ったので、それ以上は話しかけることはなかった。


 クレスタが二人の船頭を見ていると、筏師だといった気難しい顔の男はずっと船尾にある艪を持ってそれを舵代わりにして筏の向きを微調整しているようだった。

 そして時々若い川漁師の男に呼びかけて、帆の位置を調整させていた。クレスタは筏は引っ張られるだけなので、何故船頭が二人も乗り込むのだろうと思っていたが二人の仕事ぶりを見て納得した。


 湖面には心地よい南風がずっと吹いており、巫術師が頑張らなくとも北に向かう船は周囲の景色を見ていると目立つ山の頂が随分と先にあると思っていたのにすぐに間近に見えてくるという感じの速度で進んだ。


 クレスタが歩くことなく楽なものだとたかをくくっていると、次第に湖に多少うねりが出てきた。

 筏の上下の動揺は大きくなり、筏は前後に揺れだして船酔いを起こす者が出てきた。そのような者は這いつくばって筏の端まで行って何も出なくなるまで吐いた。


 クレスタもそのような者達を見ているうちに気分が悪くなってきた。


 まる一日筏に乗っていなければならないので三食分のパンとテーズ、干し肉などを持たされていたがまったく食欲がなく毛布にくるまってクレスタは寝ることにした。


 筏の広さは畳にして四十数畳で、そこにクレスタが勘定したところ二人の船頭を含めて五十二名の人間が乗り込んでいる。

 一人にすれば一畳弱ばかりの面積である。なおかつ個人の武具や日用品と当面の食糧が入った頭陀袋がある。


 そこで寝ればかなり窮屈な雑魚寝であるが、クレスタをはじめモンデラーネ公軍の兵士は行軍時の幕舎生活は慣れていた。


 冬季行軍時には寒さ対策で筏の倍以上の密度で幕舎に押し込まれる。それに比べると戸外でも寝ることの出来る季節であり、見上げれば空の見られるオープンスペースであるからクレスタは狭いとは感じなかった。


 平坦な板張りの筏であるが筏の外側には二ピス(約六十センチ)おきくらいに高さ一ピス(約三十センチ)ほど甲板から突き出た角材が打ち付けられており寝入って筏から転げ落ちることを防いでいた。

 また角材を支柱にして飛沫よけの革が張ってあったので、多少の波があっても濡れずに過ごすことができた。

 

連日の筏作りで知らない間に疲れていたのかクレスタは自分ではかなり長い間と思えるほど寝ていた。起きると太陽が北東のあたりにあった。

 クレスタがすぐに方位がわかったのはホフ湖がほぼ南北のに延びた湖であるので、湖の中や見える位置にいればホフ湖は自然の大天然磁石の役割りをしてくれるからだ。


 寝入った時は太陽は北西の方向にあったので、およそ九十度移動したことになる。時間にすれば六時間である。


 クレスタはそんなものかと思って体をほぐすために両手を上に伸ばした。


 湖は鏡面のようにとはいかないが、細かな上下の波以外はほぼ波はなくなり筏の揺れは感じなくなった。


 クレスタは波が静かになったので太陽のある方向の湖面が輝いているのをしばらく見ていた。

 もしパーヴォットであればそのまばゆい輝きの中に、三リーグ(約五・四キロ)ほど離れた場所に小舟が一隻潜んでいるのを見つけただろう。


 クレスタは波が静まった湖面を筏の縁から少し顔を乗り出した見た。すると透き通った水の中を湖底から何やら白い塊がクレスタ目がけて上がってきた。


 その白い塊は湖の中で舞でもしているように左右あるいは上下にと優雅に時に素早く動いた。

 そして次第に白い塊は湖面の近くにまで浮上してきた。そこでようやくクレスタはその白い塊の正体がわかった。


 白い塊は白い服を着た若い女だった。その女の顔と服装には見覚えがあった。クレスタは木に吊られていた女だと確信した。

 女は水面すれすれまで上がってくると、クレスタの方をじっと見てから「行ってはいけない」と言った。少なくとも女の口の動きからクレスタはそう言ったように見えた。


「あんまり乗り出すと落ちますよ」


 若い船頭の声がした。


 我に返ったクレスタは湖面を覗いたが何も見えなかった。



 筏の先端の方にいた兵士が立ち上がって「先遣隊の船だ」と言いながら前方を指さした。

 クレスタも思わず立ち上がってその方向を見ると、三隻の船がこちらに向かって南下していた。


 南風なので南下する船にとっては逆風になるが、北上する船団とはそう違わない速度で航行していることから腕のいい巫術師と船頭が乗っていることがクレスタにもわかった。


 三隻のうち二隻は乗っている船頭が手を振りながら船団とすれ違ったが、一隻は反転するとすぐに船団の先頭にいたモンデラーネ公軍別働隊指揮官ドラヴィ準男爵が乗った船に同航する形で横付けした。


 しばらくそのままの形を保っていたが、やがて先遣隊の船は再び反転して先に行ってしまった二隻を追うためかより速度を上げて去って行った。

 先遣隊が北岸の様子をドラヴィ準男爵と幕僚達に伝えたのだろうと去りゆく先遣隊の船を見ながらクレスタは思った。



 出発以来船団は岸から三ペス(約五十四メートル)ほどというホフ湖の西岸近くを航行していた。


 そのために左側は常に断崖に所々断崖の下に僅かな浜があるような光景が延々と続いて自分がどれほど進んできたのかはわからない。多分同じ所を行ったり来たりしても気がつかないだろうという単調な光景である。



挿絵(By みてみん)




 右手は遠方に山々が連なる光景が見える。


 ホフ湖は東西は幅の広いところで十リーグ(約十八キロ)であるから、湖面上からでも天候さえよければ対岸が見える。

 山はなだらかだが大きな山体や小振りでも尖塔のような山とかなり特徴が違うので、右手の風景を見ていると自分が見たことのない場所に進んでいることがわかる。


 もう半ば以上は進んでいるのか、今まで水平線しか見えなかった北の方角にかすかだが陸地が見えていた。


 目的地の北岸である。


 クレスタはしばらく目を細めて北岸を見てから筏に乗ってから初めて腹が減っていることに気がついた。そこで朝食を食べることにした。


 頭陀袋から取りだしたモンデラーネ公軍ではお馴染みのペミカンビスケットとホフ湖の南岸にいた時に自分で見つけた木苺をクレスタが食べ終えようとしたころに気むずかしい顔の船頭が大声を出した。


「寝ている者もみんな起きてくれ。大変だ」


 筏という慣れないモノに乗って多少不安があるモンデラーネ公軍の兵士は「大変だ」という声に一斉に上半身を起こした。


「旦那方、風がやんで久しい。この筏を引いてくれる前の船から合図があった。”送風術”を行っている巫術師が限界らしい。しばらく前から術をやめてる」


 気むずかしい顔の船頭が言う。


 クレスタが自分の乗っている筏がいつの間にか船団の最後尾に位置して、さらに船団が徐々に遠ざかっていることに気がついた。

 すると十間(約十八メートル)ほどの長さのロープで結ばれた筏を曳航する船の船尾にいた船頭が「そっちもしばらく漕いでくれ」と大声を出した。


「旦那方、聞いた通りだ。巫術師が術をかけれらるようになるまで漕ぐんだ」


 気むずかしい顔の船頭が居丈高な声で上げた。


 船頭は近代軍で言えば軍属である。軍属が軍人に命じるなど本来はあってはならないが、陸地の上では幾ら精強なモンデラーネ公軍の兵士でも筏の上では船頭の言に従うしかない。


「漕ぐってどうやって?」


 同乗していた半隊長がいつもの強面な感じではなくすがるような声で聞いた。


 すると若い船頭が帆柱の近くに置いてあった長さが三ピス弱(約八十センチ)ほどの角材を近くの兵士らに渡し始めた。

 その角材の端の片側には手の平ほどの倍ほどの大きさの板が角材を割って挟み込んであった。急造のオールである。


 クレスタは自分達が重い丸太を運び筏を作っているときに座り込んで作業している半隊を見て何を楽なことをしているんだと羨んでいた。


 どうもその半隊はオールを作っていたのだとようやくわかった。角材を割って板を挟み込んで蔦で何重にも巻いてあるところを見ると、それなりに苦労して作ったことが見て取れた。


 

「それで漕いでくれ。二十ほどしかないから交代で。漕ぐ時は一斉にしないと駄目だから誰か合図の声を出さしてくれ」


 気むずかしい顔の船頭が半隊長にぶっきらぼうな口調で言った。


「最初に一班と二班が漕ぐ。余ったオールは五班の者が交代で漕げ。戦士長は合図役だ。半刻で三班と四班に交代する」  


 それを聞いた半隊長はいつものように的確な指示を出した。


 すぐに二十のオールがたくましい腕の男達によって動き出した。クレスタは「一、二、漕げーー」と合図の声を張り上げた。


 筏を引っ張る船でも漕走をはじめたが、船団には徐々に遅れて一刻半(三時間)で一リーグほども引き離された。

 勝手知らないリファニア第一という湖の上で取り残される不安から筏に乗ったモンデラーネ公軍の兵士は必至でオールを漕いだ。


幸いなことにようやく送風術を行う巫術師の体力が回復してきたのと、追い風になる南風が弱いながらも吹き出した。

 それでも船団に追いつくためにクレスタの乗った筏ではさらに一刻(二時間)ほどオールを漕がなければならなかった。


 ただすることが出来たので船酔いになっている者はこのオールを漕いでいる間には新しく出ることはなかった。


 ふとクレスタは”送風術”を行っている巫術師達のことが気になった。


 ”送風術”を行っているのは”送風術”のために専門に連れてきた巫術師ではなく、モンデラーネ公軍所属の巫術師である。

 その巫術師の中で”送風術”が出来る者が術を行って船を進ませている。当然第二陣第三陣のためにかなりの人数の巫術師が”送風術”のためにホフ湖に留まるだろう。


 すると前線に向かう巫術師は常よりは少なくなることになる。


 近代軍で言えば砲兵隊の兵員を輜重隊に転用したような形であり、当然前線における火力は低下することになる。


 ただクレスタは自分がそんなことを懸念しても致し方ないことで、上層部はそれなりの算段があるのだろうと思い込むことにした。



 クレスタらの乗った筏が北岸に到着したのは、この日の夕刻近い時間だった。ただし白夜の季節であるので定時法の夕刻というだけで辺りが暗くなることもなく北岸への上陸はまったく支障がなかった。




注:船舶工兵

 船舶工兵は旧日本陸軍にあった兵科です。旧日本陸軍は上陸作戦のための機材として本来なら海軍が準備すべき揚陸艦や駆潜艇といったモノを装備して船舶工兵に運用させていました。

 果ては大戦末期にはあきつ丸という対潜哨戒機の発艦着艦が可能な空母もどきの輸送艦や、輸送用の潜水艦を(海軍に秘密で)建造しています。


 主要国の陸軍で空母や潜水艦を独自に運用したという例はありません。当然海軍と重複する装備を独自に持つことは、タダでさえ心許ない国力資源の非効率的な使用となります。


 また船舶工兵だけで十七万という兵員を必要としていましたから、陸軍独自に行う内陸の渡河作戦を除いて海軍との協力が上手くいけば史実より数個師団多い兵力が展開できました。


 ただこれは陸軍ばかりを非難することはできず、主力艦同士の決戦のみに特化した日本海軍が上陸作戦や本来海軍が最も責任を持たなければならない海上護衛といったものを軽視していたので陸軍としても背に腹はかえられないところがありました。


 モンデラーネ公軍は内陸領主の軍勢ですからまともな水軍はありません。ですから日本陸軍の方式を採用して、渡河や河川による兵糧や他の物資の輸送を臨時徴発による軍夫に頼るのではなく専門の兵種を設置する方が理にかなっています。


 リファニアは中世段階の世界ですから、日本で戦国大名が土木工事に長けた者で黒鍬衆という一種の工兵を組織していたように、兵科などという大げさなもではなく船頭衆といった集団をつくることになるでしょう。


 黒鍬衆が平時は城塞の補修や河川の改修などに従事していたように、船頭衆を組織すれば平時は河川交通に従事させれば経費を節約できます。


 ただリヴォン川、モサメデス川の水運に支えられたシスネロスでも常設の河川水軍の必要性を感じだしたのはモンデラーネ公軍の侵攻があったためですから、身分を無視して職能集団を戦力として登用するという思考が中世的思考で行動するモンデラーネ公にあるのかは大いに疑問です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ