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千年巫女の代理人  作者: 夕暮パセリ
第二章  北クルト 冷雨に降られる旅路
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閑話 その4  リファニアの馬事情とその他の家畜

 祐司の感覚では、リファニアの馬は小柄である。ほとんどの馬の肩は祐司の胸くらいの高さである。いわゆる、ポニー(小型馬)である。祐司には比較のしようがなかったが、現代人で馬をよく見たことのある人間からみれば、筋骨たくましい馬に見るだろう。


 寒気に強く、粗食に耐え、走っては耐久力のある蒙古馬のような馬である。この馬は、農耕用、運搬用に広く用いられている。

運搬は馬の背に荷物を載せる駄馬としての利用が多い。これは、劣悪なリファニアの道路事情による。

 馬車は天候の安定した時期の平野部や街道でないと、ぬかるんだ道に車輪を取られてしまうため利用は制限される。ちょうど江戸時代以前の日本で馬車が普及しなかったことに似ている。


 リファニアでも、蹄鉄ていてつは存在している。しかし、馬の改良が進んでいないこともあり、野生馬の強健さを残している馬であることから、蹄は頑強である。


 リファニアと現代の地球での馬の利用法に最も大きな違いがあるのは乗馬である。乗馬のためには、ハミを利用した手綱、鞍、鐙といった発明が重要である。

 これらの発明品は、中央アジアあたりの遊牧民の発明とされているが、リファニアのある地球では、それらの地域はツンドラに近い状態で馬は生息していない。


 そのため、「馬に乗る」という乗馬術が一般化しない世界になっている。馬をコントロールするための簡単な手綱はかろうじてあるが、鐙もなく鞍もなく、自然種の馬に毛の生えた程度の交配しかすすんでいない馬に乗るのは高等技術が必要である。


 そして何より決定的な理由は馬が人間の排斥する巫術のエネルギーを嫌うために、人を背中に乗せることを嫌がるためである。


 リファニアでは、乗馬という技はごく一部の物好きが行う見せ物のようなものである。祐司は乗馬を知識としては知っているが、もとより乗馬技術をともなっておらず、教える人間もいないために、リファニアで一般に馬が扱われているように、荷物を馬の背に載せて手綱で馬をひいていくことしかできない。


 馬を戦闘で使用する場合は、古代世界がそうであったように戦車としての使用である。リファニアでは二頭から四頭立ての二輪の戦車が使用される。戦車は戦いの終盤に動揺したり混乱している敵の戦列へトドメの突撃を行うのが最善の使い方とされる。

 それ以外では敵戦車との一騎打ちか、複数の射手による大弓で敵の歩兵周囲を機動しながら打撃を与えるような使用が一般的である。


 ヨーロッパ中世なら、自前で武装して騎馬で戦う者なら貴族に準じる階級としての騎士となるところだが、リファニアでは、貴族に準じる階級は郷士と呼ばれる。

 裕福な郷士は戦車に乗って従軍するが、先駆けをしてでも一騎打ちの戦いを好むために、大貴族が編成する戦車隊のような組織的な戦いはできない。また、郷士自身も組織化さることを好まない。


 戦車に乗る郷士も、それ以外の郷士の多くは、最低数名名から数十名のかちを従えて、馬で武器や行軍用の荷を運ばせる。そして戦い方は一台の戦車にのった指揮官や、それがかなわないでも派手な鎧を着飾ったかちの指揮官による歩兵戦である。


 なおリファニアの戦闘については後に詳細を記述します。


 馬以外の家畜では、ロバ、ラバが運搬用に使役されている。粗食に耐えるロバはリファニアの農村では馬以上に普及している。特に史実世界との乖離も少ないため詳細は省く。


 牛は複数の種類が存在する。史実世界のような多用な品種改良までは行われていないが、茶色の毛並みを持った中型の使役、肉、乳を取る汎用種、この牛は日本で一般的に見られるホルシュタインよりやや小ぶりである。


 それより、更に小ぶりで毛の長い運搬、使役、毛、肉、乳を取るヤクに似た種、この種はリファニアの山間部の運搬手段としては重要な存在である。


特異な種としては、体高が百八十センチ、体重が八百㌔から九百㌔に達する大型種である。

 牛の原種である獰猛さを持ったオーロックスの性質が抜け切れておらず扱いは困難であるが肉用種として飼育されたり、より獰猛な個体は闘牛に使用される。


 羊はもっとも基本的な家畜で、寒冷なリファニアに適したやや大型の品種が多く飼われている。ただ、厳冬を保存飼料で乗り切る必要から、頭数には制限がかかっており秋は四分の一から三分の一ほどの羊が屠ふられる。

 屠ふられた羊は塩漬け、燻製、ハムなどありとあらゆる保存方法を用いられて冬の間の貴重なタンパク源となっている。


 羊と同様、山羊も山間部では貴重な家畜である。ただ、羊は専門の放牧者によって飼育される事が多いが、山羊は山村部の農家で数頭単位で飼われていることが多い。


 豚はリファニア全体から見れば希な家畜で南西部の都市近郊で飼われているにすぎない。しかし、豚はまだ存在するが、リファニアでは鶏が存在しない。

 理由は種々考えれるが、常識的には鶏の原種となった東南アジアのセキショクヤケイ自体が、気候や交易路の関係で広く家畜化されなかったためだろう。


 鶏がいないため採卵用の鳥には、アヒル、ガチョウ、カルガモなどの水鳥とウズラが用いられている。しかし、産卵数ではニワトリに及ばないためにリファニアでは卵は高級食材である。


 反対にリファニア特有の家畜もいる。代表はアメリカアカシカもしくはエルクとかワビチと呼ばれる大型の鹿である。鹿類はトナカイを除いて史実世界では家畜化に成功していない。

 草食で群れをつくるという家畜化に必要な性質はあるものの繁殖期に雄同士の激しい戦いが行われたりしてコントロールが難しい。人間になつくほどの知性?に欠けるからである。


 リファニアでは突然変異か、もともとそのような性質の集団が繁殖したかは不明だが、人間に懐いたリーダーをコントロールすることで群れを統制できる、小振りのアメリカアカシカが存在する。

 アメリカアカシカの家畜種は樹木の葉を食べるために、羊や牛と競合せずに、疎林地帯で放牧される。特に北部の寒冷地ではトナカイと並んで重要な家畜である。


 

 ペット的な動物では犬猫は存在する。むしろ犬は史実世界と同様に重要な家畜でもある。犬種も二十ほどがリファニアだけで存在している。


 ただし、猫は本来高温乾燥地域の動物であるために、厳冬の冬を野良で越すことは難しい。猫は富裕層のペットか、裕福な農家でネズミ避けに飼われてはいるが街中で歩いている姿を見かけることはほとんどない。

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