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千年巫女の代理人  作者: 夕暮パセリ
第一章  旅路の始まり
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尖塔山よりの脱出2 魔法使いの住処

 祐司は立ち上がって、自分のいる場所を見回した。テニスコートほどの広さの空間だった。天然の洞窟のような感じだ。

 天井までは数メートルほどで、でこぼこしているが床は人の手が入っているのか比較的水平になっている。


 何処からともなくほの明るい光が湧いている。人工の照明とは思えない。


 祐司が寝ていた岩のベッドを見た。もとからここにあった岩を刻んで作ったようだ。その岩は、ほのかに光を放っている。祐司は岩に触れた。するとその光は消えた。祐司があわてて手を離すとゆっくりと光がもどってきた。なにかのスイッチがあるのだろうか。


 岩の向こうに祐司のリュックが置いてあった。祐司はそのリュックを取ろうと岩の向こう側に回った。


 祐司は視界に入った何かに驚いてすこし後ずさりした。岩にもたれるようにして人がいた。黒いローブのようなものをまとっており、膝から下の足だけが見えている。手製のような皮のサンダルを履いていた。


 祐司は恐る恐る肩の辺りを軽く叩いた。何の反応もない。しばらく様子を見ていたが、埒が明かないので頭を覆っているフードをめくった。心臓が大きく鼓動を打つ。一目で死んでいるとわかるような顔の相だった。


 祐司は、自分でも度胸の据わった行動だと思いながら右手で、軽く首の辺りを探ってみた。


 脈はない。


 口や鼻の周りに手を持っても何の感触もなかった。まだ体温が残っており死んだばかりかもしれない。


 かなりの老年の男だった。顔の相から見ると日本人ではないようだ。彫りの深い顔に浅黒い感じの肌、頭の毛はほとんど無く指の長さほどの残った毛はすべて白髪である。


 深い皺に窪んだ頬、枯れ木のような感じの手足。死人として割り引いても、かなりの高齢である。


 祐司はともかく、ここから出なければと出口を探した。しかし、周囲は全て岩壁である。祐司は周囲の壁を触ってみた。岩のベッドと同じように祐司が触れた場所はかなりの部分がほのかに放っていた光を失った。


 不意に祐司の手が壁の中に吸い込まれた。祐司はあわてて手を引き抜いた。


今まであった目の前の岩壁はなくなっており、二メートル四方ほどの四角い穴が開いている。薄暗かったので近づくまでわからなかったのだろうか。


 穴を覗き込むと5メートルばかり廊下のようになっており、その向こう側は別の空間があるようだった。祐司は少し躊躇ってからその中に入った。

 廊下の向こうは、もといた空間と同じくらいの広さの空間で、事務机くらいの岩が加工された祭壇のようなものが置かれていた。壁は最初の部屋と同じように光を放っている。


 祭壇と思ったのは岩に多分文字であろうと思われるものが幾つか刻まれており、数枚の紙が丁寧に広げて置かれていたからだ。そして、陶製の小さな皿に灯心をおいて油が燃やされていた。


 祐司は紙を手に取った。それは紙ではなかった。太鼓の皮のようなさわり心地から判断すると羊皮紙というものだろう。

 小さな読めない文字らしきものがびっしりと書き込んである。祐司はその羊皮紙をもとの場所に同じように置いた。


 祭壇と思える岩の横は、人が寝て入るくらいの大きさの四角い穴が、岩を1メートルほどの深さを穿って開いている。

 お墓みたいだなと漠然と考えていると、元の部屋にリュックを残してきたことを思い出した。


 急いで取りに戻る。心なしか先ほどより光が弱くなっている気がする。祐司はリュックを背負うと足下の死体を見やった。


 何故かここに置いておくのはいけない気がした。あるいは死体の爺さんが出たがっているように思えたのだ。こんな感じを受けたのは生まれて初めてだった。


 祐司は死体をだっこするように持ち上げた。180センチ近い祐司とさほど背丈はかわらないのに思いの他に軽かった。手には祭壇にあった羊皮紙のようなものを何枚か握っていることに気がついた。祐司はそれにかまわずに死体を祭壇の部屋に運んで横たえた。


 しばらく死体を見て手を合わせたりしていた祐司は後ろを振り返った途端に目を疑った。今、通ってきたばかりの廊下がない。

 そこには自然の岩肌があるだけだ。祐司はあわてて岩にさわったが今度は岩の中に手が入ることもなかった。


「通過は時間制限有りですか?」祐司は呟いた。偽装したドアのような仕掛けが岩にあるのだろうか?


 今いる祭壇の間(と勝手に名付けた)を見回すと壁の端に縄梯子が見えた。祐司はそこに行って上を見上げると十メートルばかり上にまた別の空間があるようだった。

 縄梯子にそってタガネのような金属の杭が何本か打ち込まれている。ちょうど電信柱に刺さっている作業用の金属棒みたいなものだ。縄梯子が切れた時の用心だろう。


 祐司は縄梯子を引っ張ってみた。すこし、たわむ。縄自体は繊維ではなく荒縄のように干し草を編んだものだった。縄梯子の一番下に足を乗せて体重をかけてみた。

 何か繊維が切れるような音があちこちからする。とても祐司の体重を支えることはできそうにない代物だった。


 横の金属棒の方が安心できるかなと思って手を金属棒にかけてから祐司は思い直した。祐司は山中の岩の窪みで寝ていた。

 起きた時には死体のある見知らぬ場所にいた。どう考えても尋常じゃない。よく考えて行動するべきだと。


 まず、祐司は腕時計の時間を見てみた。時間は午後七時ちょうどだった。ということは、祐司は四時間ほども寝ていたことになる。ちなみに携帯は圏外のままだ。念のため家にかけてみるが通じない。


 寝入ってしまった祐司を谷間から連れ出して、どう考えても不自然に四時間も眠らせておいた。得体のしれない光、ホログラムでも使ったとしか思えない岩壁の通路。悪戯にしては度が過ぎている。祐司をここにつれてきた目的があるはずだ。


 祐司は死体を見直した。死体に近づくと手に持っていた死体の持っている羊皮紙を取り上げた。


 A4より少し小さめの羊皮紙は四枚あった。一枚目と二枚目には祭壇の上にあったような文字?が表にも裏にもびっしり書いてある。直線状の文字が多い。見知らぬ文字だ。暗号かもしれない。


 三枚目には図が描いてある。二人の人物が描かれていた。一人はローブを着用した人物とその人物が四角く囲まれた中に入っている図、四角く囲まれた人物の横には少し小さな四角が描かれており、その中には文字が書いてある。


 祐司はその文字に見覚えがあった。祐司は、祭壇に彫り込んである文字と見比べた。


 同じ文字である。


 どうやら祭壇に横にある穴に入る。もしくは入れよという意味だと解釈した。


 もう一人の人物は長い髪で、ロングスカートのような服装と、優しげな顔から女性のようである。その女性の絵の横にも文字が書かれていた。


 文字と図はインクではなくコンテのようなもので書かれていた。死体の人物は羊皮紙を右手で握っていた。祐司は死体の閉じた左手をこじ開けた。そこにはやはりコンテようなものが握られていた。どうやら死の直前に書いたもののようだ。


 四枚目の羊皮紙も図である。紙面一杯に描かれておりかなり乱雑である。これを描いている途中で亡くなったのかもしれない。

 図は縦に一本の線があり、その線を持った人物が描かれている。その人物は正方形に近い四角いものと持っている。その四角の中には三つ文字が書かれていた。祐司は最初の二枚の羊皮紙を見た。


 最初の三文字は一枚目にも二枚目にも書かれている最初の三文字と同じである。どうやら、線を持った人物はこの羊皮紙と関係があるらしい。正方形に近い四角の下には細長い四角がある。

  

 人物の横には何か描きかけたのか、乱れた台形とその中にエルの小文字を横にしたようなものが描かれていた。ただこれは力のない線であり、別の物を描きたかったが力尽きてしまったのだろう。


 祐司をこのような事態に追い込んだのかもしれない人物の手に羊皮紙をもどした。警察からすれば変死事件かもしれない。むやみに物を動かすことは拙いだろうと思ったからだ。

 そう考えると死体をここに運んでしまったことは最悪の選択だったかもしれないが、正直な気持ちを言ってわかってもらうしかない。


 祐司はしばらく考えてから、例の金属棒を主に手がかりにして、片手で頼りない縄梯子をつかみながら上の空間に登った。


 そこは、今までの空間と同じくらいの広さだが、生活臭があふれる空間だった。端に積んだ藁をシーツのように荒い布で包んだベッドらしきもの。筵のようなものに乗せられた数枚の素焼きの食器。


 最近、火を起こした形跡のある竃。水瓶。食品を並べた木の棚、トランクくらいの衣装入れと思えるバスケットが四つ。岩を加工した机。

 机の上にはさっきの死体が持っていたコンテと羽ペン。羊皮紙と思える巻物。机の横にも数十の巻物が積んである。


 この空間は自然の光が差し込んでいた。5メートルばかり上に開口部があり梯子がかかっていた。梯子は釘は使わずに植物の繊維で組み立てられていた。数十センチばかりの横木をつないだ梯子はかなり使い込まれていたがしっかりしたつくりだった。


 祐司はようやく地上に出られると安堵した。しかし、何かがおかしい。その何かに気がつかずに祐司は梯子を登った。開口部はかなり大きかった。


 さわやかを通り越して冷たい風が祐司の顔に吹き付けた。


「そういうことですか」


 祐司の口から自然に声がもれた。


 吹きすさぶ風の中で見えるのは眼下に流れる雲、祐司が立っている場所より低い数十の峰が祐司の目の前に広がっていた。


 不意に背後で声がした。人間の声ではない。クゥーというような鳥の声だ。祐司が出て来た穴のすぐ横に、石を組んだ二メートル四方くらいの小屋があった。声はその中から聞こえる。木の枝を編んだようなドアがある。


 祐司はそこから中を覗いた。


「白頭鷲?」


 祐司はその大きさにびっくりした。流石に祐司の背丈よりだいぶ低いが頭は祐司の胸くらいの位置にある。

 狭い空間にいるために羽を広げることはできないようだが、空を飛べば3メートル、あるいは4メートルを越すくらいの羽幅になるだろう。


 もちろん、そんな巨大な白頭鷲はいない。白頭鷲はせいぜい全身で1メートル、羽幅は2メートルくらいだ。

 この時は祐司は白頭鷲というものを写真でしか知らず、大きな鷲という知識しかなかった。だから少しびっくりしたが恐れはなかった。いくら大きな鷲でも成人男性を襲うことなど思考の外にあった。


 祐司が後で考えるに、この規格外れの白頭鷲の存在を受け入れてしまった理由は、次々、祐司を襲う不可思議な現象の中で、祐司の感覚が麻痺していたことが最大の要件だろうと思った。


 白頭鷲はクチバシで何かを示した。それからお辞儀するように頭を下げては祐司の方を見た。鳥の体に何かついているのか時々鳥の体がキラキラと光った。


 木の枝で組んだドアにかかっている閂を外して欲しいと言っているとしかとれない。

 ひょっとしてあの死んだ爺さんが飼っていたか、捕まえて閉じ込めていた鳥かもしれない。このままだと飢え死にするだろう。


 祐司は暫く迷った。白頭鷲はまた頭を何回も下げて低い声をあげた。とうとう祐司は閂を外してドアを開けた。


 白頭鷲は甲高い声を上げながらいきなり祐司を威嚇した。祐司は白頭鷲から目を離さずに後向きに穴の近くまで下がった。飛び出してきたら穴の中に飛ぶ込む用意をした。


 白頭鷲も祐司の方を見ながらゆっくり出て来た。その目は祐司を襲うようには見えなかった。むしろ祐司を恐れているかのようだった。


 白頭鷲は祐司の方を向いたままテラスのようになった断崖の縁までいってから祐司に低い声を上げた。


 そして、飛んだ。


 白頭鷲は大きな旋回を繰り返しながらゆっくりと降下しているようだった。

綺麗な鳥だと眺めているうちに祐司は思い当たった。死んだ爺さんが残した最後の図は小屋の中にいた白頭鷲のことだったんだと……。


「爺さん、これでよかったんだよな」


 祐司は呟いた。


 そして最大の疑問点が祐司の頭に浮かんだ。


「なんで昼なんだ?」


 祐司は携帯で時間を確認した。午後8時40分。もうとっくに日が暮れているはずだ。

 しかし、太陽はまだ中天にある。時差にすると数時間では利かないほど離れた場所に祐司が寝ていた4時間ほどで移動できるのだろうか。


 こんな場所に祐司を拉致した組織……、個人でできることとは思えない。そんな組織だから携帯の時間を細工するぐらいは簡単かもしれない。


 祐司が何度見てもここの風景はとても日本とは思えない。白頭鷲もいるし……。スマホの時間を偽装するなんていう細工も必要ないだろう。祐司が考えれば考えるほど謎は深まるばかりだった。


 祐司は今自分のいる所をもう一度見回した。体育館ぐらいの広さのある起伏のある岩のテラスだ。白頭鷲のいた小屋もある。

 岩のテラスの真ん中に垂直と言っていい高さが数メートルほどの突起があった。そのてっぺんが真の山頂のようだが登っても益はないようだ。


 祐司は少し状況を考える。


 スマホに示された時間が正確だとして、日本とは時差が7、8時間ほどもある場所である。

 すなわちヨーロッパかアフリカのどこかである。しかし、白頭鷲がいたのなら北アメリカということになる。


 そして、ここがヨーロッパであろうが、アフリカもしくはアメリカであろうが山岳地帯には間違いない。

 息が苦しくないことから標高は三千メートルを大きく超えることはないだろう。


 もう一度下界を見回すと、急に雲が出て来て視界が悪化しているとはいえ、見える範囲から町や集落はおろか道さえも見えない。


 祐司はもう一度、祭壇の間まで戻ることにした。当面ここにいなくてはいけないとしたら役に立つ物を探そうと考えたのと、警察が急にくることはなさそうなので爺さんの希望のように埋葬した方がよいと思ったからだ。


 祐司は穴の中に入り梯子を下った。外にいたので目が暗さに慣れるまで暫くかかった。目が慣れると、例の電柱にある昇降用のステップみたいな金属棒を頼りに爺さんの死体のある祭壇の間に降りた。


 明らかに先ほどより壁の光が弱くなっている。祐司は急いで爺さんの死体を祭壇の横にある岩を穿った穴に安置した。

 こんな時はどうすればよいのか知るわけがないが、爺さんの手を胸の上に交差するように置いた。そして、少し長めに祐司は手を合わせて頭を垂れた。


 死体が腐敗してきたら臭いがする。それは堪らないだろうなと思って何か死体にかけるものを物色した。壁も床も岩で土がない。部屋の隅の暗がりに獣皮が丸めて置いてあった。


 祐司は獣皮を広げてみた。


 何の動物の皮かはわからないが畳くらいの大きさだった 爺さんが跪いて祈祷か何かに使っていたのだろうか、真ん中がすり切れたように薄くなっている。


祐司は獣皮を死体にかけると、獣皮が覆われるくらいまで小石を集めて置いた。


 壁の光がごく弱くなり、あまりにも暗いのでリュックから非常用にと思って持っていたペンライトを取り出してつけた。

 先ほど見ていた数枚の羊皮紙がライトの光の中にあった。祐司はしばらく考えてから羊皮紙をマンテンパーカーのポケットにしまった。


 再び、ペンライトを口にくわえながら金属棒を頼りに生活臭あふれる上層階にもどる。


 祐司はいつまでここに居なくてはならないかわからないので、役に立ちそうな物の物色を始めた。


 祐司は何か食べ物はないか戸棚を見る。握り拳くらいの大きさの固いパンのようなものが数個おいてある。パンはまるで同じ大きさの石のような重さである。それに皮水筒。水筒には半分ばかり液体が入っていた。匂いをかぐとただの水のようだ。


 次の岩の机に置いてある羊皮紙の巻物を手に取って見た。全部広げても1メートルもないくらいだ。幅も20センチほどだが小さな字がびっしりと書き込まれている。

 文字は読めないが縦書きのようで最後に、それまでの文字とは字体の感じがことなる文字が数個並んでいる。署名だろうと思った。


 祐司はこれは手紙だろうと感じた。祐司は丁寧に巻物を巻き戻してリュックに入れた。可能性は皆無だろうが手紙なら届ける宛が出てこないとも限らないと思ったのだ。


 祐司は部屋の中が少し暗くなっていることに気がついた。上を見上げると出口の穴が小さくなっている。よく見ると少しずつ穴が小さくなっている。

 祐司はあわてて戸棚からパンと水筒をかっさらうと梯子に飛びついた。穴からリュックを先に放り出したが、ようやく祐司がくぐれるくらいの大きさになっていた。


 地表に出て穴を見ると岩が動いているのではなく増殖するように穴を塞いでいっている。今までに見たことのない不思議な現象だった。


 1分も経たないうちに穴は完全に塞がった。


 穴のあった所を撫でてみたり、叩いてみるがどんな仕掛けになっているのか周囲の岩と継ぎ目もなかった。


 何かがぶつかる音がした。ふと見ると白頭鷲がいた小屋の戸が風に吹かれて、開いたり閉まったりしていた。祐司は急に寂寞感に襲われた。


「これからどうする」


 わかっているのはここにいてもジリ貧だということだ。祐司はリュックの中を確認した。


 非常食のゼリー飲料1パック、チョコレート一包み、のど飴4個、あわてて持ち出したずっしり重いパンらしき物2個と1リットルくらい水が入っている皮水筒、タオル3枚、半分くらい水が残っている1リットルのペットボトルと空になった同容積のペットボトル、安物のビニール雨着、上下の下着、大きめのペンライトと予備の電池2本。

 高校生の時に叔父にもらったオペラグラス、地図、これはここでは役に立たない祐司の家の近所のものだ。小さな応急救急セット、黒のボールペン、B5のノート、鉱物用のハンマーとタガネ、採取した十個ほどの水晶。


 身には登山用にしているパーカーと厚手のカジュアルシャツ、スラックス、スマートフォン、腕時計は方位判別機能つきのデジタル時計である。


 祐司は更に役立つ物はないかと白頭鷲のいた大きな鳥かごのような小屋に入った。鳥臭い糞しかない。

 祐司は小屋の外に出てから補強用だろうか小屋を二周するくらいのロープが屋根に近い位置に巻き付けてあることに気がついた。


 取り外してみると指くらいの太さで絹のような質感のロープだった。少しざらついた感じがした。足で踏んで両手で思い切り引っ張ってみる。七十キロを超える体重の祐司でも支えられる程度の強度はありそうなロープだった。


「降りるしかないか」


 祐司はロープを半ば恨めしげに見た。




挿絵(By みてみん)

祐司が山の上から見た風景 周囲は今いる場所よりは低いが、祐司が知る日本の山よりは少し厳しい風貌の山が何処までも波のように見えていた。




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[一言] やや気になったので感想お邪魔します。 まだ2話で主人公の祐二だけの状態ですが、三人称ゆえでしょうか? 『祐二』がやや多いように感じる。 三人称でも登場人物が少ないならカメラがフォーカスする…
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