嵐の後4 親子、ロティルとペトリないし乳母の資質 上
祐司とパーヴォットが、守備隊兵士の護衛を引き連れてダンダネールの屋敷に帰ってくると一寸した騒ぎになった。
ダンダネールの屋敷の玄関をくぐると、ダンダネール以下、奥方のフスラヴァ、副官のバルガや執事といった面々に、まだ、ダンダネールの家に残っていた兵士達までが出迎えたのだ。それは、葬列を向かえるような沈痛な雰囲気だった。
「ユウジ殿、知らせは届いている。怪我はなかったのか」
ダンダネールが代表者のように、前に進み出て言った。
「はい、シスネロスから来ましたドノバ防衛隊のガーク隊長と護衛の兵士が二人おりましたので」
祐司は、襲撃事件を含めてこの日一番緊張して答えた。何しろ、ダンダネールの後ろには、心配そうな顔で祐司とパーヴォットを見つめているダンダネールの子供達の姿があったからだ。
下の子は乳母と手をつないでいた。祐司は今までダンダネールの家で乳母の存在をあまり意識したことはなかった。
しかし、今日、会ったロティルというレティシアとアルカンの元乳母という女性とは、ダンダネールの家の乳母はかなり雰囲気が違っていることに気がついた。
一口で言えば下町の気のいいおばさんと、品のいい素封家の奥さんの雰囲気の違いである。そして、ロティルは下町の気のいいおばさんという印象である。
「万が一、ガーク殿やユウジ殿に怪我でもあればとんだ笑いものになるところだった。無事でいてくれたことに感謝する」
ダンダネールは祐司の手を握って言った。
「まあ、相手が子供でしたから」
祐司は苦笑しながら言った。
「そうは言うが、死にものぐるいになった者は子供とて用心が肝要だ」
副官のバルガが一寸叱責するするような口調で言った。
「明日、サモタン城塞に供述内容を、ガーク隊長と聞きに行くことになっております。捜査に支障のない範囲で動機などを教えて貰えるようです」
祐司はダンダネールが詳しい事情を知っている様子なので、話をできるだけ早く切り上げ少しでも早く寝かせもらおうと思っていた。
「今度の事件の取り調べは、バロォーミー・ヒルデベルトが担当することになった」
ダンダネールは、祐司が考えもしていなかった事を話題にしてきた。
「バロォーミー・ヒルデベルト?」
「バロォーミー・ヒルデベルトはマウロ・ファティウス殿の長子だ。知っての通り、マウロ・ファティウス殿はわたしの軍師を勤めて、ここでは詳しいことは言えぬが、よい働きをしてくれた。
その功に対して、あらためて伯爵殿下に仕官し直さないかと言うのだが、本人は隠居の身だと言って受けない。仕方ないので、息子に役職を当てることにした。バロォーミー・ヒルデベルトは、治安関係の仕事をしていたから適任と言うこともある。
ただ、今回の事件に万が一、背後関係があるとやっかいだ。是非にでも、ユウジ殿を襲った子供らから真実を聞き出さねばならない」
「なんとなくわかってきました。ファティウスさんの息子さんなら、レティシアとアルカンも本当の事を言いやすい」
「そうだ。マウロ・ファティウス殿は、出自は王都だ。その上に気さくな振る舞いをする御仁だ。そのために、地元派、王都派に関係なく顔が広い。
その息子もその伝手で顔が広い。ユウジ殿を襲った剣術師範ハヤル・リストハルトの子もバロォーミー・ヒルデベルトは小さな頃から良く知っている仲だそうだ」
ダンダネールは、そう言ってから疲れている祐司とパーヴォットに配慮してくれて、まだ、話を聞きたがっている様子の一同を解散させた。
翌日、祐司はガークと前日に示し合わせていたように、第六刻(午後二時)にサモタン城塞に出向いた。
ダンダネールは早朝から、サモタン城塞に出向いていた。副官のバルガが二人の兵士と同行すると言い張ったが、余計に目立つからと言う理由で祐司はこれを固辞した。
ガークは昨日の護衛兵といっしょに一足先にサモタン城塞に到着していた。
昨夜と同様に、パーヴォットと護衛兵は控え室に待たされて、祐司とガークは取調官の部屋に案内された。
「今度の事件の取り調べを行っていますバロォーミー・ヒルデベルト。バロォーミー・ヒルデベルト・ハル・ファティウス・ストレーム・ディ・マールです。
本来なら守備隊隊長ガスバ・ウレリアノがお相手をするべきですが、多忙ゆえ、わたしがお話をさせていただきます」
取調官は、ダンダネールが言ったようにファティウスの息子のようだった。顔の造作がファティウスとそっくりで祐司は思わず笑みが漏れた。
「どうしました。何か顔についていますか」
「いいえ、お父様のファティウスさんとそっくりだったものですから」
「え?ファティウス殿の息子さん」
ガークもファティウスを知っているので驚いたように言った。
「親父は引退しているのに有名人ですからね。勇者のユウジ殿や、シスネロスでは名の知られたガーク隊長と昵懇とは。わたしの方が影が薄くて」
取調官のヒルデベルトはちょっと寂しそうに言った。
「バロォーミー・ヒルデベルトさん。取り調べでお忙しいでしょうから、本題に入りましょう」
祐司は慌てて言った。
「わたしが聞きたいのは背後関係です」
ガークもそう言うと自分から椅子に座った。
「まだ、断定はできませんが、背後関係はないでしょう。思い詰めた姉が弟を誘って実行した事件です」
ヒルデベルトも落ち着いた声で話を始めた。
「何故、背後関係がないと」
ガークの質問を皮切りに、ヒルデベルトは四半刻ほど、祐司とガークの説明に答えながら話を始めた。その話の要約は以下のような内容だった。
レティシアとアルカンの姉弟は、エネネリの裁判の後の騒乱時に、親のハヤル・リストハルトが迎えに来てくれると思っていたために家から逃げ出すのが遅れてしまった。
母親は姉のレティシアが七歳の時に亡くなっており、女中が二人いるだけだった。その女中達は、街中が騒ぎで騒然としだすと自分の家が心配だと言って帰ってしまった。
中堅の郷士であれば、女中が数人、また男手もいておかしくはないが、騒乱になったら家に帰ってしまうような女中が、ハヤル・リストハルトの家に二人しかいないのには理由があった。
ハヤル・リストハルトは中堅の郷士待遇を受けてはいたが、バルバストル伯爵の家臣ではなく、剣術師範ということで客分扱いだった。そのために、扶持を貰って生活していた。
元伯爵妃ランディーヌが推薦した王都出身の剣術師範ということで、服は王都から取り寄せた服を着ていて当たり前のような雰囲気があった。また、武具も下手な物を持つわけにはいかなかった。
付き合いも、そこそこしなければならず、その交際費も馬鹿にならなかった。ハヤル・リストハルトの家計はずっと火の車だった。
そのために、ハヤル・リストハルトは子供達が懐いていた乳母のロティルを五年前に解雇しなくてはならなかった。
乳母のロティルは、亭主とともに住み込みでハヤル・リストハルトの家で奉公していたが、子供を出産する前に亭主が通いの女中と出奔してしまった。
ロティルは子供を出産してからは、乳の出がよいことと曲がりなりにも字は読めること、そして、長く郷士の家で奉公していたので、多少は郷士の暮らしぶりやしきたりを知っているという理由から乳母の仕事をするようになった。
ロティルは自分の子といっしょに住めることになり、ハヤル・リストハルトとその奥方にはいたく恩義を感じていた。
乳母を解雇された、ロティルは、時々、僅かな賃金の臨時雇いみたいな形でリストハルトの家に呼び出されて子供達の世話をしていた。
ロティルもレティシアとアルカンを我が子のように想っているのか、賃金には不平を言わず、反対に少しばかり稼いだと言っては菓子などをおいていった。
騒乱の日、レティシアとアルカンが気が付けば地元派の兵士が家のドアを壊して入ってくるような状況だった。
そのため、二人は急いで窓から逃げ出した。行く当てもなく困っていた時に、思いあまって元乳母のロティルに頼ることにした。
突然、訪ねてきたレティシアとアルカンに、ロティルは急いで下層民の着るような服を着させた。そして、二間しかない自室の一つに二人を匿った。
「レティシアとアルカンが、ロティルの家の一室から出なかったのは確かです。ロティルの家の近所で、かなり聞き込みをさせました。ロティルの家があるのは隣近所の者が勝手に、親しい者の家に出入りしたりするような付き合いをする下町です。
余所者が訪ねてくるどころか、近づくだけで誰かに目撃されます。レティシアとアルカンが上手くロティルの家に潜り込めたのは夜中だったからでしょう」
ヒルデベルトは、そう言って話に区切りをつけた。
「誰かが襲撃を教唆した可能性はないわけか」
ガークが腕を組みながら言った。
「教唆したとすると、元乳母のロティルでしょう」
ヒルデベルトの言葉に祐司は顔を傾げた。
「なぜ、ロティルさんが我々への襲撃を教唆するのです」
「もちろん、ロティルは襲撃を教唆する気などなかったでしょう。でも、ロティルはレティシアとアルカンに乞われるままに外の様子を逐一報告していたのです。これは、レティシアも認めています。
それに、ロティルの部屋は三階にあって、わずかですが伯爵舘が見えました。そこから、投石機の攻撃なども見ていたようです」
「ロティルの部屋に閉じこもりながら復讐を考えるようになったというのですな」
ガークがヒルデベルトに半ば質問するように言った。
「はい。最初は父親を討ち取ったユウジ殿を襲うことを計画したようです。そのうちに、投弾で破壊されていく伯爵舘を見て、伯爵に肩入れしたシスネロス勢が憎いと思うようになったようです。
ガーク隊長の前ですが、バナミナをはじめ、マール州ではシスネロスの評判はあまりよろしくない。上層の者はそうでもありませんが、下層民の中にはシスネロスやドノバ州のことを不倶戴天の敵のように罵る輩もいます」
「ロティルさんもその一人だった」
ガークが何かを言う前に祐司がヒルデベルトの聞いた。
「そうです。子供の頃に仲のよかった妹が借金のためにシスネロスの商人に売られたことがあったそうです。バナミナではよく聞く話です」
ヒルデベルトが出来るだけ事務的に言ったことは、祐司とガークにもわかった。
「シスネロスの商人は、年季奉公の仲立ちをしているだけでは?」
ガークが少し苛立ったように言った。
「そうです。シスネロスの皆さんが阿漕なことをしているのではないことは、わたしも理解しています。でも、家族を連れていくのはシスネロスの商人です」
ヒルデベルトは感情を抑えるように言った。
「ともかく、ロティルさんは乳母だったから、そんなシスネロスに対する悪感情をレティシアとアルカンに刷り込んだということですか」
祐司は険悪な雰囲気が深まらないようにあわてて言った。
「伯爵館に対する投石機の攻撃は、伯爵殿下を畏敬しているバナミナの町衆の中でも評判はよくありませんでした。他国の者が、恐ろしげな兵器で伯爵舘を壊していくことが嫌でならなかったようです」
ヒルデベルトは落ち着いた口調で言った。
「それで、レティシアは、わたしを殺そうと考えた」
ガークはつまらなそうに言った。
「そう自供しています。どうも、自分を救国の英雄か何かと間違えているようです」
「まだ、子供なんでしょう」
祐司はレティシアが満年齢で十六歳であることを思い出して言った。
「その通りです。英雄譚を読みあさり、恋に恋をするような年頃です」
ヒルデベルトはやり切れないというような口調で言った。そして、冷静な取調官の口調にもどった。
「すっかり、頭に血ののぼったレティシアは弟のアルカンにも自分の計画を手伝うように言い含めたようです。
さすがに、今は冷静になる部分が出て来て、朝からずっと弟の助命をしています。おかげで、こちらの聞くことにはすらすら答えてくれます」
「どうして、あの路地でわたしたちを待ち構えていたのですか」
祐司は一番大きな疑問を聞いた。
「ロティルは乳母を止めてから通いの女中をしているんです。それで、伯爵舘の落ちる前日、ロティルがいない時に、レティシアはアルカンに、昨日、着ていた服と帽子を被らせて様子を探らしに出したのです。
アルカンは中々、利発な子ですからガーク隊長の宿泊している宿屋を確かめて帰ってきたそうです」
ヒルデベルトの説明に祐司は更に質問を重ねた。
「昨日、襲われた時間はかなり遅かったですが、ロティルはいなかったのですか」
「はい、昨日に限って奉公先で遅くまで仕事があったそうです。ロティルは遅くなることを告げて出たので、ロティルが帰ってくるような時間まで、ガーク隊長が宿泊している宿屋を見張っていたのです。あなたが一人で出てくるのを待っていたそうです」
「昨日、わたしは一人ではなかった」
ガークが呟くように言った。
「夢見る少女のレティシアも、自分達の力では、一人でいて、なおかつ油断をしているような状態でしかガーク隊長を害することはできないことは理解していたようです。
ところが、ガーク隊長とユウジ殿が宿屋から出てくるのを見て計画を変更したのです。ガーク隊長を害することができても、そこで捕まるだろうという覚悟がレティシアにはあったようです。それでは、父親の仇でるユウジ殿を害することは出来ない。けれども、二兎を追うのを諦めてガーク隊長に専念したのです」
「わたしを優先してくれたのか。ありがたいことだ」
ガークは苦笑しながら言った。
「はい、レティシアはユウジ殿ことを親の仇と言っていますが、父親は騒乱の中で斬り合って死んだのですから、気持ちでは、いくらユウジ殿が憎くても頭の中ではいたしかたのないことだとはわかっていたようです。
それならば、マールにあだなして、今度は女子供を投石で大勢殺したガーク隊長の殺害を優先させようとしたのです」
「ガーク隊長は護衛があり一人ではなかったが、わたしがいっしょにいた。千載一遇の機会と思ったのですね」
祐司は得心したように言った。
「そうです。あの子達はユウジ殿の顔は知りませんが、イス人の大男で一願巡礼のオオタカの尾羽を胸につけているということは知っていました。あなたの格好から間違いないと確信したそうです」
「二兎を得るために無理をする気になったんだ」
ガークが少し身を後ろの仰け反らしながら言った。
「それで、あなた達が行く方向を見定めて先回りをして路地に隠れたのです。武器は守り刀の短刀だけですが、レティシアはガーク隊長、弟のアルカンはユウジ殿と決めたようです。どうも、レティシアは、長子であるアルカンに父親の仇を討たせたかったようです」
ヒルデベルトの言う守り刀は、貴族や郷士の子が男女を問わずに持つ。この守り刀を与えられたら成人という印でもある。ただ、守り刀は象徴的な物であるので実戦向きではない。
「それから先は、我々が知っていることということか」
ガークは、今度は身を正しながら言った。
「はい。ロティルは家に帰ってレティシアとアルカンがいないことで、街中を探し回って事件の後に二人に出会ったのです」
「先にロティルが二人を見つければ事件は起きなかったのですね」
祐司は溜息をついてから言った。
「そうです。それに壁の薄い、下町の家のことです。薄々、ロティルの家の誰かが居るということはばれていました。実は密告があって今日にもロティルの家に守備隊の捜査が入る予定だったのです」
「一日違いということか」
ヒルデベルトの説明にガークもレティシアとアルカンの運の無さを憐れむように言った。
「はい。一日違うとレティシアとアルカンは命ばかりは助かったかもしれません」
「レティシアとアルカンの姉弟は死罪ということですか」
祐司は気になっていることを聞いた。
「バナミナの法では下手人が怪我をしている場合は、その回復を待ってから裁判になります。今回も、その規定通りにレテェシアは十七歳、アルカンは十五歳なので通常の裁判が行われます。
今度の事件だけなら要人への襲撃とはいえ殺人未遂だから、終身刑や一生奉公になったかも知れません。
場合によっては平民身分に落とした上で十年程度の刑ですんだでしょう。が、それに加えて伯爵を殺害しようとした剣術師範ハヤル・リストハルトの身内だから死罪以外には考えられなくなりました」
ヒルデベルトは残念そうに言った。そして、一呼吸おいてからしゃべり出した。
「反対に今度の事件を起こさなければ、リストハルトは剣術師範で客分扱いだったから、連座は死刑ではなかった可能性が高いでしょう。
ましてや、法で大人と言っても、未婚の十七歳と十五歳です。やはり、平民身分に落として十年奉公といった可能性もありました」
リファニアでは家臣と客分は明らかに扱いが異なる。家臣は主君に絶対の忠誠を誓っており反逆した場合は、死刑となる反逆罪が適応される。
客分とは、上下関係はあるが利によって主君に雇用されたり保護されている状態である。
祐司はダンダネールの客分となっているが、祐司はダンダネールのために自らの意志で一肌脱いで伯爵舘包囲戦に参加した。
それに対してダンダネールは、祐司に寝泊まりの場所と食事を提供しているに過ぎない。
渡世人でいうところの”一宿一飯”の恩義である。
祐司とダンダネールの関係は、ドノバ候の家臣筆頭であるグリフード男爵から祐司のことをよろしくと託された関係で、屋敷に宿泊させているという対等に近い関係である。それに対して、ハヤル・リストハルトは扶持を貰っており家臣に近い扱いであった。
このような程度の差はあるが、客分は家臣とは明確に区別されている。家臣は二君に仕えることはできないが、客分は何人との間に関係を持ってよい。能力のある郷士は、これを利用して複数の主君をいただく場合もある。
「併せて死刑なのですね。わたしが助命の嘆願してもダメですか」
祐司が恐る恐る聞いた。
「シスネロスからの士官を襲っているからどうにもなりません」
ヒルデベルトは、首を横に振りながら言った。
「襲ったのは、わたしだけだったら。ガーク隊長をわたしと間違えて襲ったとしたら」
祐司はそれでも食い下がった。
「無理です。伯爵殿下が恩赦を与えて伯爵殿下の命を救ったユウジ殿襲撃犯を減刑などしたら、伯爵殿下は自らの顔に泥を塗ることになります。命の恩人を疎かにする領主と言われてしまいます」
ヒルデベルトは、また首を横に振った。
「どうやっても死刑ですか」
「気持ちはわかります。わたしとて助けてやりたい。何しろ赤ん坊の時から知っている二人です。
でも、同年配の者が大勢、連座で処刑されています。法の平等を保たねば、法とは言えません。その例を持ってして死刑以外の刑はないでしょう」
ヒルデベルトの言葉に祐司は、伯爵舘の正門前で斬首された少女と少年のことが、頭に浮かんだ。
「ユウジ殿、どうにならないことを気に病んでもしかたありません。冷静に考えてください。あの子達は、伯爵殿下を殺害しようとした者の子です。それも法では大人です。
そして、自分の考えで、誰からの指示でもなく、ユウジ殿とガーク隊長を未遂に終わったとはいえ暗殺を実行した。助ける要素がありますか」
ヒルデベルトは、祐司を説き伏せるように言った。
「ユウジ殿、ここはせめて死ぬ日まで、あの二人が人並みの扱いを受けられるように頼む方がいいぞ」
ガークの言葉に祐司は引き下がらずを得なかった。
「わかりました。食事や着る物に不自由しないようにしてください。もし、差し入れができるならしてやりたいと思います」
祐司はヒルデベルトに頭を下げた。ヒルデベルトは優しそうな目をして答えた。
「このような重罪人の場合は、差し入れは認められません。でも、わたしの権限で出来る限り快適に過ごせるようにはします」
その時、部屋の外から、若い男の怒鳴り声が聞こえてきた。




