あやかしの一揆、逆巻く火の手11 伯爵館包囲戦 三 シデリア
包囲八日目 夕刻から夜間
「ジャギール・ユウジ殿、今日は女を抱きに行きませんか。たまには息抜きをせんといざという時に遅れを取りますぞ」
そろそろ、シフトの時間が終わりかけるときに、副官のバルガが祐司に、にこやかな調子で声をかけてきた。
「はあ」
シスネロスと比べれば規模は小さいが色街のような場所がバナミナにもあった。殺伐とした男達で溢れる今のバナミナではその色街が大盛況だった。
祐司は背後に気配を感じて振り返った。そこには、パーヴォットがいた。
「ユウジ様、行ってきてください。わたしは小さな頃から男の人がどのような気晴らしをしているのか知っております。どうぞ、わたしのことは気にしないでください。
そのような女は商売でやっております。仕事でございます。仕事でございますから…。男の人を相手にするりっぱな仕事で…ございま……」
パーヴォットは涙を堪えているようだった。パーヴォットの母リャニーメルは酌婦をしながら身を売ってパーヴォットを育てたのだ。
売春をする女や、その商売自体を否定することは、パーヴォットにとって母親を否定することになる。
「申し訳ありません。大丈夫です。本当にユウジ様には行っていただきたいと思っています。男の方は、女によってすっかり気分が晴れて、仕事や戦いに集中できると聞いております。
もし、ユウジ様が戦いで遅れを取りましたら、パーヴォットは悔やんでも悔やみきれません。どうか、この取るに足らないパーヴォットの気持ちを哀れとお思いなら行ってください」
ここまで、パーヴォットに言われると反対に色街に行かないとは言いづらい。
「わかった。行ってくる。土産は何がいい。市場も半分程度だが再開しているようだ」
祐司は覚悟を決めてバルガの誘いに乗ることにした。
「水飴をお願いします。それから、一度、デルベルトの屋敷で食べたガネス通りの店で売っている焼き菓子が食べとう御座います」
「わかった。店が開いていなくてもないかどうか聞いてみる」
「楽しみにダンダネール様の屋敷で待っています」
パーヴォットは少し笑いながら言った。
結局、色街に繰り出すことになったのは、バルガと祐司、他家の者と、親類衆の兵士を除いたダンダネールの直接の配下である七名の兵士だった。
後のダンダネールの直属になる四名の兵士は、先日色街に行ったばかりだったので、パーヴォットといっしょにダンダネールの屋敷に帰った。
シスネロスの色街はルール街と言うが、マールニャ通りという俗称も用いられる。これはマール州から来た女が多かったことに由来する。
マール州の女性は気が強いが情も深いからだと言われている。実際は豊かなドノバ州と貧しいマール州の差で、マール州の女性がドノバ州第一のシスネロスに流れただけである。
バナミナの色街は人口に比例する以上にシスネロスの色街と比べて小規模である。
経済活動が活発で、参勤交代のようにシスネロスを訪れる大領主の家臣、独身の職人や商家の手代が多い自治都市の性に対する需要と比べて、家族で暮らす定住人口が圧倒的に多いバナミナでは性の需要が少ないためである。反対に農村の生産量が低いマール州では春をひさごうとする女性の数は多い。
夕刻、といっても午後九時で太陽はようやく地平線に没しようとしていた。そして、太陽が地平線に没しても二三時間も薄明が続く。
祐司は先にパーヴォットに頼まれた水飴とガネス通りの店の焼き菓子を手に入れて、色街に向かった。
「ここは、ベーリージア横町といって、その手の商売が許可されている場所だ。端から端まで歩いても百歩ほどだ。色々迷わなくてすむ」
バルガは祐司に説明した。そのバルガに、客引きをしていた男の何人かが親しげに声をかけてきた。どうもバルガは、ベーリージア横町の常連のようだった。
バルガは結婚しているというがリファニアでは既婚者であっても色街に行くことは罪悪視はされていない。
もちろん、いい顔をする細君はいない。悋気の強い細君を持った亭主だけでなく、寛容な細君でも度が過ぎると夫婦の諍いの種になる。
「えらく繁盛してますね」
祐司はバナミナで見た中で一番の人通りのある地区だと思った。バルガもその風景を見ながら自分の予想以上の混雑にあきれながら言った。
「今は、臨時に近在の女も大勢働きにきている。でも、一日に何人も客を捌くのは慣れた女でないと難しいらしい」
どの店の前も数人の男達が並んでいた。店に入りきれなかった男で、店の中には更に多くの男が順番を待っていた。
「これじゃ、情のかけらもないな」
リファニアの色街は、江戸時代の吉原のように、女性の手練手管だとわかりながら男性が性欲だけでなしに擬似恋愛を楽しむ風情がある。バルガは行列をしている男達を見て不満げに言った。
「貸し切りとかできないんですか」
祐司の問いかけにバルガは少し思案をしてから答えた。
「ベーリージア横町に隣接した料理屋には、その手の商売を仲介する店があって、ここから女を呼んで飲み食いした後で、女もそこでいただくんだが、今は頼めるかどうか」
「バルガさん、あなたは詳しそうだから交渉してくれますか。余分な料金は全てわたしが出します。ここにいるみんなの分です」
祐司は兵士達に少しいい顔を見せておこうという気持ちがあった。
「気前がいいな。だが、奢るかどうかは値段を聞いてからにしな」
バルガはそう言って、三軒ほど先にある店に入って行った。
「素人同然の女が人数分。二刻貸し切りで銀貨八枚だ。いつもなら、銀貨二枚というところだがどうする」
物価に比べて人件費の安いリファニアである。さらに、性におおらかな風潮から身を売る事への抵抗感が低い。
また、周囲はその手の女性を蔑視していないどころか、ガークのように売れっ子のリューディナを妻にすることが男の甲斐性と思われるリファニアでは、さらにその手の料金は需要と供給の関係から安い。
そういったことを勘案して、現代日本の感覚では、九人の女性を四時間呼んで三十万円ほど出すといったところだろう。その四分の三を出すというのだから、かなりの太っ腹だと思われる金額である。
「さっきいったように差額の銀貨六枚はわたしが出します。それから料理屋の代金も出しましょう」
祐司は差し出がましいと思われるかと思いながらおずおずと言った。
「おいおい、打ち出の小槌でも持っているのか」
バルガが大仰に呆れて見せた。
「伯爵様の恩賞を当てにしてます。わたしは余所者です。そんなわたしは皆さんに守られながら戦に参加しています。こんな形でしかお礼ができません」
祐司は真面目な口調で正直に答えた。
「そう言うなら、奢ってもらうか」
バルガは周囲の兵士にも同意を取ると祐司に聞いた。
「でも、前金だそうだ。持っているのか」
「これで、お願いします。釣りで料理屋の代金は出ますか」
祐司は金貨をバルガに渡した。
「これで充分だ。残りはこっちで集める」
バルガは金貨を持って再度店に入って行った。数分ほどすると満足げな顔でバルガがもどってきた。
「まさか、こっちが言い値を飲むとは思わなかったらしい。急に七人しか用意出来ないて言いやがる。だから、銀貨五枚と銅貨十枚に負けさせた」
そう言いながらバルガは釣りの銀貨六枚と銅貨五十枚、さらにいつもの相場である銀貨二枚を祐司に返した。
「どうするんです。こっちは九人です」
兵士の一人が心配げに聞いた。
「任せておけ。なんとかなる。付いてこい」
一行はバルガを先頭にして、ベーリージア横町に隣接した通りに入った。バルガは馴染みの料理屋なのか、迷いなく一軒の料理屋に入った。
「部屋は空いているか。九人だ」
バルガは料理屋に入るなり、主人らしい男に声をかけた。
「バルガさん、久しぶりだな。空いてるよ。今はションベン出すみたいに済ませるやつばかりでこっちは閑古鳥が鳴いている」
店の一階はそこそこ客が入っていたので、主人の言う閑古鳥とは、副業のことだろうと祐司は思った。
「”琥珀亭”から七人呼んだ。でも二人足りないんだ。銀貨一枚出すよ」
バルガがそう言ったので祐司はあわてて銀貨を一枚出した。
「二人ならなんとかなる。二階で待っててくれ。すぐに料理と酒を持って行く」
二階に上がるとすぐに六人掛けの机が三つ置かれた比較的広い部屋があった。その奥に廊下があり左右に個室があった。
「何もかも出してもらったら悪いから飲み食いの代金はおれ達で出す」
料理はすぐに出た。定食屋に毛が生えたようなものだったが味はそこそこだった。食べる物を食べて酒を飲んでいると、亭主が女達を連れてきた。
女は様々だった。小柄、大柄、派手な感じ、地味な感じ、歳も十代と思える者から三十代半ばくらいと幅広かった。
「バルガさん、どうする」
兵士の一人が聞いた。
「奢ってくれたユウジ殿が先に気に入った姫君を決める。あとはクジで順番を決めて気に入った女を連れて行く」
バルガは自信ありげに言った。
「そんなことしたら、ケツになった子がひねくれてしまうよ」
一番年長の女が気に入らなさそうに言った。
「大丈夫だ。クジの順番はお姉さんに見えないようにして決める。決まったら黙って連れていくから、後でお姉さんたちの名を教えてくれ」
バルガは女達にわからないように女を選ぶ順番を決めた後で、男で円陣を組み上位の男から順番に選んだ希望の女の名を聞いておく。
それから、元の場所に座り直して、端に座っている男から順番に、女の名を言って目当ての女を連れて行く算段だった。
そうすれば、誰が上位で好みの女を選んだかも、誰が下位になったかは女達にはわからない。
「さあ、ユウジ殿、とっとと決めてくれ。後がつかえてるんだ」
バルガが急かすように言った。
「あ、あー。じゃ、一番左端の人がいいです」
祐司はそう言ってからしまったと思った。どうせ遊びなら、派手でいきなり男を誘うような仕草を見せている女を選べばよかったと思った。
祐司が選んだ女は、二十歳そこそこといった感じで、地味な服を着た普通の街娘のような感じの女だった。すこし俯いており、顔は可愛いが沈んだ雰囲気を醸し出していた。
祐司は女が発する光から不安な感情を持っているとわかったので、わけありの女かもしれないと感じた。
「じゃ、ユウジ殿、姫君の手を引いて一番奥の部屋の入ってくれ。この店では一番上等な部屋だぞ」
「じゃ、いきましょうか」
祐司は女の手を引いて奥の部屋に入った。
バルガは一番広い部屋といったが四畳ほどの大きさだった。その手のことだけに特化した部屋のようで小さな明かり取りの窓が天井近くにあった。流石に外が薄暗くなってきたので小さなランプが机の上に置いてありほのかな明かりで部屋を満たしていた。
部屋の家具は藁をつめたマットレスがのった頑丈そうなベットと、ランプののった小さな机、机の上にはランプの他に水差しと二つのカップが置いてあった。
どうやら料理や酒を運んできた給仕が奥の部屋で何かをしてると思ったら、水の用意をしていたようだった。
「座りませんか」
祐司はベットの端に座った。女はおずおずと祐司とは一番離れたベットの端に座った。
「名前は?女の人を名も知らずに抱くのは気が引けます」
祐司は自分でもびっくりするほど優しい口調で言った。
祐司はリファニアに来てからスヴェアと一年半ほど、上から目線を浴びながら同棲生活のような生活をした。
旅に出てからも、可愛いおばさんのグネリ、魔性の女テポニナなどと行為を行った。男として何となく自信ができてきた祐司は、初対面の女性と接しても落ち着いていられるようになっていた。
「シデリアです」
恥ずかしそうに言った女は、先程見たよりは少し若く十代後半という感じだった。
女は髪はほぼ黒髪というブルネットで黒い瞳、少し鷲鼻がかったすらりとした鼻、口紅をさしてはいないが赤く薄い唇、なによりも雪のように白い肌と、化粧をしていないのか、うっすらとしたソバカスが見て取れてヘイロタニア人とイス人の血をほどよく引いている感じがした。
「わたしはユウジです」
「知っています。店の主人に教えて貰いました。ユウジという有名人が来てると。近衛隊司令を討ち取ったユウジという平民がいると噂です」
シデリアはそう言うとちょっと俯いた。
「こんなことを言うのはおかしいですが、嫌ならこのまま時間がくるまで何もしなくてもいいんですよ」
「そういう訳にはいきません。店の主人が言っていたユウジ様ですよね」
「はい、ジャギール・祐司です」
「近衛隊司令を討ち取った男はどのような怖い男かと思っておりました。でも、ユウジ様はお優しい感じがします。あなたが、わたしを選んでくれたときは嬉しかったです」
シデリアは急に顔を上げて祐司の顔を見て言った。
「さあ、時間は限られております。どうぞ」
くぐもったような男女の歓声が聞こえてきた。どうやら、残りのカップルが決まったようだった。
ドアがノックされた。
「どうぞ」
ドアから顔をのぞかせたのはバルガだった。
「いい気分になっているのに悪いな。今からおっぱじめる。色々、声や音がするが気にしないでくれ。それから、その女は少しでいいので花代を渡してやってくれ」
それだけ言うとバルガはドアを閉めた。
「ここは壁が薄いんです。だから、何もしないでいると変に思われます」
シデリアが少し悲しげな口調で言った。
「でも」
「やはり気にいられませんか。でも、あなたがお選びになった女ですよ」
「気に入ったから選びました。あなたは可愛い」
祐司の言葉に嘘はなかった。最初にシデリアを選んだのは女の中で一番可愛いと思ったからだった。
「嘘です。店の主人からは辛気臭いと言われます。わたしもそう思います」
祐司はシデリアが使っている”店の主人”という表現が気になった。春を売る店は慣例的に”何々亭”という。そこの経営者は亭主である。
また、主人が祐司を見知っていたというのもおかしい。祐司はバルガが女を呼んだ”琥珀亭”の亭主とは顔を合わせていないからだ。
「店の主人というと、ひょっとしてシデリアさんは”琥珀亭”の人ではないのですか」
「はい、ここの給仕が本職です。でも、どうしてもお金を稼ぎたくてご主人に頼んで、仕事を回して貰うことにしたんです。
だから、何もしないでいると次の仕事を回してもらえないかもしれません。少なくともお金を持っているようなお客は紹介してもらえなくなります」
「ひょっとして花代がシデリアさんの稼ぎになるんですか」
シデリアはうなずいた。
祐司は店に入ったときに、店の主人に女二人で銀貨一枚といったのが安すぎると感じていた。どうやら、銀貨一枚は二人の女を紹介する手数料と場所代のようだった。
「さあ、お願いします。こんなところで、男の人に何もしないでいられると余計に惨めになります」
シデリアはせがむように言った。
「わかりました」
祐司は静かに言った。
祐司は息を整えた。そしてデリアに軽い口づけをして離れた。
「こんなに優しくしていただいたのは初めてです」
シデリアが言う。
「疲れませんか」
祐司はシデリアに聞いた。
「いいえ、ユウジ様こそ」
シデリアは横で寝ている祐司の方を見て言った。
「シデリアさんの身内の方がご病気にでもなったんですか」
祐司は何気なく寝物語を始めた。健康保険などないリファニアでは医療費は高い。特に評判のよい医者にかかると中程度の暮らし向きの家庭でもたちまち医療費で困窮することすらある。
祐司はリファニアの常識として、家族の医療費を稼ぐために春をひさぐようになる女性が多いことを知っていた。
「いいえ、父も母も体は特に悪くはありません。長年、父は御者、母は通いの女中奉公をしていました。その奉公先の家がなくなったんです」
シデリアの話を聞きながら祐司は自分も大過なく過ごし、そこそこ仕事も憶えてきた矢先に勤めていた会社が突然に倒産した経験を思い出した。
「王都派の家ですか」
祐司の問にシデリアは意外な名を出してきた。
「はい。デルベルト様の家です。ああ、すみませんいつも店の主人に怒られるんです。叛逆者だから様はつけるなって。デルベルトの家です」
「そうですか」
バナミナは小さな街である。祐司が討ち取ったデルベルトに関係のある人間に出会ってもおかしくはない。それにしても、祐司は皮肉めいたものを感じた。
「それでも、まだ数日前のことでしょう」
「はい。デルベルト様…。デルベルトの家はかなりお金に困っていたようでこの一年ほとんど父と母は給金をもらえていなかったんです。
だから、わたしもデルベルトの家で下働きをしていたのですが、おいとまをいただいて給仕の仕事を始めました。それでは微々たる稼ぎにしかなりませんので借金をしてなんとかしのいでいました」
祐司が何も言わないのでシデリアは話を続けた。
「金貸しが返せる当てがなくなったのならわたしを三年の女郎奉公に出せと言ったんです。でも、女郎奉公に出されたら誰に買われるかわかりません。
シスネロスくらいならまだしも南クルトなんかに売られたら、毎日、十人も二十人も相手にして死ぬまで兵隊の慰み者だと聞いています。それで、女郎奉公に出るくらいなら自分で稼ごうと思ったんです」
「お父さんやお母さんには別の働き口はなかったんですか」
祐司は言ってから言わずもがなだと後悔した。
「今は働き口どころではありません。それに、王都派の家で働いていた使用人は地元派の家では中々雇ってもらえません。特にデルベルトの家の者だったというだけで、町家でも門前払いです」
「でも、時が過ぎればまた情勢は変わります」
祐司は慰めにもならないかと思ったが、そう言わずにはいられなかった。
「デルベルト様は…。デルベルトはそんなに言われるほど悪人ではありません。母は通いの女中でしたから小さい頃はいっしょにデルベルト様の家に行っていました。
デルベルト様はわたしを見かけるといつも抱いて菓子などくれました。本当はわたしどものような者にでもお優しい方なのです」
シデリアの声は少し泣き声が混じっていた。
「給金が貰えなくなっても、奥方のオレーシャ様はせめて、毎日の食事にとご自分達の分を減らして食材を分けてくださいました。
そのオレーシャ様もあの裁判の前の日に出て行かれました。何故、デルベルト様に力を貸さずに出て行かれたのかわたしにはわかりません」
どうもシデリアは、オレーシャが出って行った原因である、デルベルトがオレーシャの小間使いを祐司の夜伽にしよとしたことは知らないらしかった。
流石に自分もからんだ話であるので、祐司はそのことをシデリアに説明する気にはならなかった。
祐司は何も答えなかった。隣の部屋のドアが開いて誰かが出ていく音がした。祐司はそろそろ潮時だと思って花代を出して引き上げることにした。
ここで祐司は相場をバルガに聞いておくのを忘れたことに気が付いた。
祐司はシスネロスで、売れっ子だったリューディナと遊んだ時に、一晩、小銀貨三枚だったことを思い出した。銀貨にすれば四分の三枚になる。
祐司は少し思案して銀貨一枚を渡した。シデリアは祐司の手を握って拝むように言った。
「どうかお願いです。この街にいる間にもう一度きてください。今日、たくさんいただいたので花代なんかいりませんから」
祐司は黙ったまま頷いた。




