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千年巫女の代理人  作者: 夕暮パセリ
第二十二章 シャクナゲ舞う南部紀行
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サヴォンリンナ神殿への道行き13 船内探索 九 ブルニネル号の遭難① -二人の貴人-

 この話から数話ほどリファニアでは有名な”ブルニネル号の遭難”という物語になります。祐司とパーヴォットの冒険譚をテンポ良く読みたい方はしばらくお待ち下さい。

 また本編では触れる機会の少ない王領キレナイト(北アメリカ方東部)、同じく王領であるベルタニア(現ニューファンドランド)の様子や移民達についての記述があります。

「では、更に先に行きます。いよいよ船尾部分です」


 ルドヴィグ航海士見習は船倉の船尾側の扉を開けた。そこは何も置いていない小部屋で中央に上下への階段があった。しいていえば階段室である。


「移民区画の出入りはここと船首の二箇所ですか?」


 祐司が訊いた。


 二百人以上、満杯にすれば四百人が閉じ込められる移民区画で外に出るためにあるのは幅が五ピス(約1.5メートル)ほどの階段が二箇所である。 


 一層上の祐司とパーヴォットがいる乗船区画のある第二甲板からは船尾と船体中央の二箇所、いざとなれば船首の階段も利用出来て船員まで含めて最大で五十人ほどしかいない。


 海難事故が起こった場合は第三甲板の移民は咄嗟に逃げ出すことが困難で、狭い階段がさらに被害を大きくする恐れさえある。


「はい、二箇所です」


 ルドヴィグ航海士見習が何を訊くのかという感じで言った。


 祐司は「そうですか」とだけ言って、矢張り人命や安全についてのリファニア人の感覚は中世段階なのだと思った。


「万が一、船を捨てなければならないほどの事態になれば、ボートで全員が脱出出来るのでしょうか」


 祐司の気持ちを察したのかパーヴォットが訊いた。訊きにくいことでもパーヴォットが男性に訊くなら空気は悪くならない。


「ボートは三隻積んでいます。最上甲板に置いてある分です。どれも十数人ほどが乗れます。 


 乗船区画の乗客は船員も同乗して優先して乗って貰います。キレナイト航路なら西の海の真ん中で遭難しても三・四日ほど凌げれば陸地に到達出来ます。

 キレナイト航路の船は基本的には沿岸近くを航行しますから他の場所だと一日ほどで陸地に到達出来るでしょう。


 現在も目的地までは陸から離れても十リーグ(約18キロ)ほどを航行しますから、余程時化ていなければ数刻もかからずに陸まで行けます」


 ルドヴィグ航海士見習は乗船区画に乗っている祐司とパーヴォットを安心させる為に言ったようだ。


「移民が二百人ほども乗っていればボートは無理ですね」


「その時は筏を利用します。筏用の材木が積んであって筏を組み立てます。膝を折って乗って貰えば全員が筏で逃げることが出来ます。筏はボートで引っ張ります」


 パーヴォットは少し間をおいてわざと気が付いたような口調で言った。


 緊急時に筏など組み立っている暇があるだろうか、また荒天時に筏を海面に降ろしてそこに乗り込むことことなど出来ないように祐司は思ったが、パーヴォットも含めてさらに質問することはなかった。



挿絵(By みてみん)




「ブルニネル号の海難事故のような事はそうそうは起きませんよ。遭難して逃げ出す算段に頭や資材を使うより如何に遭難しないかを考えた方がいいです」


 祐司はルドヴィグ航海士見習の言うように海難を避ける算段をすべきだという意見には同調するがその上で万が一に関する備えをすることで安心感を高めるべきだろうということが喉まで出かかった。


 しかし安全ということに関する認識が現代日本と中世世界リファニアでは文化や経済的背景から根本的に差があると祐司は思い直した。


 さてルドヴィグ航海士見習の言ったブルニネルの海難事故とは二十年ほど前に起こった海難事故で、リファニアでは現在でも人口に膾炙かいしゃする有名な海難事故である。


 以下はブルニネル号の海難事故の背景と顛末である。この海難事故に関しては王家が事故経過と原因を明らかにする為に査問官を任命しており詳しい顛末書という名の調査報告書が残っている。



 中世段階の船としてはリファニア船は時代を超えて進化しているが、それでも現代日本と比べて比率でいえば数十倍ほどの海難事故が発生する。

 毎年、数十隻を超える商船や漁船が海難事故に遭い、通信手段がないのでどのような状況になったのかも分からずに行方不明となることも珍しい事ではない。


 その中でブルニネル号の海難事故が有名なのは死者の多さと過酷さが伝わっているのに加えて、海難事故に遭遇してはならない二人の貴人が犠牲になったからだ。


 ブルニネル号は現在では廃業してしまったがホルメニア南部の州であるユーゴレノク州ホトスに本拠地を持つカジェタ船舶商会の所属船であった。

 現在ではリファニア商船の大型化が進んでいるので、祐司とパーヴォットが乗船しているソフィアネッテ号も大型船ではあるが、最大級の商船ではない。


 ブルニネル号はソフィアネッテ号とほぼ同じ大きさで、当時としては最大級の商船でなおかつ船歴二十六年ということもあり、安全な船だと認識されていた。


 リファニア船はすべて木造であるが、天然の素材を相手にするので得られた資材により設計を変更するなどということは平気で行われてる。

 また構造計算なども出来ず実際に運行してみなければ、その船の性能や耐久性を知ることは出来ない。


 その為に新造船よりもすでに不具合を手入れをしながら長く運行されている船の方が安全だとされている。

 出来のいい船は補修しながら百年近く使用されて、”テセウスの船”のような状態になっている。


 その為に船歴二十六年は現代日本では老朽船となるが、リファニアでは脂の乗った船という扱いである。


 ブルニネル号はテネサネル王二十二年の二月二十二日に王都を船員四十一名、乗船区画の乗客二十五名、移民三百八十二名を乗せてキレナイトに向かい王都を出港した。


 ソフィアネッテ号が条件のよくない予備移民区画まで利用して乗せられる移民が三百人程度であるからかなり詰め込んだ人数のように思えるが、これはソフィアネッテ号が”移民を乗せる時がある船”であるのに比べてブルニネル号が”移民船に特化した船”であった為の差である。


 ソフィアネッテ号は中層ともいうべき第三甲板の三分の二ほどが通常の移民区画であるが、ブルニネル号は第三甲板の大部分と、その下の本来は船倉部分にも移民区画があった。


 これにより船底付近に荷を積まずに移民を乗せる場合はブルニネル号の重心が上がりソフィアネッテ号が貨客船でブルニネル号は客船といういうほどの乗り心地の差をつけていた。


 重心の上昇は乗り心地をよくはするが、船が傾いた時の復元性は悪化するというトレードオフの関係にある。

 ただ当時のブルニネル号の評判は乗り心地のいい船というもので、ブルニネル号を割り当てられた移民は喜んだという。


 このブルニネル号の遭難を有名したのが乗船区画の乗客の中にいた二人の貴人とその家族である。


 一人は故第六十八代リファニア王カデサルの末子オバデバ・セルエリク親任公爵で、当時四十四歳だった。


 王の五世孫までが王族とされるが、王の兄弟、王太子の兄弟は親任公爵という称号を与えられる。これは貴族位ではなく、公爵に対する礼を取る人物ということを表している。


 リファニアの貴族位は公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、士爵の別があるが、貴族見習というべき士爵は別として、伯爵から準男爵までは初代が叙任された時の封土の規模で名付けられただけで上下の差はないとされる。


 侯爵は一州の太守で貴族の叙任をリファニア王に取り次ぐ権限があることから、伯爵以下とは別格の貴族位である。


 さらに公爵はリファニアの”言葉”ではコニーヴァストとなり、これは”コニークに次ぐ者”という意味合いがあり、貴族の長という扱いである。


 現在、リファニアには約五百家の貴族家があるが、公爵は僅か十家だけで希少な存在である。

 その十家のうち四家は封土が狭小な王妃を出せる準王族扱いの王都貴族である四代公爵家である。


さらにアシアート公爵はリファニアの畿内であるホルメニアの南隣の州で、王として研鑽をする為に王太子が収める州ということから王太子が任命される爵位で、家として実態があるわけではない。


 ネルトンス公爵家とフォレン公爵家は歴史の中で封土を次第に失って、公爵という看板だけは立派な小規模な領主でしかない。


 名実ともに公爵家として存在するのはモンデラーネ公爵、ナデルフェト公爵、アヴァンナタ公爵だけである。

(第二十一章 極北紀行 閑話45 リファニアの貴族階位 -公侯伯子男- 参照)


 真の公爵家が三家しかないことから公爵の希少性はますます高まっており、それに匹敵する格式がある親任公爵となると如何に丁重に扱われなけらばならない存在かがわかる。なお女性の場合は親任女公爵となり矢張り同様の扱いになる。


 是が世代が下がるにつれて親任伯爵、親任子爵、親任男爵、親任準男爵と称号が変わり、最終的に王族から離れていく。

*話末注あり


 王から代が離れるに従って数人の使用人しかいない質素な生活をする有象無象の王族の一人という扱いで、貴族の資質を持った相手との結婚が難しくなってくる。

 貴族の資質がないと王族としては認められないので、親任準男爵まで行くのは家系的には数家に一つもない。


 貴族の資質がなく王族の資格がなくなると、王家の家臣として郷士資格が与えられる。この為に王家直参の家臣のうち十家に一つほどは王族を出自としている。


 ただ王族を祖としていても特権があったり一目置かれるワケでもない。また王族を祖としながら家臣に甘んじているのは名誉なことではないので、それに触れないというのがリファニア人の感覚である。


 郷士階級の家臣ではなく子々孫々貴族の位置に留まりたければ、まだかすかながら王位継承の可能性があることから多少でも政治力があり、出自となった王のことを知る人が存命な親任公爵や親任侯爵のうちに手を打つ必要がある。


 王族の中でも親任公爵という名誉ある称号を持つオバデバ・セルエリク親任公爵も当時のリファニア王は自分の甥の子に当たるテネサネル王であった。

 オバデバ・セルエリク親任公爵が王位継承権を有するといっても、既に傍系の立場で継承順位も十数位程度で王になることはまず考えられなかった。


 ただ王位継承の可能性が低いとしても王位継承権を有する王族はその身の処し方が難しい。王位継承権とは実は諸刃の剣なのだ。


 時の有力者の甘言に乗せられて、王位を狙うなどいう行動に出たために政治的生命どころか真の命まで密かに失った者も両手ではきかないかも知れない。



挿絵(By みてみん)





 親任公爵という扱いをされるオバデバ・セルエリク親任公爵はその轍を踏まずに、子々孫々それなりの敬意を払われる家を立てたかった。

 具体的には正式な爵位を賜り貴族家として存続していくことである。ただ貴族に叙任されるには領地を有していなければならない。


 王族が貴族になりたいのは領地を持っているからであり前提条件に無理がある。


 そうなれば廃絶された貴族家を継ぐという方法もあるが、小規模な領地や小作農を抱える地主でも貴族の資質と大方を納得させられる功績があれば叙任される士爵以外の貴族家をリファニア王室は増加させる気はなく、貴族家が廃絶になって減ってもそれを王族の一員に継がせることはない。


 そこでオバデバ・セルエリク親任公爵は、王都から離れることで王位に関心がないことを示す意味合いもあり王領キレナイトの神殿奉行の役職を志願した。

 神殿奉行は格式の上では勘定奉行や王立軍総指揮官と並ぶので、それなりに役職手当が出る。


 殿様気分のまま世代毎にじり貧になってやがて消えていくような者が多い王族の中で、オバデバ・セルエリク親任公爵は自分で運命を切り開いていこうという意欲があった。

 オバデバ・セルエリク親任公爵は王族から離脱してせめて最低限の貴族である士爵に叙任して貰い一家を立てることを望んでいた。


 士爵なら統治する領地がなくとも大規模な地主であれば可能性があった。そこで神殿奉行の役職手当を得ることで農地を購入したり開墾費用を捻出しようと考えたのだ。

 

神殿奉行は勘定奉行と双璧をなして格式が高いが形式的な役職で高位聖職者との儀礼的な付き合いが仕事である。

 リファニア本土の神殿奉行なら王都に常駐しているが、王領キレナイトの神殿奉行となると政治の中心地から数年は離れなければならない。


 しかし神殿奉行はそれなりの家格がある人物である必要があり、適任者を選ぶのは難事である。

 それを逆手に取り伝手を頼りに猟官運動までしてオバデバ・セルエリク親任公爵は王領キレナイトの神殿奉行の役職を得た。


 これは貴族に叙任されるには領地がなくとも積極的に役職を歴任することで、功績による叙任条件を多少とでも整えたいという目論見が第一にあった。


 さらにオバデバ・セルエリク親任公爵は二人の娘をキレナイトに同伴させた。これはキレナイト貴族に妃の候補として見合いをさせる為である。


 リファニア本土の貴族とキレナイト貴族は同格とされているが、キレナイト貴族は矢張り外地の貴族という負い目がある。

 そこで王族の娘を妃とすることで、他のキレナイト貴族に優位性を示し本土の貴族にも侮られないという思いがある。


 そしてオバデバ・セルエリク親任公爵は一縷の望みであるが、娘の婚家が結納として狭小でいいので領地の一部を自分に譲ってくれることを期待していた。

 領地を持てば貴族の正規メンバーともいえる準男爵以上の叙任が可能で、キレナイトの領地を娘の婚家に代官として管理して貰い元王族の貴族として王都で暮らすことも出来るからだ。



 ブルニネル号に家族と一緒に乗船したもう一人の貴人は故第六十九代リファニア王ロセニアルの孫にあたるバニュートリー・シプリアンド神官で当時五十二歳だった。

 バニュートリー・シプリアンド神官は神官職に就いたので王族からは離脱しているが、それでもバニュートリー・シプリアンド神官は貴族の資質が発現した貴族身分で王族の出であると認識されている。


 バニュートリー・シプリアンド神官は王族離脱前は親任侯爵であり、オバデバ・セルエリク親任公爵より下位になるが周囲の扱いはオバデバ・セルエリク親任公爵と差がなかった。


 これはバニュートリー・シプリアンド神官の祖がイース戦争を戦い抜いたロセニアル王が祖であるからだ。ロセニアル王はこの二百年程の間のリファニア王では最も武名をあげ、また人気のある王である。

(千年巫女の代理人外伝 史実イース戦争 参照)


 そのロセニアル王の庶子であるバニュートリー・シプリアンド神官は父の名を背負って王家の中でも一目置かれていたが、オバデバ・セルエリク親任公爵の兄であるロセニアル王の父であるテレサネル王は目立った業績はなく、鳴かず飛ばずの王だったという評価である。


 ロセニアル王の威名がありながらバニュートリー・シプリアンド神官はそれを利用することなく聖職者の道に進んだのは、当時の王族達の評価では慧眼であり自分達も身の振り方を自身で切り開こうという機運が広がった。


 その機運に乗った一人がオバデバ・セルエリク親任公爵であり、オバデバ・セルエリク親任公爵とバニュートリー・シプリアンド神官は個人的にも親交があった。


 バニュートリー・シプリアンド神官は王領キレナイトの首座神殿であるヴァスラム近郊にあるキレナイト・コニクル神殿の神官長に任じられた。

 これはバニュートリー・シプリアンド神官が王領キレナイトにおいて”宗教組織”の長となるということでもある。


 能力と信仰心に明らかな差がなければ高位聖職者は貴族身分の者が任じられることがままある。

 これは信仰に上下の差は無く政治とは一線を画すことを教義としている”宗教組織”が現実主義的なしたたかさを持っているからだ。


 神官長が王族や高位身分と繋がりがあれば、周辺の貴族家に対して押しが利く。


 こうした理由から王族の中には聖職者を目指す者も多い。パーヴォットが神学校に聴講生として通っていた時にも実は三人の王族出身の神学生が在籍していた。

 しかし彼等は万が一のことをおもんばかって王族であると広言などはせず、王都から来た貴族身分の者と名乗っていたためにパーヴォットは誰が王族かを知ることはなかった。



 さて二人の貴人と家族が移民船でキレナイトに渡ろうとしたのは、”民草に寄り添う王家”という王家のプロパガンダを示す意味合いがあった。

 そしてリファニアを出て行くことに不安を感じている移民に王族が一緒の船でキレナイトに向かっているとなると大きな安心感を持つことが出来る。

 

 王家から働きかけはあったかどうかは不明だが、ブルニネル号の航海前にオバデバ・セルエリク親任公爵とバニュートリー・シプリアンド神官は移民宿舎を訪れて激励会のようなものをしたり、航海中も移民区画を訪れたりまた代表者を招いてキレナイト到着後の要望をキレナイト総督に伝える約束などをしている。


 またオバデバ・セルエリク親任公爵は男には火酒、女子供には菓子を差し入れた。


 すると流民としてリファニアを放浪していた時は、いわゆる”偉い人々”から邪険にされた経験しかない移民は王様の血筋で侯爵などという偉い人が親しげに話しかけてくれて手ずから酒や菓子を下さったということから、感動して何人もがオバデバ・セルエリク親任公爵に跪いて「どうか貴方様の領民にして下さい」と懇願した。


 これには寸土の領地もないオバデバ・セルエリク親任公爵は閉口して苦笑いするしかなかった。


 オバデバ・セルエリク親任公爵は「今日のことや移民船の中のことは秘密ではないので何処で言ってもよい」と告げて移民宿舎を去った。

  


 これで問題なくキレナイトに到着すれば全員が心やすい気持ちで新天地に臨めただろう。



注:王族の人数と待遇

 リファニア王国の王族の総数は当然ながら時代により変化しますが、この二百年で見るとリファニア王は平均すると成人した男子嫡子2.1人、女子嫡子1.8人、男子庶子3.1人、女子庶子3.2人を得ています。


 ただ庶子は貴族の資質がある者が庶子として公式に認定されますから、実際の庶子の人数はこれより多いと思われます。


 基本的に男子嫡子のうち一人は王太子となり、やがてリファニア王として即位しますので、王族は男子嫡子1.1人、女子嫡子1.8人、男子庶子3.1人、女子庶子3.2人が一代で生じる王族ということになります。


 一番長く王族として血筋を伝える男子嫡子は同時代に十九家いる計算で、他の王族を含めると三十家から四十家となります。


 ただ途中で子孫が絶えたり、自ら王族を離脱する者もいますから、同時時代の王位継承権を持った王族家は二十数家程度です。


 家の数だけで見ると王位継承者の人数としては多すぎず少なすぎずという人数でしょう。

 

ただこれに家族が加わりますので王の血を引く王族待遇として扱われる人数は百人程度となります。



 以下は王の子孫が王族として認められる世代についての説明です。


王の男子嫡子系統(王太子以外で最年長の者、独自の家名がつく)

親任公爵(子)→親任侯爵(孫)→親任伯爵(曾孫)→親任子爵(玄孫)→親任男爵(来孫)→王族離脱(昆孫)

*長子子孫が死亡した場合は次男以下に継承


男子がいない場合の女子長嫡子

親任女公爵(子)→長嫡子は父が王族の時は親任侯爵(孫)・長嫡子の父が非王族の時は王族離脱(孫)


王の男子嫡子で王太子、独自の家名がついた者以外

親任子爵(子)→親任男爵(孫)→王族離脱(曾孫)

*功績があったと認められると親任伯爵より開始で王族離脱は玄孫


王の女子嫡子

親任女男爵(子)→男子嫡子は父が王族の時は父に準じた親任貴族位(孫)・女子嫡子は王族離脱(孫)


王の男女庶子

親任男爵(子)→王族離脱(孫)

*功績があったと認められると親任子爵より開始で王族離脱は曾孫・ 女子はその子が王族と婚姻しなかった場合はその子は王族離脱


 王族の認定が女性には厳しいように思えますが、王の娘、或いは姪でも是非に降嫁していただき我が家の妃として迎えたいという貴族家は幾らでもあります。

 王族の女性を得た貴族家は最大限の待遇を行い、夫が死去した後や子供が成人した女性は王都に戻り婚家の費用で優雅に暮らすことも普通です。


 ですからたまに聖職者を目指すので王族を離脱するという女性はいても、女系の王族家が出来る事はまずあり得ません。


 親任貴族位は当主だけでその親、子、兄弟は王族扱いという形です。


 

 次に王族はどの程度の生活をしているのかを見て行きます。最初に王族に出される手当を見ます。


親任公爵-王宮内の居住区画と十室以上の屋敷を貸与される 年金金貨百枚 王家から出向した男性家臣4名、侍女2名、女官3名 男子使用人5名(うち1名は御者)、女子使用人5名


親任女公爵

王宮内の居住区画、婚姻後は十室以上の屋敷を化粧料として賜る 年金金貨八十枚(結婚後は減額) 王家から出向した男性家臣3名、侍女2名、女官3名 男子使用人5名(うち1名は御者)、女子使用人5名


親任侯爵

十室以上の屋敷を貸与される 年金金貨七十枚 王家から出向した男性家臣2名、侍女1名、女官1名 男子使用人3名(うち1名は御者)、女子使用人5名


親任伯爵

年金金貨五十枚 王家から出向した男性家臣1名、侍女1名、女官1名 男子使用人2名(うち1名は御者)、女子使用人5名


親任子爵

年金金貨四十枚 王家から出向した男性家臣1名、侍女1名 男子使用人2名(うち1名は御者)、女子使用人3名

*親任子爵から始まる場合は七室以上の屋敷を貸与される。


親任男爵

年金金貨三十枚 王家から出向した男性家臣1名 男子使用人2名(うち1名は御者)、女子使用人3名

*親任男爵から始まる場合は七室以上の屋敷を貸与される。


一代目の王族離脱者

一時金金貨五十枚、年金金貨十枚

*希望すれば郷士身分付与で王家直参として仕官がかなう。


 一番多くの年金を支給される親任公爵が年金貨百枚ですが、これは現代日本の物価換算では二千万円程度になります。

 王の兄弟でこの程度かと思えますが、住居費と人件費は王家から出費されるので丸々の小遣いと言えます。


 また王の兄弟、子、孫あたりまでは余程の無能でない限りは相応な官職に就けますので、年に金貨数十枚程度はさらに収入があります。

 貴族階級では交際費はそれなりに必要ですが、王族の場合は何かを贈られたら金品でのお返しを考えずに「大義であった」の礼の一言でお返しがすむという利点もあります。


 ただリファニア世界では大国の一つであるリファニア王国の王族は国の規模から見て質素な生活だといえます。


 王族の家にいる家臣や使用人は個々の王族が採用するのではなく全て宮廷奉行が採用した者が配分されて給与は宮廷費から出ます。


 男性家臣は家令や執事の仕事をしています。ただ任務の中で重要なのは王位継承権のある王族がよからぬ考えを持ったり、やよからぬ人物に接触しないかを見張ることです。

 この男性家臣は仕えている王族と必要以上に深い仲にならないように数年で頻繁に入れ替わります。


 ただ他の女官、侍女、その他の使用人はその王族が都合が悪いので交代させて欲しいと訴えない限りはかなり長期で務めることが多いようです。



挿絵(By みてみん)

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