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ドラゴンライダー立身伝~銀翼の死神~  作者: 水無瀬 凜治
第1章 異世界召喚編
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ドラゴンキャッスルへ

翌朝、二人は出発した。


書記官と職員数名が見送りである。


「お偉いさん」じゃあるまいし、見送りなんてと思ったが

竜使い候補は生還できないかもしれないので、このような見送りだという。


竜二は複雑な思いを馳せながら良くも悪くもプチ贅沢な見送りだなと心の中でつぶやいた。


尤も神殿の高台から文字通り二人の「お偉いさん」が別に見送っていた。

神官長と兵士長である。


「まったく従来の規定を無視するとは、あのお方も何を考えているのか?」


「・・・そうですね。」


「しかも、防具も買わないとは殺してくれと言っているようなもんだ。次に会うときはボロボロの状態か、或いはすでに竜の胃の中で会うことすらできんかもしれんな。」


「・・・・・」


兵士長は、契約できるかはわからないが必ず二人は帰還するだろうと思っていた。

ジキスムントから竜二のことはある程度聞いている。

神官長はジキスムントの事に気づかないようだが、数多の奴隷の中からジキスムントを見つけたのだ。

異世界からの召喚者ならジキスムントの素性を知るはずもない。目の鋭い中年の男にしか見えないはずだ。あの青年の観察眼は優れているのか?

ジキスムント殿はあの青年のどこを評価しているのか?


思いを募らせる兵士長は二人が見えなくなるまでその場を動こうとはしなかった。








二人が出発して数日後、


いつも通り、ジキスムントのおかげで順調に進んでる。

最初の頃よりも、さらに竜騎士を見かけるようになった。


ここまで来ると本当にできるのかな?とビクビクしてきた。

体の震えがはじまりだす。

こんな無防備で大丈夫なのか?

キャッスル内の探索で武器や防具を揃えようと思ったら、

ジキスムントから「不要です」と言われた。


神殿内に売られている武器防具は対竜用に特化しているため、うってつけではないか?

と思ったが、


「私はキャッスル内に入ったことがあります。大丈夫です。」


と一蹴された。ますます、ジキスムントがわからなくなった。

頼りになるからいいのだけども・・・

実際、ほかにも用心のため追加で戦闘奴隷を買おうか提案したら

これも「そこまでお金を注ぎ込まなくていいと思います。」

と一蹴された。


勧められたのは、護身用の小剣と撃退用の煙玉セットと防火種を数個だけである。

小剣とは短剣と長剣の中間、日本でいうところの小太刀といったところか?


「長い付き合いになると思いますので小剣にはお金をかけた方が良いと思います。」


と、小剣には投資するように勧めてきたのでジキスムント立会いの下、品定めに時間をかけた。

結果として一番高いものになった。非力な自分でも使いこなせるようなものを探しているうちに一番軽量化されている小剣を選んだ結果である。ジキスムントも快諾した。


こりゃ、キャッスルから無事帰還できたらまた換金だな・・・・

もう手持ちの懐が寒くなってきた現状に嘆息した。



「ずいぶん竜騎士が多いね。」


「竜がドラゴンキャッスルの外に出ないようにするためです。また竜使いになりたいがためにキャッスル内に不法侵入する輩が後を絶ちません。」


ジキスムントから敬語を話すは必要ないと言われ、竜二は口調を改めていた。


仮契約程度なら神殿を通さなくてもできるといってたな。コストパフォーマンスを考えたら到底割に合わないと思うが・・・・。

捕らえられたら意味が無いだろうに。

世間では、そんなに竜使いになりたいものだろうか?

そのことをジキスムントに聞いてみると、


「ドラゴンの能力の高さも魅力ですが、一番は魔法が使えるからですよ。」


「ああ、それか。」


この世界には魔法が存在するが、それを使えるのは二つの道しかない。

竜使いになるか、厳しい訓練を受け国お抱えの宮廷魔道士になるかである。

当然前者の方が魔法の習得は容易である。また竜麟や牙には骨董品や薬として価値がある。


それゆえ古来は竜の密猟が絶えなかったという。さすがの竜も卵や幼竜の時はどうしようもないわけだ。

ドラゴンキャッスルが形成され、神殿兵士が巡回しているのは、先人たちの考えた末の結果である。


動物保護区域に密猟者が来るのを警察が守っているという図式か。

考古学者なら調べる余地がありそうだが、今の竜二にはそんな余裕はない。


どんな魔法を習得できるかは契約するまで分からない。

今まで腕力で生きてきた人でも魔法が強力で魔法主体の戦闘スタイルに切り替える人もいるという。

ちなみに、ドラゴンのランクと魔法の種類とは一貫性も関連性もない。同じアースドラゴンとの契約でも一方は強力で、もう一方は弱小な魔法しか習得できない場合もある。

にもかかわらず、密猟が減らないのは一般人にとって魔法を使えることはそれだけ魅力なのだ。


翌日、ようやくキャッスル入口に到着した。


ここレッドゴッド連邦内におけるドラゴンキャッスルは2カ所あるが、世界中から見てもここはかなり規模が大きい。警戒は厳重だがそれだけに多くの竜が生息していた。

密猟者の逮捕件数も最も多い。

高い塀が囲っていた。なんだか刑務所みたいだな。


「さあ、行きましょう。いいですか?」


「わ、わかった行くよ。」


ビビりながら許可証を見せて正門に行く。奴隷は許可証がなくても主人がいれば入れる。ただし、キャッスル内にいるうちは、奴隷を解放してはならない。

奴隷の出自を書き、照合を終わらせて入場する。

自前の馬は連れていても構わない。



「まだ身構えなくてもいいですよ。ほら、もう少し先にまた門があるでしょう?」


200メートルくらい下り坂の先にまた小さい門がある。


「本当だ。これはなぜ?」


「密猟者対策です。最初の塀を超えても2つ目の塀で捕えられるという仕組みです。」


我々の価値観でいうところの二重サッシといったところか?

奥深いな。


「さあ、ここからがすべて自己責任です。心の準備はいいですか?」


「い、いいぜ!」


小さい門を超えて本番だ。

門を抜けると竜二は絶叫した。


「わーお、恐竜のいる白亜紀だかジュラ紀だかはこうだったのかな!?」


と思えるほど、視界に竜が飛び込む。

視界一杯に竜だらけであり、竜専門のサファリパークに来たようだ。


「恐竜ですか?」


「あ、いや。独り言。」



「・・・・あの、大丈夫だよね?」


本当に行くんだよね?と聞くほど竜二は愚かではなかった。

しかし、ジキスムントの進言を聞き入れたのは良かったが、今更になってジキスムントが自分を見殺しにしやしないか不安になってきた。

防具を買ってないのだから当然である。

自分は死んでもジキスムントは死なないのだから。


「緊張していますね。マスターなら大丈夫だと思います。ただし私から離れないでください。」



いよいよ門から離れ、竜のエリアに行く。

やっぱり、もっとお金をかけておけばよかったかな?

竜二は今更ながらに後悔した。



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