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ドラゴンライダー立身伝~銀翼の死神~  作者: 水無瀬 凜治
遊撃隊長昇任後
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プラント平原上空戦 2

レスタが合図を送ると、部下達は散開し始めた。闇雲ではなく、全員均一な速度と角度で散らばった。見事な統制である。

その真ん中からレスタがラプトリアへ向かっていく。


「行くぞ!ステルスドラゴン!」


レスタはラプトリアへブレスを見舞う。レスタの相竜のブレスは冷気型であった。翼に当たろうものなら凍り付いて機動力が損なわれる。最悪、落下する危険性もありえた。スピード重視のラプトリアにとっては一たまりもない。

だがラプトリアはこれを難なく躱す。


「それは予測済みだ。」


すかさずレスタは装備している武器で回避予測場所へ追撃する。レスタの武器は長い鎖がついた鉄球、いわゆるチェーンフレイルであった。連射性はないが、三六〇度方向に攻撃できるため、愛用する飛竜騎士は多い。


「ぐっ!」


鉄球はラプトリアの左前足に当たった。ラプトリアは体勢を崩すが、直ぐに整える。

レスタはあらためて驚嘆していた。


『なんという判断力!完璧に頭部を捉えたつもりだったが、とっさに体を捻って直撃を避けたか……回避中にあんな芸当まで出来るとは…』


全ての飛竜に言えることだが、飛竜が最も隙だらけになるのは回避中もしくは回避直後、特に左右急速回避サイドスライド・スウェイした時である。その時間、僅か一〜三秒前後だが、この実行中だけは追加で回避できない。

この回避中を狙うには、予測するか誘導するかのテクニックが必要になる。レスタは現在までの経験から相竜にブレスを吐かせる方向を絶妙に調整し、レスタが照準を合わせたところへラプトリアが回避するように誘ったのだった。これは相当な技術と経験が必要であるが、レスタは瞬時に判断して実行したのである。


「ステルスドラゴンがブレスが吐けないゆえに、正面から気にせずに間合いを詰めることが出来たというのもあるが……それにしても手強い。」


だがレスタにはまだ余裕があった。


「見せてやろう。松原竜二。強化の魔法は……お前だけの専売特許ではないという事を。」


レスタは相竜に命じ、一気に間合いを詰めるもラプトリアは打撃を受けた事で左爪が使えないのか、右爪でレスタの鉄球を受け流し、距離を大きく取った。


『……どうやら左前足がある程度、治癒するまで守勢に回る腹づもりのようだな………だが!』


「いくぞ!強化(フェースアップ)!」


発動と同時にレスタの相竜が微かに光る。


「やってやれ!ビグラス!」


「……承知。」


レスタの相竜ビグラスがのめり込んで強襲する。速さはラプトリアと引けをとらない。再び両者の闘いが開始された。速さの上ではまだラプトリアが僅かに有利だが、爪や牙の当たる音だけが響き渡り、適度にラプトリアも敵の攻撃を躱しており、第三者から見ればいい勝負に見える。

だが少しずつだが、ラプトリアが不利になりつつある。さすがのラプトリアにも戸惑いが見えた。

只でさえ左爪が使えないせいで、攻防とも右爪に頼っている。最大のアドバンテージである速さで差が詰められたとあれば、優位に立つのは難しかった。

しかもビグラスが強化されたのは速さだけでなく、体力、筋力など肉体面全てである。持久戦になれば明らかにラプトリアが不利になる。

打ち合いが何十回か続いたところで、遂にラプトリアに集中力が乱れ始める。接近戦が得意とはいえ、一撃を重んじるラプトリアだ。長期的な格闘は得意ではなかった。


「強化をもってしても速さで互角にさえならないとはさすがはステルスドラゴン……だが、体力はこっちが上のようだな………隙あり!」


レスタはラプトリアが疲労が見えたところで、頭部に目掛けて鉄球を飛ばす。見事に命中し、左頬に当たった。


「うぅぅ!!」


直撃を喰らったせいか。さすがに眩暈(めまい)がするのだろう。バランスを崩し、飛行がままならないようだった。


「見たか!松原竜二。これが飛竜騎士の戦い方だ。」


飛竜も生き物である。集中すれば他が見えなくなることだってある。ラプトリアはビグラスに追い詰められた事で、ビグラスにばかり集中してしまい、レスタの方を見ていなかった。そこをレスタは巧妙に突いて攻撃したのである。飛竜騎士の戦いは竜が主役ではあるが、だからといって何もしなくていいという訳ではない。騎士も脇役として相竜をサポートするのである。

ベテランになればなるほど、騎士達は自分の立場を弁え、より相竜が【戦闘に集中出来るように】そして【力を引き出せるように】的確に指示を出したり、状況を確認したり、魔法や武器で援護をしたり、他の騎士と連携をとったりするのだ。

ようするにいかに戦闘では自分が主役を際立たせる名脇役であるかを自覚した騎士が長生きできるという訳である。


「今だ!冷却吐息(コールドブレス)!」


隙を見てビグラスが目いっぱいのブレスを吐いた。ラプトリアは本能的に危険を察知して、なんとか直撃を躱した。


「よし!成功だ。」


躱されたのに、レスタはしてやったりという顔をしている。それもそのはず、レスタの目的はラプトリアの翼にあったからである。


ラプトリアは態勢を立て直そうとするが片翼の一部が凍り付き上手く動かせない。これでは普段の戦法が出来ないだろう。


「やれい!」


レスタは右手を大きく振り上げながら叫んだ。これを合図としてレスタの部下達が一斉にラプトリアに迫る。瞬く間に囲まれてしまうが、最終目的は捕縛にあるので、光竜騎士団たちはむやみにトドメを刺そうとはしない。代わって一人の騎士が相竜から飛び降り、ラプトリアの背中に降り立ち、竜二を攻撃しようとする。殺しはしないものの、暫く刃向わないよう腕一本くらい切断するつもりだった。

ラプトリアは何とか振り落とそうとするが翼が思うように動かない。竜二は竜具を離し、恐怖を必死で隠しながら強気な姿勢で小剣を抜こうとするが、一歩早く騎士の剣が竜二の肩へ振り下ろされる。


「くらえぃー!」


「ぐわぁー!」


「りゅ、竜二!!」


騎士の剣撃と共にラプトリアの悲鳴とも聞こえる掛け声が響いた。



………


……



だが一向に竜二の肩は切断されていなかった。


「まだまだぁ!」


「ぐは!」


ざくっという音と共に騎士はラプトリアから落下する。〝騎士の腹部〟と〝竜二の小剣〟には大量の血が付いていた。


「なんだと!何が起こったのだ!?」


レスタは驚きを隠せない。やられた騎士は手加減しているようには見えなかった。つまり竜二が剣撃に耐えたという事である。


「ハアハア…。どうだ!まだ俺はピンピンしているぞ!もっとかかってこい!」


竜二は大きく挑発する。決して力強さはないが、光竜騎士団兵士を奮い立たせるには十分だったようだ。


「こいつ……舐めるな!」


「光竜騎士団の恐ろしさを見せてやる!」


光竜騎士団がラプトリアの背中に降り立ち、次々と竜二へ襲い掛かってきた。


先程は片手剣の騎士だったが、今度は長剣を所持した騎士が襲い掛かるも、この剣撃も竜二は左腕で受け止め、右手の小剣で敵の右腕を突き刺し、長剣を奪った後、胸を突き刺して撃ち落とす。

槍を持った騎士が竜二の腹部を突き刺してくるが、これも竜二は平然として受け止め、逆に槍を掴んで引き寄せ、踏み込みながら長剣を首に突き刺した。

次にメイスをもった騎士が竜二の頭頂部を目掛けて振り下ろした。脳天を打たれた竜二は一瞬怯むが、すぐに動き出して長剣を突き刺す。

後ろから戦斧をもった騎士が渾身の一撃で竜二に振り下ろすが、竜二は耐えて踏ん張る。


「な!大木さえ簡単に切断するトマホークが…」


竜二は即座に駆け出して騎士の間合いに入り、騎士に向かって思いっきり長剣を振り下ろした。


「ぐわああ!」


また一人と脱落する。


「弓だ!松原竜二向かって矢を射れ!」


レスタの合図と同時に弓を所持する二人の騎士が、一斉に竜二へ射るが、竜二は態勢を前かがみにして急所をカバーする姿勢を貫いたまま、微動だにしなかった。

次々と竜二の体に矢が刺さり、殺ったかと思われたが、その直後、一人の弓を所持した騎士が頭から血を吹きだして落下した。竜二のシグである。何が起きたか分からずに再びもう一人の騎士は次々と矢を仕掛けるが、竜二は顔を片手で覆いながら、もう一人の騎士に狙いを付けて発砲する。騎士本人には当たりはしなかったが、相竜にBB弾が当たり、もう一人の騎士は大きく態勢を崩した。


レスタは驚きを隠せなかった。武術は素人そのもの、いや初心者と言ってもいいくらいの出鱈目(でたらめ)で力任せの攻撃ばかりだが、それ故に加減を知らない。まるで一人でも多くの敵を道連れにしようと考えているかのような戦い方だった。

味方であれば即座に止めようとしただろうが、敵に回すと厄介な存在だ。とはいえ、こっちは光竜騎士団員。決して引けをとらない。否、最初の一太刀で決しているはずだった。


「くっ!……ブレスだ!松原竜二に向かってブレスを吐けい!」


物理攻撃では勝負にならないと読んだレスタの指示が入ると何人かの騎士が竜二に向かってピンポイントで火球を飛ばす。ラプトリアは翼が凍り付いたせいで上手く回避できない。竜二は避けるどころか、態勢を低くして頭を両腕で覆い、防御姿勢に入った。直後に火球数発の直撃を受けた。


竜二は大量の火炎と黒煙に撒かれる。




しかし、しばらくして煙が晴れるとそこに防御を解いて身構えている竜二がいた。精気をみなぎらせた目で睨み返している。苦しそうな感じは見受けられない。


「ば、ばかな!奴は……本当に死神なのか?本当に不倒なのか……?」


レスタが驚きを隠せない最大の要因。それは竜二の打たれ強さである。

もちろんこれは竜二の強化魔法の恩恵である。本来、強化の魔法は人間を始め、動物にこそ効果があると言われている。レスタの強化の魔法もそれにあたる。竜二の強化の魔法が一般の強化の魔法と相違点があることなどレスタが知る由も無かった。しかも竜二は防寒と刺突対策を含めてアンダーにキルティングしたベストを着こんでいた。もちろん強化済みである。これが功を奏し、槍の突きにも耐えられたのである。


「ぬううう。ならば……竜だ!機動力を封じたのだ!翼や腕の一本くらい奪っても構わん!追い討ちだ!」


レスタの命令と同時に残存兵が一斉に襲い掛かる。竜二はすかさず左手で球体を投げ放った。その瞬間、黒煙が広がった。光竜騎士団員達は一端距離を置く。


「これは……支殿で売られている煙玉!」


周辺が濃い黒煙が充満し、視界がなくなった。弓を装備している騎士が乱射するが手ごたえは感じられなかった。

やがて黒煙が晴れるとそこにはステルスドラゴンはいなかった。


「隠蔽で離脱したか……こうされないように注意したつもりだったが。」


折角翼の動きを封じたのに、戦いに白熱したことで、包囲を解いてしまった。思った以上に善戦されたことによる焦りもあったかもしれない。だがレスタに戸惑う様子はなかった。

陸に狂死帝傭兵団がいる限り、制空権をとらねば帝国軍の絶対的勝利などないからである。

レスタは竜二が一時帰投して態勢を立て直す腹づもりに違いないと読んでいる。


「……総員本陣へ向かえ!そこへ向かえば途中で松原竜二とステルスドラゴンに出くわすはずだ!休息を与えるな!」


後方から一斉にオーッ!と掛け声が上がるが、その直後に全員に悪寒が襲う。背中に感じたこともない威圧感が漂っている。


「ほう…我がボスにトドメをするつもりか?……ならば生かしておけぬな。この下郎共が!!!」


ぎゃあ!ぐわああ!と悲鳴が上がる。騎士達の腕や足が暴発したかのようにはじけ飛んだ。

全員、後ろへ振り返る。その異様な姿に全員が息を呑んだ。


「これがソンブルドラゴンなのか……」





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





地上からもホアキムが部下の報告を聞いてたじろいでいるところに目的の竜が現れ、驚愕していた。


「間違いない…あれは本物のソンブルだ…しかも……本契約しているだとぉ!一体どうやって…」


もう訳が分からなくなっているホアキムだが、上から声が聞こえて振り返った女性を見て、自制が効かない程混乱することになる。


「私ですよ。……お元気そうじゃないですか。ホアキム様」



「お、お、お前は………シャーリィ!!」


大きな木の枝に座って見下ろしている彼女を見てホアキムは声を荒げる。


「その名前の女はもういませんよ。私は囚人番号四二七番です。名前は奪われました。私の眼前にいる人によってね……」


そう言うと、四二七番ことシャーリィは満面の笑顔から殺意剥き出しの狂気に満ちた笑顔に変わっていた。




遅れましてすみませんでした。

なんというか、局面の変化に私自身が付いていけなくて・・・


何回も書き直してしまいました・・・


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