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ドラゴンライダー立身伝~銀翼の死神~  作者: 水無瀬 凜治
遊撃隊長昇任後
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AvsAの戦い(中)

〜二日前〜


「閣下。夜になったら偵察に行きませんか?」


「お?早速、実戦で試したいって腹か?」


「偵察だって重要ですぅ!……教官とビボラさんが来るまでの間、ただ待っているだけじゃ万全を尽くしたとはいえないかと。」


図星らしい。

ユーリーが最近、鍛錬の過程で覚えたアビリティ


闇夜同化(ダークレート)〟アビリティ


暗くなればなるほど見つからなくなるこのアビリティは、暗闇という条件さえ合えば、殆どラプトリアの隠蔽アビリティと変わらない。

このアビリティを覚えた時、リサは相当喜んだのだが、いかんせん鍛錬では使う機会が無かった。今回は初実践したいのだろう。竜二を誘ったのは、まだ完璧に使いこなせているかどうか不安だからだろう。

ちなみにこの二か月間、リサとユーリーは更に強くなり、他の隊長から引き抜きの打診が来るほどであった。ユーリーに騎乗するという条件下ではあったが、その強さは「リサが神殿契約したならどれだけ大化けするか」と熟練のハルドルでさえ驚嘆ほどである。


「そうだな。待ちの姿勢は良くない。いやー気が付かなかった!失念してたよ。そこに気づくとは成長したじゃないか。」


竜二は心底感心したような表情でリサを褒めた。


「エへへ、ありがとうございます!」


「ようし、それじゃ夜になったら一緒に行こう。」


「はい!」


これから敵地に行くというのに怯えるどころかリサは自分の提案が受け入られたからか満面の笑顔を作った。


正直なところ、竜二はリサから提案が無くてもラプトリアと共に偵察に行くつもりだった。もし敵がAランクならば当然、竜二が戦うことになるだろう。そうなれば他の連合国飛竜騎士と戦うのはリサとハルドルだけになる。いくら二人が強いとはいえ、二人だけで敵に勝てると思う程竜二は過信していない。少しでも勝率を上げるためにも情報をいち早く掴んでおく事が重要なのは歴史が証明している。アパンからは偵察兵を派遣しようと提案があったが、これは竜二が拒んだ。

なぜなら人づてから聞くより自分の眼で見た方が確実である。そしてラプトリアに騎乗さえしていれば見つかることも無いため、他の偵察兵よりも見つかる危険は少ない。遊撃隊隊長という役職についているものの、竜二とラプトリアこそ最高の偵察兵なのだ。

例え見つかって偵察に失敗したとしても第一飛竜連隊の残存兵から大体の敵の情報は掴んでいる。リサに経験を積ませるためにも、ここはリサを同伴させた方が良いと竜二は判断した。


リサのやる気と成長を促すため、竜二は咄嗟にあたかも今、気が付いたかのように嘘を言ったのだった。



案の定、機嫌が良いリサと共に竜二は敵の陣営へ偵察を行った。

二人とも偵察任務は初めてのせいか、ぎこちないながらも相竜のアビリティの優秀さに助けられ、陣営の近況や物資の安置場所、警備体制などが素人ながら少しずつ判明していく。

肝心の飛竜騎士達については連合国軍の陣営を見る限り、例のAランクの竜は特別扱いなのか一般の駐竜場にはおらず発見できなかった。駐竜場に待機している飛竜の数からして確かに飛竜騎士は減ってはいたものの、三人だけでは手に余る兵数であり、愕然としてしまう。


せめて竜騎士達はどうしているのかだけでも調べようと更に偵察を行うと、帝国の飛竜騎士の脅威はもう去ったと思っているのか酒を飲んで宴会気分になっていた。出来る限り近くによって盗み聞きしてみると数日間は宴会を続けるつもりであるらしかった。


これに竜二は目をつけた。

竜二とリサはその日はそのまま帰り、翌日のビボラたちの報告を聞く一方で、ブルーノに睡眠薬の手配を依頼する。遅行性で持続性の高い薬の希望だったのだが意外にも簡単に手に入り、帝国魔導士特製の睡眠薬を手に入れた。そして昨夜、竜二達は再度、敵陣営に忍び込み、酒樽に睡眠薬を忍ばせようとした。

だが酒の貯蓄場所は地下にあり、忍ばせるにはラプトリアから降りねばならず、隠蔽の恩恵を受けられない竜二では地下に行く前に見つかる可能性が高かった。

そこで竜二は敵が晴れている日は、直ぐに戦場に駆けつけられるように屋外に設置されたテーブルとカウンターで食事をすることを知り、大胆な策に出る。ラプトリアの頭に乗り、おかわり用の予備の酒樽にギリギリまで近づいて混入するというやり方であった。いくら見えないとはいえ、少しでも物音や鼻息を立てたり、ラプトリアの頭から落ちたら即アウトである。ラプトリアとリサとユーリーの手助けのおかげもあって薬の混入に成功し、見事に酒をおかわりをした酒好きの連合軍兵士達に限ってまるで泥酔したかのように寝てしまったのであった。


こうして竜二がラドルズと対峙して時間を稼いでいる内に、リサとハルドルは数がめっきり減った他の一般連合国飛竜騎士を見事に撃退して駆けつけることが出来たのである。


『思ったよりも早かったな。大したもんだ』


竜二の予想よりも合流が早かったのは二人の強さの賜物だろう。ハルドルが見当たらなかったが、竜二が二人の心配をするのは早いと思い、竜二はラドルズに向き直る。


「くそ!使えない奴らめ!まあいいさ。報告に無いところを見るとお前なんか屁でもない。僕の顔を叩いた罪の重さをとくと思い知らせてやる!お前は…なぶり殺しだ!」


ラドルズは顔を手で押さえながら、リサに向かって言い放つ。


実は連日宴会をした理由はラドルズのせいであった。帝国で有名な飛竜騎士であるフェルナンドを倒したラドルズはすっかり気を良くし、帝国は暫く大人しくしているだろうと遊び呆けていたのだ。だが、自分だけ遊んでいては目立ってしまう。そこで祝勝会と評して竜騎士達に飲酒を解禁し数日間宴会を開いたのであった。

連合国ではラドルズはかなり地位が高い方である。だからこそ腐敗したと言えるのだが、A級騎士に向かってそれを物申す竜騎士は連合国内にはいなかった。




「ほう?妾を殺すとな?ふふふ、面白い!やって見るが良いぞ。」


リサは高々と笑う。

ラドルズは二対一で戦うことになった。


ラドルズは最初こそリサを侮り余裕で二騎を相手していた。だがリサとユーリーの強さに徐々に圧倒されていった。かといってリサ達に気を捕らわれていると今度は側面からラプトリアの攻撃が迫ってくる。だたでさえ動きが悪いアゼリだ。徐々に防戦が主体となり、反撃頼みになっていく。


『くそ、こんな禍々しい竜の報告なんてなかったぞ!偵察兵の馬鹿共は何してたんだ!』


ラドルズは思いっきり毒づいた。

実際は竜二程ではないもののリサに関する報告は上がっていた。ラドルズが思い上がって報告書を見なかっただけである。物申す部下がいないことがここで弱点となった。


『ようし!何とかいけそうだ』


ラプトリアの強さは重々承知の上だが、彼女の能力はまだ開放できていないところがある。ラプトリア一人でAランク相手に互角に戦えると思うほど竜二は思い上がっていなかった。だが複数騎VS単騎なら勝機はあると踏んだ。


「ぐはっ!!」


今までよく持ちこたえていたアゼリだが、遂にラプトリアの爪がアゼリを捕らえた。アゼリは大きく態勢を崩す。左目を縦に斬られ血が滴り落ちている。


「相竜に気をとられている場合か?」


「な!」


リサの恐ろしく速い鞭の攻撃が甲高い衝撃音とともにラドルズを襲う。


「ぐああああ!!」


見ていて竜二は思わず顔をしかめてしまった。ラドルズの左腕は肘から下がありえない方向に曲がっていたからだ。鞭がまるで棍棒のような打撃武器へと変化したような攻撃だった。

竜二はリサが部下で本当に良かったと心の中で呟いた。


「ぎぃぃーー!なめるなよ!今までの戦闘でお前の弱点はお見通しだ。僕の魔法を喰らうがいい。いくぞ!“プレジャーチェンジ”」


ラドルズは詠唱とともに思いっきりリサに向けて右手を伸ばした。



………


……





ラドルズはリサに向けて魔法を放つも特に変わったところはない。


「ふん!悪あがきか?なら止めを刺してくれるわ!」


リサは大きく羽ばたいて旋回しながらラドルズの側面に回った。リサの攻撃をアゼリはすんでのところで避けてブレスを吐く。間合いが詰められていたせいかユーリーは慌てて真横にスライドして躱す。

結局、さっきまでと変わらないリサやユーリーが攻撃してアゼリが避けて反撃というイタチごっこに戻った。


竜二はというとラドルズの魔法は何だろうと首を傾げながら今までどおり、隙を見て攻撃というスタンスを続けていた。

だがラドルズの魔法の効果は早くも現れ始める。リサが明らかに攻撃が散漫になり気分が悪そうに俯いていたのだ。片手で大きく頭を抱えて頭を上げるのでさえ苦しそうだった。


どうしたのかとフィーリングセンシーでラプトリアと同等の視力でリサを見ると顔が青ざめており、呼吸が荒く、目の焦点が合っていないようだった。いつまで経っても指示がないことにユーリーも心配してアゼリと距離を置いていた。



しまった!と竜二は思った。ラドルズも竜騎士なんだ。魔法は使えて当然だ。Aランクということでアゼリばかりに気をとらわれて騎士の方を軽視してしまった。周囲もラドルズを過小評価していたこともあって報告書もアゼリの方ばかり読んでしまっていたのである。竜二は必死で生存竜騎兵からの報告を思い出した。


『確か聞いた話ではラドルズと交戦中に一部の帝国竜騎兵が吐き気やめまいなど訴えて気分が悪くなり、その隙を突かれて撃墜されていったとか言っていたな。でも決まってこの症状が現れるのは仮契約だけの竜騎兵だけとか…』


そうラドルズの魔法について軽視していた最大の理由は神殿契約した竜騎士には効果が見られないということだった。当然、竜二は適応外であったため、軽く聞き流してしまったのである。しかしリサの力を借りるという策を練った以上、きちんと聞いておくべきだった。竜二は自分の迂闊さを呪った。


「ふっ…今までの戦いでお前がある程度の高度までしか上昇しないことがわかった。お前は現地契約止まりの竜使いだ!さあ殺してやる!」


『高度………そうか!思い出したぞ!ラドルズの魔法は…』


気圧変化(プレジャーチェンジ)


気圧を大きく下げて周囲の者達を酸欠状態にしてしまう恐ろしい魔法だった。この魔法が最大限に発揮されるのは対地戦だとされる。これを喰らうと人間は地上にいながら高山病と同じ症状が起こり、動けなくなってしまう。後はアゼリの殺戮ショーとなるわけだ。帝国軍が今まで連合国攻略できなかったのも帝国歩兵がラドルズの魔法に手を焼いたからだった。

しかし神殿契約した竜使いは竜と同等の気圧まで耐えられるため、この魔法はさほど脅威ではない。なぜならこの魔法は自分を中心に射程範囲が広いため、神殿契約した飛竜騎士を戦闘不能にさせるほどとなるとラドルズ本人も酸欠に苦しむことになる。


だが現地契約までの竜使いは完全に竜の恩恵を受けれず、ラドルズの魔法に翻弄されることになる。ましてユーリーは何度もアゼリの攻撃を大掛かりに避けたため、Gが圧し掛かり、リサにどんどん負荷がかかっていったのだろう。


歩兵は散々手を焼いていたせいか偵察歩兵からの報告書を読んでいれば、きめ細かく記載されていた。だが帝国軍の陸軍と竜騎士軍団との軍内における組織の壁が邪魔して偵察竜騎兵の報告書しか竜二には配られなかった。しかも偵察の成功率を上げるために帝国軍は数少ない神殿契約した下位の竜騎士達を偵察竜騎兵にしていた。ラドルズの魔法に関しての報告が淡白になるのも無理からぬことだった。


『こうなっては仕方ない』


竜二はユーリーに対して腕や手を動かしてサインを送った。空中では飛行速度や距離によって声が聞こえないことが多いため、隊内であらかじめサインを決めておくのである。サインを認識したユーリーは直ちに降下しはじめた。


「逃げるか!僕の腕のお返しだ!」


ラドルズは右手で手斧を持ち、思いっきりユーリーに向かって投げつけた。すぐさまラプトリアが間に入り、爪で手斧を弾く。

ブーメランみたいに手元に戻るような仕組みなのか弾かれた手斧がラドルズの右手に戻っていった。


「くっそー!やっぱり君はムカつくよ!まだ未成熟な竜もろとも堕としてやる!」


「そうはさせるか!」



再び一対一の戦いに戻った。だが竜二は悲観していない。ラドルズは片腕を損傷している。痛みのせいで脂汗が出ているのが見える。アゼリは片目が損傷しており、大きく損傷しており視界が狭まっている。何よりあの体型で過剰に運動したせいか肩で息をしている。このまま持久戦に持ち込めば決して不利にはならないだろう。

再びAランク同士の一騎打ちが再開されることになった。



実は私は小売業に従事してまして、クリスマス商戦から忙しく更新怠けました。すみません。


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