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ドラゴンライダー立身伝~銀翼の死神~  作者: 水無瀬 凜治
第1章 異世界召喚編
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奴隷購入

竜二は、夕方前にエドガー宅に戻った。


にしてもさすが領主。立派な屋敷だなあ。町の規模に恥じない大きさだ。

などと思いながら、与えられた部屋に戻る。途中でリリアと出会った。


「お帰りなさい。街はどうでしたか?」


「いやあ、大きいですね。なんでも揃っているって感じです。これほどの街を統治するなんてエドガーさんには頭が下がります。」


「喜んでもらえて光栄です。昨日の続きと行きましょうか?あと少しですから。」


この世界についての勉強である。

今日ようやく、竜騎士までの道のりについての解説に入るわけだ。


「ええ、お願いします。」





説明すると

竜騎士までの道のりは、まず竜使いになることである。


そのためには竜神殿に行く必要があるそうだ。

世界各地に点在し、本殿は総本山であるトムフール新教団領にある。

トムフール新教団領を総本山とするトムフール聖教は聖母竜を祀っているらしい。


諸外国にある竜神殿は支殿と呼ばれ、そこで説明を受け、厳正に審査されたのち許可証をもらう。

これでようやく、正式に竜に会う資格が得られるわけだ。


ここから一番近い支殿は、馬を使って4~5日位の道のりだと教えてくれた。


竜のことについては、竜神殿で聞いてほしいとのこと。


まあ専門家集団だろうから、その方が確かだな。



「リリアさん、本当にありがとうございました。」


「竜神殿にいくなら道中、お気をつけて。町を出ると治安が悪くなります。」


「心得ています。明日出立しようとおもいます。」


「もうお行きになるのですか?いずれは、出て行かれると思いましたが、もう少し体休めてからでも良いのでは?」


「これ以上、迷惑かけられません。それに、ひょっとしたら竜神殿で台座のことも聞けるかもしれませんから。」


「そういえば、わたしも積極的に聞いたことは無いですね。元の世界に戻る方法見つかると良いですね。」


「ええ、ありがとうございます。」




翌朝、

エドガーとリリアが見送りに来てくれていた。

「お世話になりました。」


「無事、竜騎士になれたら竜を是非私に見せてほしい。私もかつて竜騎士に憧れた一人でね。」


「了解です。」


「竜神殿までは険しい道のりです。お気をつけて。」


「昨日所持品を換金したお金があれば、なんとか馬を買えるだろう。街の入り口にある馬屋に行きなさい。念のため、さっき渡したのを見せてごらん。資金面で融通が効く筈だ。」


「お二人とも何から何までお世話になりました。では、行ってきます。」





竜二の背中が小さくなるまで見送った後、


「ま、せいぜいがんばってくれ・・・Cランク以上の竜に認められるのは並大抵ではない。」


エドガーは隣にいるリリアにも聞こえない小声でつぶやいた。





竜二は街を歩いていた。

竜二も、自分が弱者の立場であることをわきまえている。

そこでリリアに教えられたものの中で、行くと決めていたところがあった。


このあたりだと思うのだが、


お!見っけ!


目指した場所は商店街の裏通りに存在した。



その場所とは奴隷販売店である。


自分は非力なため、力自慢の奴隷に道中守ってもらおうと考えたのだ。

リリアから聞いた話では、農作業や重労働や夜の性欲処理のみならず主人の護衛や家の警備、着付けや服飾や髪の散髪、庭の整備や家の補修、さらには子どもの家庭教師など実に需要があるらしい。

しかも思ったほど残酷は仕打ちは受けてないとのこと。

まあ、領主の娘であるリリアが言っても説得力には欠ける。富裕層の代表格みたいなもんだ。

奴隷達にとっては地獄の日々を送っているかもしれない。


衛生面とか問題ありそうだな。気をつけないと。

竜二は、裏通り入口に1番近い店に入った。


「いらっしゃいませ。どんな奴隷をご入用ですか?」


商人は笑顔で迎えてくれた。

「強い人が欲しいです。私を道中守ってくれるような。」


「それなら候補は沢山いますよ。希望はありますか?年齢とか性別とか?」


「奴隷たちを自分で品定めすることできます?」


「ええ、構いませんよ。どうぞこちらへ」


奴隷商に促され奥の部屋に向かう。


『わお!』


部屋というより廊下だろうか。

細長い通路脇に奴隷が横一線で座っていた。

胸元には、正方形の紙がくっついている。

これがプライスカードか。


その廊下は思ったほど辛気臭いイメージではなかった。

確かにうつむいている奴隷もいたが、奴隷によっては隣の奴隷と雑談している者もいた。

さすがにここまで一列だと壮観だ。


プライスカードを見ると。5万~10万が相場と言ったところか。

「ここが格安の奴隷がいる場所というわけです。失礼ながらご予算は?」


「ええっと、じゃあ50万くらいで。」


「それならもっと上のクラスの奴隷が買えますよ。こちらです。」


竜二は奴隷商の後をついて行く。

「初めてなんですけど、高い奴隷ほど奥にいるのですか?」


「そうです。安い買い物をする客ほど品格が下がりますからね。商品が傷ついたら我々も商売あがったりです。奴隷を守るうえでも、奥の部屋に住まわせてます。上級ともなると個室が与えられたりします。」


「うひょー。もっと辛気臭いイメージがありましたけど違うんですね。」


「あはは、皆さん、共通の見解ですね。」


「あ、そうそう。これをどうぞ。」


商人は、紙の束を竜二に寄越した。


「これは?」


「30万以上のランクの高額な奴隷は、奴隷になる前の経歴や特技や技能などを記述した一覧表をお貸ししてます。」


いわゆる履歴書・職務経歴書か。


見てみると実にキメ細かい。50万超えるとさらに緻密な情報が掲載されている。

健康状態はもちろん、戦闘経験・利き腕・年齢・出身地・宗教・性格・特技・どの業務内容を勧められるかまで。さらには入荷時期まで書かれている。面白いのは性交経験があるか出産歴があるかまで書かれていることか。


「キメ細かいですねえ。こんなにサービスに取り組んでいるとは・・・」


「いえ、元々ここまですることはありませんでした。ただ情報提供しないと高価格の奴隷だけが売り残るという現象が起こったため、今のようなサービスをするようになりました。必要に応じてするようになったという訳です。」


「なるほど。」


「この紙の束には、テディ市内の他の店で販売されている奴隷も掲載されています。お望みならば、他店の奴隷も取り寄せます。」


「はあ、そうですか。」


竜二は見たい奴隷が決まったら呼ぶと伝えると奴隷商はカウンターに戻って行った。

備え付けの椅子にすわり、一人一人確認する。

驚いたことに紙の束は闇雲に纏められているわけではなく、

「戦闘向け」「力仕事向け」「性交向け」などお勧め項目別になっていた。

この世界の奴隷ビジネスは自分が思っているより相当進んでいるのではと錯覚してくる。


書類を読んでいるとあれ?と思った。

なんで、この世界の文字が日本語なのだろう?

でも確かに日本語で書かれている。

漢字まで一緒だ。

なぜだ?これも竜神殿で聞けるだろうか?


そんなことを思いながら、

「戦闘向け」の項目の中から探していると、3人ほど気になる奴隷を見つけた。

早速商人に伝え、一人一人に会う。

ちなみに戦闘向け奴隷の中に女性はいなかった。

顔には出さないが、竜二は心の中では残念がる。


実は竜二は元の世界の会社では、人事課に配属されていた。

人事採用課と人事教育課があり、竜二は採用課担当であった。

1次選考からならば何百人という学生を見てきた故か、人を見る目には自信がある。


結果はどれもしっくりこない。そこで直接奴隷たちを見ることにした。


百聞は一見に如かずである。


奴隷のいる部屋一つずつを覗いていると、


「!」


竜二の直感が働く。

数多の奴隷の中でピンとくる奴隷がいた。

40代後半から50歳半ばくらいだろうか、白髪混じりの髪に髭を生やした男奴隷がいた。

瞳は猛禽類のような強さを感じさせる。

細身だが露出している筋肉は無駄肉が無い。まるで要らない肉は減量で減らし、必要な肉だけ鍛えたかのような試合前のボクサーのようだ。


早速、面会を申し入れた。

戦闘向きの項目に記述されてなかったのは、戦闘に向いていることには向いているが、それ以上に動物との相性が良く、牧童の方が向いていると判断されたためである。


「経歴見ましたよ。何処かの国の兵士だったとか?」


「そうです。・・・ですが昔の話ですよ。私は動物に囲まれている方が幸せです。」


「戦闘経験は?」


後半は無視した。


「奴隷になったのは3年前です。・・・それまでは戦闘三昧でした。」


竜二は気になっていることを聞いた。


「兵を率いた経験は?」


「・・・あります。」


奴隷は客にも商人にも主人にも嘘をついてはならない事になっている。

嘘をつくと、取り扱う奴隷商の評判や評価に影響するため、内容によっては厳しい懲罰が科せられることになる。


「奴隷になる前の役職は?前線部隊の隊長かな?」


「・・・その隊長たちを指揮してました。こう言えばお分かりいただけますか?」


竜二は大きくうなずいた。


竜二が直感が働いた理由。それは、この男性奴隷がいた部屋だ。

この部屋内では、彼にみんな気を使っている風に見えた。

なんというか、その部屋内ではおとなしくしているものの、群れでは自然と第1位のオスに君臨しているような印象を受けたのである。

部屋内には、別の戦闘向け奴隷がいたのにである。

その奴隷さえ尻込みするのだから、是非、話を聞いてみたいと思った。


しかし、こうやって目と目を向きあって相対すると、ものすごい威圧感がある。1種の覇気が出ている感じだ。



この人は歴戦の兵だ。

俺が竜騎士になるまで護衛してもらい、その道中でいろんな知識を教えてもらおう。

その後、解放して自由にしてあげよう。

これほどの人ならば、きっと知り合いも多いだろう。


「名前は?」


「ジキスムントといいます。」


「ジキスムントさん。これから宜しくお願いします!」


「!!」




竜二はその足でカウンターに行き、

決して安くないジキスムントの販売総額料金を即払いしたのであった。



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