命名と変貌
「リサ!契約だよ!現地契約出来たんだよ!?」
即座に竜二はリサに近寄って説明した。
「え?え?契約??これが……ですか?」
リサは目の前のゾンビ竜を見ながら手のひらを見る。
実感は湧かなかった。でもこれで魔法は覚えられるかもしれない。竜二とハルドルの足手まといにならずに済むし、二人の苦労が実ったことになる。それだけでも嬉しいリサだった。
それに対してゾンビ竜の方は茫然と立ちすくんでいた。
契約が不本意なのだろうか?でも出来てしまったものは仕方ない。現地契約なら竜側からでも解除の打診は出来る。途切れ途切れでも人語が話せるのだ。それくらい動作もないだろう。リサが両利きだという事は分かった。これだけでも十分だ。また上位の竜を捜して屈服させたあと契約すればいい。
内心では解除した途端、また襲って来たらどうしようと考えてはいたが…
「どうする?リサと契約解除するか?今は仮契約の段階だから君の一存で契約の解除が……」
「くくくく…………ははははは!」
「!?」
契約解除するかどうかの意思確認の質問する前にゾンビ竜が笑い出した。
思わず竜二とリサは顔を見合わせる。
「あの…何がそんなにおかしいのですか?」
呆気にとられた竜二に代わってリサは恐る恐る聞いてみた。
「おかしいさ!これが笑われずにいられるかい?」
と言いつつもまだゾンビ竜はくくくっと笑っている。現地契約のおかげで人語が流暢に話せるようになったらしい。笑い止むまで二人ともただじっとしていた。
笑い終わって一息つくとようやく話し始めた
「……今まで何人もの竜使い候補がこの渓谷にやってきたのさ。上位だが適性だか何だか知らないが強い竜を求めてね。そのたびにアタシらは人間たちを屠ってきた。契約したい竜さえろくに倒すこともできずに契約する資格があると思うかい?」
竜が皆、同じ考えとは限らないだろうが確かにいくら適性があるとはいえ、弱い奴とは契約を結びたくないだろう。「かといって何も殺すことはないじゃないか」と言う気はなかった。神殿契約すれば両者と命が一蓮托生になるのだから。聖教の注意事項にもキャッスルの出入門付近以外は命の保証はしないと明記されている。命を落とすことを皆覚悟の上で竜と契約を望むのだ。
そういう意味では幼竜のうちにラプトリアと契約出来た竜二は幸運と言える。
「ちなみに今までどのくらいの人間が此処まで来たんだ?」
「さあ。数えたことはないねえ。百人に到達したかもしれないねえ。」
てことはそれだけの竜使い候補の死体がこの渓谷で眠っているという事なのだろうか?確かにこのゾンビ竜の能力は凄かった。ラプトリアがいなければ絶対勝てなかったろう。聖教が二回目以降の契約志願者に入城を奨励しているのが分かった気がした。
それ以前に上位の……それもAランクの竜使いが少ないのは野生の竜が少ないのもあるだろうが、契約までの過程が大変なためもあるのだろう。
「だがアンタらは違った。アタシの手下をことごとく倒し、アタシまで倒した。そしてアタシがつい興奮して我を忘れたところに契約だって?まんまと謀られたもんだよ。」
どうやらゾンビ竜は自分と契約するために、こちらが一芝居打ったと勘違いしているらしい。まあ相手が勝手に勘違いしたのだからこちらに非は無い…と思う。
「………しかもこのアタシが一度ならず二度までも不覚を取ると来たもんだ。」
「あら?気付いていたの?」
ゾンビ竜の上から声が聞こえる。いつの間に移動したのか透明な状態から徐々にラプトリアが姿を現わした。ラプトリアはゾンビ竜の頭頂部に伸ばした爪を立てていた。ちょっとでも不穏な動きでもしようものなら頭を突き刺す気だろう。
『前に教えたもんなー。頭の中にある脳の重要性…』
知識欲旺盛なラプトリアへの竜二の講義は人体を初め、生物学全域にまで及んだ。勿論全部は話しきれていない。脳や心臓、肺や頸椎など本当に重要な器官の説明だけである。呑み込みが早く、記憶力も良いラプトリアは一度聞くと殆ど覚えており忘れることが無かった。ちょっと苛めるつもりで復習テストをしても難なくクリアするため、途中から辞めたほどである。
打たれ強いゾンビ竜に頭への攻撃が効くかは不明だが、少なくともゾンビ竜を怯ませるには十分だったらしい。
「フッ……アタシの負けだよ。アンタらになら命を預けられそうだ。アンタ、リサと言ったね?今回の契約においてアタシに異論はない……リサはどうなんだい?」
女性のリサには難しい質問かもしれなかった。なにせこのゾンビ竜の容貌である。気味悪がってしまうかもしれない。竜二としては無理に勧めるつもりはなかったが、リサの返答は極めてあっさりしものだった。
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
即断即答である。いいのかと思ったが、竜二が尋ねるより先にリサはゾンビ竜に近寄って体をなでている。結構図太い神経なのかもしれない。
リサの返答を聞いて両者合意に至ったことを確認したラプトリアは爪を引っ込めて竜二のところに戻った。
「あの……ところで貴方の名前はなんていうのですか?」
リサが尋ねる。
意識していなかったが、いつまでもゾンビ竜扱いでは不便だ。竜二も知りたいと思った。
「おや?名前は竜使いが決めてくれるのではなかったのかい?」
リサはきょとんとしている。彼女は支殿で講義を受けていない為、段取りを知らない。ここは竜二が先輩契約者としてアドバイスすべきなのだが、ここまで成長した竜なら名前ぐらいはあると思い込んですっかり忘れていた。竜との契約の際は人間が竜の命名をする。絆形成の初期段階という訳だ。
「ごめんリサ。説明を忘れていた。実は…」
竜二は契約の過程について簡潔に説明した。
「そうなんですか?ええーっと命名…命名。んー………そうだ!」
意外にさほど悩むことも無く、あっさり決めたようだった。
「決めました!ユーリーという名前はいかがですか?」
「アンタがそう決めたのならそれでいいさ。人間達にとっての良い名か悪い名かも分からないしね。」
ゾンビ竜も嫌悪する様子が無かったので彼女は今日からユーリーという名前になった。ちなみに…
「ユーリーという名前の由来は?」
と竜二が聞いたところ
「百合の花からです。百合は奥行きが深いでしょう?ユーリーの口の奥行きも深いみたいだったので…」
だそうである。
彼女にとってはあと一歩で胃の中に入るところだったのだ。悪夢になりそうな恐怖体験なのにそれを花に例えるとは。園芸好きのリサらしいと言えばリサらしいが………やはり相当神経が太いのかもしれなかった。
「ところでユーリー。ハルさ………あそこにいる竜騎士と相竜は大丈夫なのか?」
「あれぐらいなら命に別状はないさ。一日安静にしていれば大丈夫だろう。」
それならばとハルドルとアルサーブを野営地に連れて行くことにした。怪我人を放置するわけにはいかない。
アルサーブの体を掴んでラプトリアと竜二が飛行準備に入った時、ラプトリアとユーリーは警戒態勢に即座に入った。
「今までは誰もこの辺一帯は手を出してこなかったのにアタシの部下がやられた途端コレか。抜け目ないもんだねえ。」
ユーリーはやや苛立っているようだった。野生の竜でもテリトリー争いはあるようだ。今回の戦闘でユーリーの勢力圏が弱まるのを窺っていた竜達が現れたのだろう。
「くそ!ラプトリア一旦アルサーブを降ろせ。迎撃するぞ!」
「待った!その必要はないさ。アタシ一人で十分だ。アンタらは救助の準備を続けな。」
そう言うとユーリーは飛び立った。その直後、一斉に竜の群れが物陰や上空から現れた。下位の竜みたいだが数が多い。これでは長期戦になる可能性が高い。
「私は低空で迎撃するわ。竜二!今のうちにハルさんの体をアルサーブに固定して!」
「分かった!」
すぐさま紐を取り出した竜二はリサと一緒に結び始めた。リサの鞭ほど長くは無いものの、ハルドルを一人くらいならどうってことはない。
十分後、ようやく気を失ったハルドルをアルサーブの体にロープで固定し終えた竜二は上空を見上げた。見ただけで戦闘は熾烈になっていることが分かる。特に敵の群れの真ん中に突っ込んだユーリーは最初は有利だったが、敵の数の多さによる消耗戦で苦戦しているようだ。助けに行ってやりたかったがアルサーブが動けない以上、竜二達には見守ることしか出来なかった。
暫くして敵の大半を片づけた二匹は降りて来た。呼吸は粗く、体力を消耗しているのが分かる。
「奴らはまた仲間を呼び寄せてやってくる。今の内に連れていきな。」
「いや待った。このまま行っても奴らは仕返しとばかりに追ってくるかもしれない。アルサーブ抱きかかえての飛行中に襲われたら対処しきれない。ここは俺もラプトリアに乗り、リサもユーリーに乗って反撃する。これでどうだ?」
竜使いが乗っていれば竜の能力は上がる。ラプトリアも疲れにくくなるだろう。敵を一掃して後顧の憂いを無くしておくことが賢明と言えた。
「例え追ってこられてもアタシが迎撃すればいいじゃないか。アンタらには指一本触れさせないさ。」
確かにそれも良策かもしれない。ユーリーの強さはこの目で見たばかりである。だけど竜二は別の理由で敵を一掃したかった。
「ユーリー。あそこにいる奴らは君の手下だろう?」
竜二は最初に倒したユーリーの手下達を指さした。
「ああ、そうだよ。それがどうしたと言うんだい?」
何を今更という顔である。どうやらユーリーにはさっきまで共に戦っていた手下の事は眼中にないようだった。ユーリーに似て中々しぶとくまだ息がある。ユーリーほど回復が早くないのだろう。まだ起き上がれないみたいだった。
「ここで俺らが飛び立ってしまえば、彼らは間違いなく敵にトドメを刺される。彼らは今まで君に従ってくれたんだぜ。君の手下が万全ならあんな連中に取るに足らないはずだ。これからユーリーはリサとの契約で下山するんだぞ。せめて彼らが今後、この辺一帯を守れるように回復するまで敵を退けよう。」
「アイツらは確かにアタシの手下だが、それは渋々従っていただけさ。アタシは今までアイツらと何度も何度も戦って今の地位を手に入れたんだ。アタシに忠誠なんざ無い。」
今まで何度も味方から背中を狙われる生活を送ってきたのだろう。生きるには強くなるしかなかったのだ。
「だったら尚更さ。どんな理由があろうとお前はこの中で頭になったんだろ?去るものとして残された者達に最後のケジメを着けるのが筋じゃないか?最後の最後でテリトリーを奪われた頭と汚名を残すことになるかもしれないが、それでもいいのか?」
咄嗟の機転により途中から「仲間の命を案ずる発言」から「名誉が傷つく可能性がある発言」に切り替えて彼女を煽った。本人に不快感が出るようなら無理に同じ話題で説得しようとすれば、益々意固地になる可能性があったからだった。
「ふむ……言われてみればその通りだねえ。共闘してくれるのは嬉しいがリサはアタシに乗れないんじゃないかい?」
名誉と誇りに関する論点攻めは功を奏したようでユーリーは頷いた。でもこれで共闘開始という訳ではない。竜に乗るには竜具が必要だった。さもないと騎乗中、掴まる物がなくリサは簡単に落ちてしまう。
「サイズ調整をしていないから少し時間がかかると思うけど、アルサーブの竜具を借りれば大丈夫だ。」
どうせアルサーブはしばらく戦えないのだ。ならば竜具を一時的にユーリーに装着しても問題ない。
「リサはそれでいいのかい?初実戦なんじゃないか?」
「や、やります!どうせいつかは乗るのです。それが早くなっただけの事…です………それに…ハルさんにはお世話になりましたから。」
竜二もリサの気持ちは痛いほど分かった。初実戦の時はかなり緊張した。リサは緊張しているようだが覚悟は出来ているようだ。リサの意を汲み、竜二は早速ユーリーにぎこちないながらも竜具を取り付けた。
その後、アルサーブをハルドルごと渓谷の隅に連れて行ったところで敵の第二陣が現れた。
「ようし!リサはまだ不慣れだろうから今度は俺達が先行するよ。少しずつでいいから騎乗のコツを覚えるんだ。」
「はい…が、頑張ります!」
竜二は騎乗しラプトリアと共に飛び立っていった。せっかく竜使いになれた。これ以上竜二達の足を引っ張るわけにはいかないとばかりにリサは急いでユーリーに騎乗する。
「…焦ることはないさ。ゆっくり乗りな。待っててやるから。」
「うん…ありがとう。」
リサは落ち着いてユーリーに騎乗し周囲を見渡した。
これが自分の相竜の背中からの眺めだ。見栄えは悪くても今後を共にする自分だけの大切な相棒。跨ってようやくユーリーと無事契約出来たんだなとリサは実感する。
『わあ………なんて見晴らしが良いのだろう。まだ空を飛んでないのに視界がずいぶん広くなったみたい』
今まで身長差で他人を見上げる事ばかりだったリサにとってユーリーの背中から見た世界はまるで別世界だった。周囲を見下しているかのように錯覚しそうだ。Aランクの竜でさえ一時は苦戦させた竜が今や留年生の自分の相棒なのだ。これだけの優越感、爽快感を今まで味わったことがあるだろうか?
リサの心の中から徐々に何とも言えない感情が湧き出て来た。
「ふ…ふふ……ふふふふ」
「どうしたい、リサ?アタシに騎乗出来て嬉しいのかい?」
「そうよな………全くもって嬉しいのう。妾に此処までの機会を与えてくださったのだじゃからな。」
「???」
ユーリーはリサの言葉遣いの変化に驚きを隠せない。リサは気にすることも無くユーリーの首に未だ引っ掛けられている鞭を外して装備した。
「さあユーリーよ。敵をなぎ倒してやろうぞ。二度と我らに逆らおうと考えぬように………徹底的にな!」
『くっ!さすがに数が多いな!』
敵陣目指して迎撃し、幾度となく敵を撃退するが次々と新手が現れてキリがない。このままではラプトリアも体力の限界を迎えるかもしれない。こうなったらユーリーと暫く交代して体力の回復を待ち、代わる代わる撃退していこうかと考えていた矢先、後ろからリサに声を掛けられた。
「ボスよ!下がられよ。妾が愚竜共の相手をしてくれようぞ。」
ぼす?わらわ?
竜二は聞き間違えたかと思い、目を見開いてリサを見た。リサの顔はさっきまでの純朴な表情とは打って変わり、冷徹にして不敵な表情になっており、本性では敵を嬲るのが楽しみだと言わんばかりに薄らと口元が笑っている。ユーリーに乗ったリサは鞭を両手で器用に装備して戦う気満々だった。ゆっくりとユーリーがラプトリアの前に進み出る。
「リサは一体どうしたんだ?」
「何かしらね…私にもさっぱり…」
竜二もラプトリアもただ困惑するのみである。ユーリーはこっちを見てクスリと笑った。まあ見てなさいと言わんばかりである。
「来るがよい雑魚共!妾が貴様らを纏めて屠ってくれようぞ!」
言うやいなや敵はユーリー目掛けて襲ってきた。するとリサは十二メートル弱の鞭を軽々と振り回し、一撃で五匹纏めてなぎ倒してしまった。五匹はまるで脳震盪でも起こしたかのように落下した。
何という威力だろう。鞭は本来、技を必要とする武器のはずなのにリサが使うと力も加味されているようだ。敵は怯むどころか殺気剥き出しでリサを攻め立ててくる。
すると今度はユーリーの触手攻撃とリサの鞭攻撃が合わさって次々と敵を倒していく。余りの連続攻撃の速さに円形状のバリヤが一時的に張られたかのような見事な連続攻撃だった。あんなに触手と鞭を動かしてよくぞまあお互い絡まったりしないものだ。
初戦から息がピッタリなようでユーリーが攻撃するとリサは別方向を攻撃したり、リサが攻撃をして敵の態勢を崩すとユーリーがトドメを刺すという何とも息の合ったコンビネーションである。
リサは疲れるどころか益々覇気を放ち、敵に全く手加減をしなかった。次々と敵の竜達が倒されていく。敵の消耗度はさっきまでのラプトリアとの戦いより早いかもしれなかった
「さあさあ死ぬがよいぞ。どうした!それで終わりかーい!?」
ビシッ
バシッ
ガシッ
鞭に打たれる高い衝撃音が響くたびに敵が次々と落下していく。
それも計算したかのように必ず一撃で二匹以上が当たる様に鞭を振るっている。一撃目に耐えて二撃目まで飛び続けることが出来た竜はゼロであり、ほぼ一撃必殺状態だった。
敵が背後を取ろうとしても
「無駄ぞ!妾の鞭に死角なぞないわ!」
射角の広いリサの鞭が容赦なく敵を襲った。
遂に増援が底を尽きたのか。新たな敵は現れなくなった。すると敵は遁走するどころか整列し一丸となって襲い掛かってきた。これなら鞭や触手で多少撃退出来てもいずれ間合いを詰められるだろう。敵も考えたものである。
だがリサはそんな敵を前にしても終始余裕ある表情を崩さずに左手のひらを敵に向けた。
「ふふふふ……この時を待っておったぞ!来るがよい愚竜共めが!」
リサと敵達の距離が残り一〇メートル程度まで近づいた時、敵達の頭部が次々と爆散した。頭が無くなった竜達はバタバタと落ちていく。危機を感じて方向を変えようとした竜もいたが、そういう竜はユーリーの触手の餌食になり、容赦なく体力と生気を吸われた。
大半の敵を首無し死体にした後、逃げようとした敵は残らずユーリーの光弾とリサの鞭の餌食になり、敵はほぼ全滅。
『あの爆発は……………魔法か?』
あのような現象は魔法としか考えられない。竜二が体得に苦労した魔法をあっさりとリサは体得して使いこなしていた。
「見たか!妾の魔法〝炸裂〟。貴様らにはちょうどいい手向けよ!」
終始、竜二は茫然としていた。自分の戦闘力があっさり出し抜かれたことや、鮮やかに敵を屠ってしまった事よりもリサの変貌ぶりに只々たじろいでいた。
「ボス。何を茫然としておる?早くハルドル殿を介抱しようぞ。」
「ああ………」
敵を一掃したリサが竜二に向き直りハルドルの介抱を促す。竜二はまだ困惑しつつもラプトリアを促してハルドルの下へ向かった。竜二の指示にも一瞬反応が遅れたところを見るとラプトリアも同じらしい。
降下してハルドルの傍に行ってみたら、どうやら流れ弾が当たったという事は無く、アルサーブもユーリーとの戦い以外で外傷はついていないようだった。
今度こそラプトリアにアルサーブを抱きかかえてもらい野営地に戻ろうとしたら、竜二は強い力で何かに抱き締められた。只でさえ戦闘後なのに、どうしてどうして救助が上手くいかない。
もう勘弁してよと思いながら背中を見るとユーリーから降りたリサが顔を竜二の背中にうずめて思いっきり抱き締めていた。体を震わせながらヒックヒックと泣いているのが分かる。
「お、おいおいリサ!どうしたんだ?」
初実戦であそこまで戦ったのになぜ泣くのだろう?もっと自信をもって良いはずだ。少なくてもさっきまでの彼女に「悲しむ」とか「哀れむ」という感情は無縁な気がした。
リサは竜二から顔を離して竜二を見上げた。リサの顔は涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃである。
「えぐ……えぐ…だって、だって怖かったんですぅ〜。自分は…ついに……遂に殺生しちゃいました〜!う、うう、うえ〜〜ん!!」
竜二は思わずラプトリアとユーリーと顔を見合わせる。ユーリーは頭を横に振り、ラプトリアは首を傾げている。
どっちの方が本当のリサなのだろう?もしさっきのリサが本当の性格なら接し方変えなくちゃならないかなと本気で考えていた。ところが今のリサは素朴で弱気な初めて会った時のリサに戻っている。
竜二達一行が本当のリサの人格がどっちか分かるのは帝都到着する寸前のときであった。
前話の前書きで感想はこりごりと書いてしまい誤解を招いたかもしれませんが、あれは執筆した感想です。皆様の感想がこりごりという意味ではありません。
皆様の感想や間違い指摘は随時受け付けてます。感想お待ちしてます。
ちなみにリサの変貌のモデルは「こち亀」の本田巡査……と言えばこの変貌ぶりにも納得ではないでしょうか?




