魔道学校
ハワードを含めたお互いの紹介をそこそこに期限に余裕がないという事もあってビボラと竜二達はビスガルドという町に向かった。
別名「書籍の町」とも言われるこの町には魔導士育成のための養成学校がある。魔導士が増えるという事は書物も必要になる。相乗効果として本屋がどんどん開業されていった。今となっては魔法に関係ない古文書や遺跡の石版や亡くなった偉人の手紙などのあらゆる重要な歴史的文学関連書が集まっており、帝国の学者は一度はここへ来ると言われる。
なぜこの町に来たかというとビボラの初の助言が「皇立魔道学校で捜しましょう。あそこなら見つけやすいでしょう」というものだったからだ。確かに誰も気付かなかったので魔道学校に行くのは賛成だったが、問題は移動手段だった。ラプトリアにビボラも乗せて移動した方が速いと思ったが、ハワードとハルドルが難色を示したことや馬車で一日で行ける距離であるという事もあり、馬車で移動となったのである。相竜達の鍛錬のためハルドルは帝都に残るとのことだった。
彼女は尚書高科学院に来る前は魔道学校に在校していたという。素質は十分で入学早々、瞬く間に急成長を遂げたものの彼女の素行に危機感を抱いた学校側が適当な理由を付け、一人前になる前に退学処分にしたというエピソードをハワードはひっそり教えてくれた。
いくらなんでも退学処分は酷い気がするが、それだけの事をやらかしたのだろう。何をしでかしたのかはハワードでも突き止めることが出来ず、真相は魔道学校のごく一部の関係者のみである。
その魔道学校への移動中
「なあビボラ。」
「お断りします。」
即拒否されて竜二はムッとなった。
「まだ何も言ってないだろ。」
「何度言われても私の意思は変わりません。」
竜二が頼んでいるのは従士の個人契約であった。本来、従士は国契約の従士と個人契約の従士とに分かれる。国契約とは皇族や省庁などからの指示で「騎士の従士をやりなさい」という命令のようなものだ。建前として国家に忠誠を誓っていることになり、特徴として騎士が誰であっても途中で辞任でき、自由度が高い。言うところの公務員扱いになる。騎士側から見ても給金は半額負担というリーズナブルなところが特徴。
これに対して個人契約は騎士と個別で結ばれる契約だ。これは神殿契約した竜使いしかできない。なぜならくっきりと残った刻印が必要だからだ。個別契約を結ぶと刻印が従士の手のひらにも刻まれる。騎士は利き手の手のひらだが、従士は利き手じゃない手のひらに薄く刻まれるのでそれで区別できる。
この契約を結ぶと竜騎士に服従の身となり自由度は減る上、騎士が戦死すると呼吸困難と全身の痛みや痙攣の発生、時には意識を失ったり、体に障害が残るといった短所がある。絶命する可能性も少なからずある。
その一方で身体能力をはじめ、数々の能力が大きく向上し、治癒力向上、固有魔法の体得、個人魔法は覚えはしないものの素質と才能が芽生える、睡眠時間の縮小化、疾病耐性、毒耐性、長時間の呼吸停止、酒を飲んでも酔いにくくなり泥酔しないなどの長所がある。
騎士側から見れば、給金は騎士(主)の全額負担になるが、途中解約が出来るといった長所もある。国契約から個人契約への切り替えは出来るが祖国を見限ったと周囲に思われることがあり、ハワードにはお勧めできないとハルドルは教えてくれた。これは国契約の従士が騎士の監視役も兼ねるというのが建前になっているためである。
(例えハワードが監視役であっても竜二にとっては特に後ろめたい事は無いので気にすることは無かったが)
多くの騎士は補士官と個人契約を結ぶとされる。戦う機会の少ない補佐官が身体能力や治癒能力が上がっても利点は少ないためだ。何より個人契約の上限数がある。
竜二の場合、Aランクなので三人と結ぶことが出来る。B・Cランクは二人、Dランク以下は一人である。これは竜騎士が相竜を降りると無防備になるため、聖教が定めた命を守る為の契約処置だという。
「尤も、これが原因でAランクの戦闘力が脅威となり、帝国はAランクを仲介拒否を申し出ていたのですが・・・」
「ただでさえ強いA級騎士が強くなった従士と組んで横暴になったと?」
「そうです。騎士に個人契約の補士官合わせて四人に相竜一匹となると戦闘力としてはちょっとした精鋭部隊ですから。」
以前にハワードから教授されたとき、やはり一長一短あるものだと竜二は実感したが、その時は軽く聞き流していた。一にも二にもラプトリアが強くならないことには話にならないと思ったからである。肝心の空で撃ち落とされたら如何なる従士もどうしようもない。まだまだ遠い未来の話だと思っていたのだ。それがこんなにも早く活用する羽目になるとは竜二にとっても意外だった。
現在ビボラは国契約の補佐官でもなければ個人契約の補佐官でもない。とりあえず竜二専属の補佐官だが後方支援士団の臨時団員という身分だった。つまり立場的には竜二を補佐する義理はあれど義務はないのだ。
竜二が彼女の事をよく知らないのに個人契約を結びたい理由は裏切られるリスクを無くすためだった。契約を結べば主と一蓮托生になるため容易に裏切ったり離反することは出来ない。自分を見捨てる事は無いだろうと思ったからだった。同時に補佐官と個人契約を結べば周囲に「自分の戦闘力は脅威ではない」とアピールすることも出来ると思ったからである。三人分も枠があるのだから一人くらい補佐官に枠を使っても問題ないだろうと竜二は思っていた。
しかしこれには両者の同意が必要であり、ビボラにさっきから頼んでも承諾してくれなかった。
「意思が変わらない理由とは何なんだ?」
「閣下の事をよく存じないからです。個人契約とは場合によっては一生を左右する選択。一目惚れの恋愛じゃあるまいし軽はずみな行動をする気はありません。」
半分は本当だろうが半分は嘘だと思った。確かに自分の将来に関わる選択ゆえの躊躇いもあるだろうが、契約を結ぶことで自分の命まで危ぶまれるのは願い下げなのだろう。
(俺がいまいち頼りないというのも理由の一つだろうけどな)
自虐しつつも個人の意志と自由は尊重されるべきと考える竜二からすれば、それ以上強くは言えず、話題を変えることにした。
「魔道学校にコネがあるとはいえ竜騎士の適性がある人いるのか?帝都では中々見つからなかったけど?」
「・・・他の鉱石に紛れ込んでいるような原石のような者は何人かいるものです。留年者も例外ではありません。」
就職浪人の事であろう。魔道学校にもいるのだろうか?竜騎士不足の現在、魔導士はそれこそ引く手数多のはずだ。一人前でなくとも戦列に加えたいのではないかと思った。
「素質はあっても開花しない者、開花しても上達しない者、他人を殺すことや血を見る事を克服できずに難色を示す者、素行不良な者、ただ単に成績が規定に満たせていない者などが卒業できず留年しているのです。」
魔道学校は尚書高科学院と違って魔道士になれないと卒業することが出来ない。なれるまでは留年することになる。三年制で留年上限年数は二年。魔道学校は学費が完全免除で、無事に魔道士になれれば好待遇で初給金は竜騎士ほどではないが一般兵より高い。意外にも入学審査は筆記試験より実技試験が重んじられ、特に適性と素質が完全重視の入学基準になっている。それゆえにスラム(貧困街)出身でも合格できる見込みがあり、多くの庶民の憧れになっている。
尤もそれは卒業出来たらという話であり、何らかの事情があって留年上限までに卒業できなかったり、中退したものは高額な学費を学校に納めなければならない。留年分の学費も支払わなければならない為、魔導士になれないと相当な金額になる。卒業できないと笑えない現実が迫ってくるのだ。
元々、魔法の素質があるから魔道学校に入学できる。竜騎士としての適性はともかく、魔法の素質があるなら一般人より竜使い候補を見つけやすいだろうというのがビボラの出張であった。
魔道学校に着くとビボラは在学経験を生かして校内を進み、留年者達が集まる修業棟に向かった。魔道学校は誰だろうと差別せずに校内に入るには厳しく管理されていることで知られており、尚書高科学院以上に厳しいとされる。ビボラは一人で窓口に行き早々と手続きし始める。受付の人がビボラを見るやいなや口をあんぐり開け、目を見開いた後、すぐに正常に応対し、慌てて見学手続きを済ませてしまった。予約なしの当日校内立ち入り許可は極めて異例だとハワードが耳打ちする。
このことから彼女の悪名は未だ風化してないのだろうか。それとも本当に奇策でも使ったのだろうか。竜二の探究心がそそるが従士になっていない以上、彼女への詮索は控えることにする。
その後、三人は学校敷地内に入り、デボラを先頭に奥へ入っていく。すると学校から離れた場所に少し大きな建物があった。市民体育館クラスよりやや小さいくらいだろうか?窓に洗濯物が見えるところをみると学生寮かもしれない。
「ここが修業棟です。今は授業中なので在校生はここに居ません。居るのは就学を終えた留年生です。ここからは閣下が吟味なさいませ。ここにいる連中は時間が余っているはずです。閣下の時間の許す限り、時間を割いてくれるでしょう。」
「へ?一緒に探すの手伝ってくれないの?」
「予約ないのに見学できるよう手配したではありませんか。それに留年生であれば私の事を知っているかもしれませんので・・・」
「・・・分かった。校外で待っててくれ。」
自分の事を知っている人間がいると都合が悪いのだろう。こういう事もあって個人契約を了承したがらないのかもしれない。竜二はビボラと別れるとハワードと共に修業棟に入った。入ってみると学校の廊下と何ら変わらない内部があった。廊下を歩いていくと部屋が点々と並んでおり、部屋の中には留年生たちが魔法の練習をしていたり魔道書を読んだりして自己鍛錬に励んでいた。
少し歩くと本が大量にある大きな部屋があった。図書室なのだろう。何人かの留年生がいたのでここから竜使い候補を探すことにした。「ここは部外者立ち入り禁止で」という注意を見学許可証と軍章を見せて黙らせたあと、早速アンゴラボールを使って適性を調べた。結果は半数近い留年生に適性があった。魔法の素質があれば体得するためのステップが楽になると聞いていたが、なかなか竜騎士の適性に直結していた。
『ここはこの魔道学校を提案し、即日見学手続きをとってくれたデボラに感謝ってとこか』
だが、現状で何人も引き抜くわけにもいかない。竜使い候補を雇ったからといってそれで終わりではない。相竜も探さなければならない。エバンスの条件は[竜使い候補を加入することではなく竜使いを加入すること]だからだ。
これ程適性者が多ければ後日でも雇用することは出来る。とりあえず今は選りすぐりの竜使い候補を探すことだった。
体力の消費は多くなるがアンゴラボールに注ぐ魔力を多めにすると適性の強弱も調べられる。この棟内くらいの広さなら中心部で大半の生徒を調べられるだろうと一回使ってみると、予想は的中し全ての留年生を調べられた。六人程竜二に引けを取らない上位の竜と契約できると言えそうな最高の適性を持つ者を見つけた。
この六人と面談して最終的に誰にするかを決めることにした。
面会の約束をしているわけではなく、半ば突然押しかけたのに呼んでもらうのも気が引けたので一人一人の居場所を突き止めて直接出向く事にした。雷鳴将軍自らが自分達の部屋に赴いて来たことに留年生達は戸惑いながらも恐縮しつつ応対してくれた。
ハワードを書記に早速面談を行う。ちなみに容姿を一番に重視してた事は秘密である
質問事項は名前、出身地、魔道学校に入るまでの経歴、趣味、取り柄、友好関係、両親、兄弟などを質問した。ここで重要なのは家庭環境である。
本人の性格も重要だが、育った環境次第では当人の人格形成に大きく影響しやすい。
次に重視したのは将来の夢である。「ゆくゆくは魔道士になる」「卒業こそが第一」と答えた人は論外。十年後、二十年後の未来をしっかり思い描いていれば、その人の想いはぶれない。魔道士になった暁には「これをしたい」「あれをしたい」という明確な希望を持っている人を竜二は探した。
五人程面談してみると留年生だけあって癖のある学生が多く、部下にする決意に至らない事が浮き彫りになった。めぼしい人はかろうじて一人見つけたが、すごく欲しいと思ったわけではなかった。どうしても見つからない時のキープといったところだろうか?何より竜二が一番重視している容姿とはかけ離れていた。先が思いやられると心でつぶやきながら最後の一人に会うことにした。
最後の一人は自室にいた。
修業棟の個室には戸が無いため中が丸見えである。中を見てみると多くの観葉植物があった。園芸が好きなのか大量の花や大きな植物や鉢植えが部屋にあった。まるで個室全体が植物園のようだった。植物の向こうに隠れているのであろう目的の人に声をかけてみた。
「すいませーん。誰かいらっしゃいますか?」
「は・・・はい!どちら様でしょうか?」
子供っぽい明るい女性の声が聞こえた。観葉植物の中から女性が出て来た。土いじりしている最中だったのか服が土で汚れている。
「え!?あ・・・あー私、松原竜二と申します。お話する時間を頂きたいと・・・思いまして。」
竜二が驚くのも無理はない。目の前に現れたのは確かに女性だが、すごく小さくて幼げな美少女だった。魔道学校にいるからにはそれなりの年齢だろうが、中学生の制服を着ても違和感なく周囲に溶け込めそうだった。真ん丸の顔に黒髪のダウンスタイルのツインテール。ぱっちりとした眼、鼻や口は整っていて癖が無い。細身の体だが胸や尻は年相応にある。
だが突出すべきは身長であった。元の世界での会社内で一五三センチの女性社員がいたが、それよりもさらに低い。目算ではあるが一五〇センチあるかどうか。一四九〜一四八センチくらいだろう。
『顔もさることながら背丈もかわいい!容姿だけなら正に俺が探していた人材だ!』
竜二が重視していた容姿とは身長であった。
基本的に空では飛竜が主役になりがちだが、だからと言って騎士が不要かと言われればそんなことはない。騎士が騎乗している時の方が騎乗していない時と比べて力を引き出しやすい。騎士から離れれば離れるほど相竜は力が出しづらくなる。全力で戦えなくなるということだ。しかし騎士は飛行中、出番は少ない。遠距離射程武器や投擲武器を使いこなせるならまだしも、竜二のように武器を使いこなすこともできず、攻撃に生かせそうにない魔法しか体得していない騎士は重石にしかならなかった。
騎士を近くで降ろして相竜の好きなように戦えばいいじゃないかと思うだろうが、騎士が死んでしまえば相竜も死んでしまう。そのため重石であっても相竜は騎士を乗せて戦うのである。(尤も絆が芽生えた竜があからさまに竜使いを卑下することはないが)
これは竜二の推測ではあるが、重石である騎士が軽ければ軽いほど相竜は力を発揮できるのではと思った。レーサーやジョッキーやスキーのジャンプ選手や競艇選手などは体重が軽い方が有利だとされる。慣性の法則においてもその負担はかなり緻密で人間の体重が一キロ軽くなるだけで結果は違うという。
とはいっても神殿契約をすると騎士は肉体補正の恩恵によって筋肉質な体になり、ある程度以上は減量が難しくなる。ラプトリアがあれほどの飛行力と戦闘力を発揮できるのは、上位の竜としての本来の素質や能力もあるだろうが、肉体補正の恩恵を受けてない竜二の体重の軽さが引き出せているのではと考えていた。もし竜二の予想が当たっていたなら戦闘中、何も出来ずに役に立っていないような竜二も他の飛竜騎士に劣らずに役に立っているともいえる。
これを思いついた竜二は苦笑いするしかなかったのだが…
当然その器となる身長が低ければ低いほど体重も軽くなるし、空気抵抗も少なくなる。そのため竜二は低身長で低体重の竜騎士候補を探していたのだった。キープに指定していた留年生は身長が一八〇センチ近くあったので気乗りしなかったのである。
目の前にいる少女ともとれる女性は、外見の問題は全く問題なかった。少なくとも確実に竜二より体重は下回っているだろう。
「松原竜二さん…ですね?私はリサと申します。…えと正規軍関係者の方でしょうか?」
竜二が軍服姿なので仮に言ってみただけなのだろうが、軍人に恐れを抱いているのか、生来臆病な性格なのか不明だが何処となく怯えている様に見える。竜二は笑顔を作ってあくまで柔らかく応対した。
「これは失礼しました。私は将軍位の…」
身分を含めた自己紹介と目的を話すと彼女は慌てふためいて自分の服が汚れているのに気付き、慌てて着替えようとしたが、竜二は制止して強引に面談を始めた。リサは緊張しているのか委縮しているか中々進まなかったが…
面談を続けて話を聞くところによるとリサは貧困街の出身で四人兄弟の長女。父は日雇い労働者。母は病弱だが育児をしながら洗濯屋で働いているという。学校にもろくに行けないほど貧しかったが、少しでも家族に楽をさせたいとの想いから独学で勉強し、役所で働くことを目指していた矢先、採用試験の時に魔導士としての適性が認められた。進路の選択を迫られるが悩んだ末、魔導学校の入学を決めたという。
理由はろくに学業を修めていない彼女にとって役人の採用試験は難しくて受かる可能性が低く、結果を見るまでも無く合格するとは思えなかったからだった。このままいつ合格するとも分からない試験勉強を続けるより魔導学校に入って魔導士を目指した方がまだ望みがあると思ったからだという。
だが三年間の在学期間において彼女は全く魔法を覚えることは出来なかった。開花どころか素質の一片も見せず、適性があるのかどうかさえ疑わしいと周囲から嘲笑われたり苛められたりして常に一人だったという。もちろん今もなお魔法の開花には至っていない。
「しまいには魔導士学校に入るために審査官の人に性交渉したのだろうとまで言われたんです…」
「それは酷いな。それでもめげなかったのは家族のためかな?」
「はい…弟たちのためにも諦めるわけにはいきませんでした。三年以内に魔法に開花すればまだ卒業の望みはあります。魔導士になって家族を養おうと。」
「兵士になろうとは考えなかった?徴兵令は出てなくとも志願兵の門戸は広い。兵士なれば一兵卒でも給金がそこそこ貰えるはずだけど?」
帝国兵士の給金は同じ一兵卒でも他国兵士より高い事で知られている。スラムの中で育っている子供の中にも家族のために規定年齢に到達後、兵士に志願する者も多い。
「戦場において女性を目下扱いする傾向があります。何よりも自分は規定身長を満たしていなかったんです…」
軍隊となれば男尊女卑の温床だろう。アウザール全体がその傾向があることを竜二は感じ取っていた。それでも女性兵の採用が行われている分、帝国は幾ばくか良い方かもしれないが、肩身の狭い想いするのは否めない。
それでも入隊できるだけマシだろう。一般兵も身体検査がある。彼女の身長は兵士に志願することも出来ないようだ。魔導学校への決断は決めるべくして決めた道だったのだろう。
「君の歳は?」
「20です。」
「!じゃあ、もうすぐ留年上限?」
「はい…そうなんです。」
魔道学校は高校と同じ年齢で入る三年制学校だ。20歳という事はもう後がないという事だ。
「だったら、もっと余裕が無いはずだろう!?なぜ土いじりなんかして園芸なんか…」
「魔法の開花は自身を窮地に追い込んだ時と好きなことをしている時が最も芽生えやすいからですよ。ほら松原さんもジキスムントさんとの鍛錬でやったでしょう?」
今まで面談を見守っていたハワードが発言する。
そういえばそうだった。あの時はひたすら痛めつけられ、そのあと休みたいと言ったらそれを思い描けと言われたんだった。デニスを殴った時は魔法が発動されていた。デニスにぎゃふんと言わせたいという願望が体得を早めたのかもしれないが。
リサは園芸が好きで土いじりをしてたのだろう。それで開花を促していたのだ。
「ごめん。魔法の事まだ分からなくて…」
「そんな…雷鳴将軍閣下が頭を下げるほどの事ではありません。それに好きな事とは言っても毎日花壇に行っているわけではありません。今は独学と園芸を交互にやって自己啓発に励んでます。」
「…もし魔導士になれた暁には十年後、二十年後何をしたいかな?」
もはや返答は「家族の生活を支えたい」と決まっているようなものだが、あえて聞いてみた。彼女を部下にするにしても彼女の夢だけは聞かなくてはならない。将来の夢が分かれば、その人の人格がおおよそ見当がつくからだ。
「最初は給金で家族の面倒を見たいと思いますが・・・ゆくゆくは自分で孤児院を営みたいです。」
「それはなぜ?」
「私の育ったスラムには親がいない孤児がたくさんいます・・・私も貧しいですが両親がいる分、恵まれている方です。そういう子どもは盗人に落ちるか兵士になるかしかありません。それ以前に成人する前に死ぬ子供も多いのです。大人になるまでそんな子供達の世話を出来る場所を作りたいです・・・」
「子供は好きかい?」
「はい!」
今までぎこちなかった態度が一変して明るくなった。恐らく本心だろう。確固たる将来の夢を描いているリサを見て竜二は心に決めた。
「リサさん頼みがある。俺の隊に入ってほしい。俺が君を竜使いにして見せる。そうすれば魔法も覚えられて言う事なしだろう?」
「え?え?自分をですか?」
どうやらリサは一人称を「自分」と呼ぶらしい。
「竜使いになるのはいやかな?」
「いえ・・・ですが自分は劣等生です。今もって何も出来ません。自分なんぞでは閣下の足を引っ張ることになると思います。閣下にはもっと有望な方がいらっしゃるかと・・・」
リサにとっては嫌なわけがない。竜騎士に、いや竜騎兵になれれば給金は魔導士より高い。戦死する可能性はあるが、それは魔導士も同じだ。まして〝雷〟将軍直轄で働けるのだ。未来の展望だって明るい。
だが今まで留年し劣等生の代表格である自分が役に立てるとは思えないというのも事実だった。自分が足を引っ張ったがために味方が戦死してしまうようなことが怖かった。
「それをこれから確かめたいんだ。このまま授業料の支払いに怯える毎日を過ごすより、俺に君の体と命を貸してほしい。何事にもまずやってみることが重要だよ。大丈夫だ。きっと上手くいくって。」
「は・・・はい!よ、よろしく・・・お願いします。」
竜二の態度に圧倒され、リサは戸惑いつつも承諾した。
心の中では、自分を必要とされる事がこんなにも嬉しいことなのだと思い知りながら。
キツかったー・・・
下手に人事採用のスキルを披露して就職活動中の学生の読者様から「内定取れないじゃないか」とクレーム来たらどうしよう。けど人事課の経験を全く生かさないと面白みは無いし、どこまで記述するか線引きが苦しかったです・・・
ここで就活中の学生さんにアドバイス!
もし面接会場で面接官と学生が腰かける椅子の位置が離れていたら要注意!
学生さんの声が聞き取れるかを調べている証拠です。どんなに能力があってもコミュニケーション取れなければ意味がないからです。
一回でも面接官に「もう一回言ってもらえる?」と聞き返されたら黄色信号です。小声の人や早口の人、舌足らずの人や滑舌が悪い人はご注意を。




