表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンライダー立身伝~銀翼の死神~  作者: 水無瀬 凜治
間章 竜騎士就任まで
20/88

策動

竜二が神殿契約してから四日後


「決定だな・・・」


竜二は目の前の書類を見た。

帝国側からの契約通知書である。

そこには、正式契約を認める旨が書かれている。

神殿契約後、三日後にはもう届いたそうだ。なんでも帝国軍の飛竜騎士自らが伝書を運んできたという。

運んできた者は兵卒であろうが、それにしても異例だと言われた。

(さすがに他国へ飛ぶだけあって武装はしてなかったらしいが・・・)


それ程、期待されていると言うことか。いやラプトリアが、かな?

ラプトリアがいなければ現状、俺は足手まといも甚だしいわけだし・・・・・・

そう思うと怖くなる竜二であった。

かといって、自分が先走ったことをしてラプトリアに迷惑をかけるわけにもいかない。

自分が死ねば、ラプトリアも死ぬのだから。



あの覚醒訓練のあとは結局、翌日の昼近くまで爆睡していた。

さすがに水分が切れてきたのか目が覚めたときは、喉がカラカラだった。

目が覚めると体の痛みは消えていた。どうやら、ジキスムントが魔法を使って治療してくれたらしい。

うーん、優秀だ!と心から思う。

ジキスムントに礼を言った時、もう一つくらい魔法を覚えるかもしれないので訓練続行しようと提案してきた。億劫だったが続行しない事には強くならない。再び兵士長と修業再開で罰が悪かったが、暴力でお返しはいけないと思ったのでお詫びした。すると、


「いや、どうやら見くびっていたようだ。こちらこそすまなかった。今度は全力でサポートするよ。」


と低姿勢になった。そんなに痛かったのかな?

それとも魔法治療は後回しにされて俺より苦痛に耐える時間は長かったのかな?

意外に兵士長は良い奴かもしれない。

これくらいで他人の評価を変えてしまう竜二も結構単純だったりする。


しかし結局、丸一日費やしても新たに体得出来なかった。

ジキスムントから


「現状では覚えられるのは、その魔法だけのようですね。」


と言われた。どうやら情けないことにAランクにも関わらず、一つだけしか体得できないらしい。

Aランクならば最低二種類以上の魔法を体得する。通常最初に二つ体得できない場合、経験を積めば、また覚醒するそうだが、これでは自分はラプトリアから降りたら一般兵以下ではないかと自己嫌悪にかられる。何せ異世界人だけあって、この世界の常識が通じない典型だ。一種類の魔法だけで終わってしまうかも・・・・・・


そう思うと不安を禁じえない竜二であった。


二人は次にラプトリアのスキル・アビリティ覚醒鍛錬に移った。

その間、竜二はコツを少しでも掴むため、魔法の自主訓練を行うことになった。

魔法は基本的に体力を消耗する。高威力の魔法になるにつれ消耗度は高い。しかし、体力は少し休息すればある程度回復するものだ。体力が尽きない様に魔法の威力を調整することを覚えることが竜二の至上命題だ。強化という魔法は発動条件自体は簡単なのだが、力のさじ加減に手を焼いた。少しでも手を抜くと全然効果がなかったり、少し力を込めると体に大きな疲労が襲う。


本来、強化という魔法は会得するのに難しいわけではなく、経験を積めば多くの魔導師が使えるそうだ。中級者クラスといったところかな?竜二は推測した。

時間を掛けて何度も何度も挑戦するうちに、また魔法力使い果たし気絶する。気づくとまた布団の中で朝を迎えていた・・・


「はあ~前途多難だ・・・」


朝食取りながら溜息しか出ない竜二であったが、一方で気づいたことがある。

この強化という魔法は自分に対しては効果がないのである。てっきり自分の肉体を強くしてくれるのかと思いきや全く効果がない。ラプトリアに使っても効果がなかった。

試しに兵士長に対して使わせてもらっても、兵士長の肉体は変わらずだった。

効果があったのは、武器や道具など非生命体に対してだ。道具の性能を強化したり、武器の強度を上げたりできる。

これはこれで拾い物な魔法だと思った。何せ武術の心得がない竜二にとって敵の攻撃を防いでくれる防具は生命線だ。その防具を強化できるのだから、嬉しい限りである。

しかも一度強化すると強度は、そのまま永続する。生還率はこれで上がると思えば悪くない魔法といえよう。

ジキスムントから聞いてみると、「人間や竜のような生き物にも効果があるはずですがおかしいですね」と首を傾げていたが・・・・・・

さすがに呆れたようなそぶりは見せなかったが、ジキスムントも内面では、竜二に呆れているに違いなかった。

とはいえ効果がない以上、現実として認めなければならない。

それらを念頭において翌日もひたすら練習に励んだ。昼過ぎには疲労が困憊しない程度に使いこなせるようになった。

竜二が鍛錬場所に行ってみるとラプトリアの方もようやく終わったようである。

ラプトリアが嬉しそうに駆け寄ってきた。


「竜二、良く見てて!」


そう言うと、ラプトリアは突然消えた。


え?ラプトリアは・・・?

周りをキョロキョロして探すと


「うわ!」


至近距離にラプトリアが現れた。


「どう?ステルスアビリティ使いこなせるようなったでしょう?」


「そ、そうだね・・・まさに完璧のようで・・・」


竜二はまだ尻餅をついたままだ。見慣れたとはいえ、さすがに数センチ前に成竜が現れれば驚きもするだろう。


「マスター、これでラプトリアもステルスアビリティを使いこなせるようになりました。やりましたね!」


「う、うん感謝するよ。」


竜二は起き上がりながら返事をする。


「・・・ところで質問なんだけど、このアビリティについて細かく教えてくんない?パートナーにも見えないだなんて予想外だった。」


敵に視認されないとはいえ、竜二はてっきりパートナーである自分には見えるだろうと思っていた。

これでは戦闘中に連携なんてとれるわけがない。


「そこは問題ありません。すでに書記官長から借りた資料とラプトリアとの訓練課程できちんと調べておきました。これから説明します。」


ジキスムントはすでに調べてくれたようだ。うーん、さすがだな。

要約するとこうだ。ステルスアビリティ発動中はパートナーでも見えない。だが五感体感を行うとうっすらと半透明になって見えるようになる。ラプトリアが隠蔽(ステルス)状態の時に竜二が騎乗してたり、ラプトリアの体に触っていると竜二もステルスの恩恵を受けて見えなくなる。

竜二の場合は魔法を連発すると過労で倒れることになるがラプトリアの場合、アビリティを発動しても体に負担はほとんどない。自由自在に使いこなすことが出来る。


羨ましいなー。

けど、ステルスドラゴンは皆そうなのだと思えば少しは劣等感は和らぐというもの・・・とはいえ、やっぱり反則だと改めて思う竜二であった。


残念ながらラプトリアもそれ以外のスキル・アビリティは覚えられなかったようだ。

兵士長から聞いた話では、それ程心配する必要はなく、竜の場合スキル・アビリティの覚醒は意外に簡単に起こるのだという。多くの竜使い達も「気が付いたら覚えていた。」と語るケースが多いのだそうだ。

しかし、それも竜使いとの絆と好感度と戦闘経験を積んだらの話である。結局は幾度も乗りこなしていくしかないのだ。時間は投資すべきなのである。


竜二もラプトリアも鍛錬続きで疲れていたため、その日の午後は休息になった。

そして翌日の今日、目が覚めて朝食後に神官長に呼び出され契約通知書を受け取ったという訳だ。





三日以内に帝都に来るようにと書かれている。帝都までは空を飛んでも一日は掛るらしいので出発は明日か明後日だ。今日受け取って二日以内に出発とは急だが仕方ない。ここにいつまでも居座るわけにもいかないのだ。




最後の挨拶回りに行くか・・・


出立の準備をし、関係者各位に挨拶に向かう。神官長はやめた。通知書を渡されたときに既に今までの礼をしたからだ。

どうも苦手だったというのもある。

一番お世話になった兵士長の部屋に出向くも兵士長の部屋に行っても留守だった。昨日は竜二君に時間を割きすぎて仕事が溜まってる。とか言って捨て台詞を残して行ったにもかかわらずである。


あの兵士長、本当に仕事溜まってたのかな?・・・ひょっとしてかなりの皮肉屋か?

ジキスムントの前では大人しいのに、俺の前では饒舌になっている気がする。強者に靡くタイプなんだろうか? 良い奴なんだか悪い奴なんだかさっぱりわからん。


まあ、もう少しの付き合いだから良いんだけども・・・



続いて書記官長室に向かった。次に世話になったのが書記官長だからだったのだが入室した途端、事件は起こった。



「失礼します。書記官長、入りますよー」



竜二が入室するも返事がない。こっちも留守か。

諦めて帰ろうとしたが、部屋の奥の方に人間の足がかすかに見える。何かあったのかもと駆け寄ると竜二は言葉を失った。





書記官長が倒れていたのである。

すぐそばには書記官長の首が転がっていた・・・





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ