主人公目覚める
竜二は目を擦りながら、ようやく目を覚ました。
あれ?ここは?
竜二はベッドで寝かされていた。
えーと……………
彼は頭を整理する。
確かサバイバルゲームに向かっていたら、
夜が来て・・・急に瞼が重くなって・・・
そこから先は覚えてない。
貧血かな?
そんなこと今まで無いのだが。
ベッドに寝かされているということは、
きっと誰かが休憩室にでも運んでくれたんだろう。
部屋には誰もいないようだ。
とりあえず自分が目を覚ましたことを伝えて、気を失ってからの顛末を聞こう。
竜二は起き上がる。
部屋には木製の机と椅子。その脇には屑籠。窓が一つにベッド一つ。奥に木製ドア。
それだけだった。
「ずいぶんシンプルだなー。というよりレトロすぎないか?」
机・椅子・窓・ドア・ベッド・さらには床まで年数を刻んで何世代も
見届けてきたような見事な光沢を放っている。
古めかしいが丹念に掃除しているのかホコリ一つない。
骨董品収集が趣味なのか?
創業何百年とかの老舗旅館にでも運ばれたのかな?
靴を履いて立ちあがろうとしたとき、ドアが開いた。
「良かった。気がついたんですね?」
18歳くらいだろうか?
金髪のロングヘアの女性がポットを乗せたトレイを持って入ってきた。
ナチュラルロングっていう髪型だっけ?
艶やかな髪だが黒髪が混ざっており、綺麗な金髪という訳ではない。
ハリウッド女優のような見事な金髪は在日外国人でもなかなか見かけないので
当然と言えば当然か。
程々の美人である。
ハッキリ言えるのは明らかに「西洋人」の容貌であり、
日本人いわゆる「東洋人」の容貌ではない。
「いえ。たった今、目を覚ましたんです。
あなたが私を運んでくれたんですか?」
「はい。正確には私と父が一緒に運んだのですが。」
「それはありがとうございました。手間とらせましたね。」
「いいえ。意外に軽かったですよ。」
クスッと笑いながら答える。即答だった。
「あ、あ、このとおりの体型ですからねえ。ははははは・・・」
痛いところを突かれた感じだった。
竜二は、やせ型の体型で少し気にしていた。
いわゆる優男である。
「お水持ってきたんですけど、喉渇いてませんか?」
「あ、いただきます。ところで此処はどこでしょうか?
私が気絶してからの経緯を教えてもらえますか?」
「え?やっぱり御存じないのですか!?」
銀色のグラスに注いだ水を手渡しながら、少女はそう答えた。
「ええ。歩いていたところで突然気を失ったもので・・・・」
「・・・・そうですか。
では、わたしが知っている限りでお伝えしましょう。」
「いや。説明役は私が引き受けよう。」
突然、中年の男が入ってきた。荘厳さを感じさせる男である。
「父上!」
え?父?この人が?
またもや西洋人の容貌の人が来た。
「早急に彼の素性を聞きたいのでね。
私の名はエドガー。エドガー・ヘディンだ。
この子は、リリアという……私の娘だ。」
リリアと紹介された女性はペコリと頭を下げた。
「はじめまして。俺は松原 竜二といいます。」
竜二も頭を下げながら自己紹介した。
「マツバラ リュウジか。
いくつか聞きたいことがあるのだが構わないかね?」
「ええ、構いませんよ。何なりと。」
竜二も聞きたいことがあったが、ベッドに運んでもらった手前、
相手に質問する権利を譲ることにした。
それからは、質問のオンパレードであった。
目が覚める前は何をしてたのか。などなど自分の事もさることながら
家族に関すること、生まれた国に関することや
通貨のこと、果ては大まかな経済や文化にまで話が及んだ。
まるで初めて日本人を、いや初めて外国人を見たかのように・・・・
二人ともふざけてるのかと思ったが、表情は真剣そのものである。
しかし、外国語が話せない竜二と日本語で会話している。
それも訛りは一切ない。
これだけでも日本を知らない事は無いと思うのだが・・・
やがて長い質疑応答が終わり、
一呼吸おいて
エドガーは顔をこわばらせたまま言った。
「======どうやら君は外国人ではないな。完全に異世界人のようだ。」
「!!」
竜二の今まで抑えてきた聞きたい事項がさらに増えた。