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ドラゴンライダー立身伝~銀翼の死神~  作者: 水無瀬 凜治
第1章 異世界召喚編
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ドラゴンライダー

その日の夜、竜二は宿をとって寝室で物思いにふけっていた。


上位ドラゴンは予想してたがAランクは予想外だった。

そして、ラプトリアの能力を聞いた時は驚いた。


あのあと、支殿内部の図書室に行き、自分なりに調べてみたが、それらも加えて整理するとラプトリアはステルスドラゴンという種族で全ての敵から感知も察知もされずに近寄ることができるという。

現在はまだ、ラプトリアは成熟しきってないため、隠蔽能力(ステルスアビリティ)を使いこなせてないが、もし神殿契約を行えば習得はできるだろうと言われた。


竜は種族によって固有スキルと固有アビリティを持っている。だが竜使いとの絆や相性、竜自身の素質、両者の性格などによって覚醒時期が異なる。全種族に言えることだが、全てのスキルを覚醒するとそれこそ大化けする事も珍しくない。



ステルスドラゴンは近接戦闘に非常に優れており、敵に気づかれないように近づき、近接攻撃で確実に仕留める戦闘スタイルを最も得意としているのだそうだ。

竜の象徴とも言える吐息(ブレス)は吐くことはできるが、余り強力ではない。

それでもアースドラゴンに比べればマシらしいが・・・

打たれ強さも優れているわけではない。体力も平均的。

だが飛行能力はAランクの竜だけに結構高いかと思いきや、良い意味で竜二の予想を裏切り、同ランクの中でも突出しているという。



「暗殺者か忍者みたいな竜だ。」と、なまじ感動ともいえる感情が湧き出た。

最凶どころか最強ではないか。

本当に反則だよな・・・・・

まるでサッカーでレッドカードを無制限に出されても試合を続行できる選手をスカウトした気分だ。

ラプトリアが敵じゃなくて本当に良かった・・・・


ドラゴンキャッスルでラプトリアのお祖父さんを見つけられなかったのはステルスアビリティのせいだったのか・・・・ナイトスコープが無いとどうなっていたことか・・・


さすがの竜も体温だけは調整できなかったってわけか。

竜って爬虫類の外見だが変温動物じゃなかったんだな・・・・・・


嬉しい反面、逆に恐怖の感情も抱いた。

ラプトリアが強くなればなるほど自分が暗殺される可能性が高くなるのでは?

ラプトリアが強くなればなるほどラプトリアが酷使されるのでは?


そういう疑念が晴れなかったからである。


自分は神殿契約に踏み切っていいのだろうか?

踏み切りたいのは山々だが、そういう思いが邪魔して物思いが続いており、中々寝付けないでいた。


はあ、ジキスムントあたりが勇気づけられる言葉一つや二つ喋って、俺の背中を押してくれないかなあ?


普段は、夜になるとジキスムントは別室で休息する。「性奴隷でもないのに奴隷が主人と一緒に寝るのはおこがまし過ぎる。」と言われたからだ。


竜二からすれば宿泊費が浮くので相部屋にすることを命令することもできたが、こういうときでもないと一人になれないと思ったので、承諾した。

よってジキスムントはここにはいない。


ここにいても始まらないか。・・・・あそこに行ってみるかな。


竜二はベッドから起き上がって部屋を退室した。






その頃、ジキスムントは宿の隣の酒場のすみで兵士長と会話していた。

兵士長も仕事が終わったのか、私服で地味な衣服を着ているので目立たない。


「さすがジキスムント殿が認めたマスターですな。特Aランクの竜を見つけ、さらに認められるとは、いやはや私の眼は、まだまだ節穴のようです。」


「・・・・・・そうだな。」


「?・・・余り嬉しそうじゃありませんね?主人が目的を達成できたというのに。」


「我がマスターは、先行きが不安なようだ。強すぎる竜と契約してしまったがゆえにな。一体どこの国へ配属になるのか・・・」


おそらくマスターは、これから政治の道具に扱われていくかもしれない。自分との力のギャップに耐えられなくなるかもしれない。

だがジキスムントにとっては、それは二の次であり、竜二の竜騎士としての仕官先の方が心配だった。


ラプトリアが特Aランクなのはジキスムントにとっても予想外であった。

竜二が竜騎士になりたいとするなら配属国が懸念される。竜二とラプトリアが戦闘経験と知識を積み、絆が深まって連携強化されれば、竜二が仕官した国は驚異的な戦闘力を得るだろう。聞くところによると竜二は元の世界では独身だったという。恋人がいるとも聞いていない。それでいて、この世界では知り合いは自分を含め、ごく少数。

つまり、守るべきものが無いということだ。謀略次第で一から守るべきものを仕立てあげること(・・・・・・・・)も出来る。現在までの付き合いから分析するに竜二は真面目で、なかなか義理堅い。最初に配属される国が重要になる。竜二は最初に配属された国に義理を果たそうとするだろう。

どこの国の竜騎士になるのだろうか?

願わくば我が祖国へ斡旋してくれまいか?

今のジキスムントの切なる願いだった。





竜騎士になるにあたって神殿契約した竜使いの配属先は神官長にゆだねられている。

いわゆる竜使いが竜騎士になるための就職先を仲介することになる。

これによって竜騎士の数や質の偏りを無くし、拮抗させて表向き平和にしようという訳だ。

それほど本契約(神殿契約)した竜騎士は強力なのである。

しかし神官長も人の子、普段から懇意にしている国や便宜を図ってくれる国には融通を聞かせたいと思うもの。将来有望な竜使いなどは神官長の私情で配属先が変わることも多いという。

勿論、表面上は公正に決定していると言い張っているのだが・・・・・・


ちなみに本契約すると神官長が仲介した、いずれかの国で必ず竜騎士に就かなければならない。紹介した国から断られた場合は、また別の仲介した国へ就かされる。

理由として一つ目は各国とも本契約した竜使いの存在は喉から手が出るほど欲しいということ。

二つ目は本契約した竜使いは戦闘力が強化されるため、犯罪に手を染めると手が付けられない場合がある。それを防ぐために騎士にして赴任した国に監視と護衛をしてもらおうという訳である。


世界中には本契約してるにも関わらず、いずれかの国に属していないフリーの竜使いが存在するが、そういうケースは脱走したか退役したか等、かなり少数である。

ほとんどのフリーの竜使いは現地契約のみで神殿契約をしていないケースが圧倒的多数である。

配属国は竜使い自身は選べない。竜騎士になると配属国によっては祖国と敵対することもある。竜騎士志願者は皆それを承知で神殿契約に挑むのだ。

現地契約しか、しないフリーの竜使いが多い背景には、祖国を攻撃したくないから本契約をしない者も多く、竜騎士が増えてないのもまた事実である。


竜二の場合、異世界人だけあって祖国、故郷、思い出の場所、宗教、家族、友人、恩人などによる思い入れなどは一切ない。一番最初に配属された国こそが竜二にとって、これからの故郷になるのだ。必ずや愛着が湧くであろう。忠誠を誓うかもしれない。

もしマスターが我が国を攻撃すれば、自分は一生マスターを憎むだろう。

神官長も怨むかもしれない。

ジキスムントが配属先を心配するのも無理からぬことであった。





そんなジキスムントの悩みは知る由もない竜二は馬房ならぬ竜房に来ていた。

宿には竜使い用に竜房があるのが一般的である。

ジキスムントから聞いた話では竜房は面積をとるため、都市部の宿には郊外じゃないと無かったりするそうだ。


「・・・何か用?」


「あ、悪い。起こしちゃった?」


「寝付くのには、もう少し掛りそう。昼間、うたた寝してしまったせいかしら・・・」


ああ、それか。

マッサージをつけて余計なことしちゃったかな?

さすがに苦笑する。


「でも体は軽いわ。ありがとう竜二。」


ラプトリアは喜んでくれたようだ。とりあえずよしとしよう。


「えーっと、どういたしまして・・・・・・って、あのさ。」


「なに?」


「まだ判断できないとは思うけど、ラプトリアは俺とパートナーにして良かったの?」


「・・・迷っているのね?」


出た言葉がこれだ。どうやらラプトリアにはお見通しらしい。


「ラプトリアは怖くないのか?人間の政治の道具に使われるかもしれないし、俺が弱いばかりに殺されるかもしれないんだぞ?そしたらラプトリアだって死んじゃうんだろう?」


竜二はうつむきながら、自身の不安の原因を質問した。

ラプトリアは、暫くこちらを見つめ続けた。


「・・・・・・ねえ、まだ竜二は私に乗って空を飛んでないでしょう?夜空を一緒に飛びましょう。」


「え?だってラプトリアも疲れているんじゃ?」


「一緒に飛べば、きっとそこに答えがある。さあ、私にお乗りなさい。」


すでにラプトリアは竜房を出て飛行態勢に入っていた。


「わ、わかった。」


竜二は慌ててラプトリアに飛び乗る。


「今は竜具をつけてないから長くは飛ばないわ。しっかり捕まって。」


ラプトリアはゆっくりと上昇した。夜空をゆっくりと羽ばたいて駆ける。

ラプトリアは竜二に気を使っているのだろう。終始ゆっくりと低速で飛んでいた。

最初は余りの高さに怖かったが、段々と慣れてきた。

やがて雲に届くくらいの高さまで到達した。夜の冷えた風が竜二に当たるが寒いというよりは、妙に爽快感がある涼しい風だった。


「竜二。あなたが私ともっと絆が深まれば、飛行中の私の頭や翼や尻尾に片足でも立っていられるようになる。魔法だって使いこなせるようになる。私もあなたと絆が深まれば、スキルやアビリティを使いこなせるようになる。身体能力も強化される。お互い離れていても、意志疎通ができるようになるわ。」


「竜二、私は竜二と契約したことに後悔はない。竜二が弱いなら、強くなった私が守ってあげる。だから竜二も魔法を覚えたなら私を守って。そうすれば乗り越えられる。そうでしょう?」


ラプトリアは確固たる決意のもとで喋っているが、柔らかく優しい口調だった。


自然と竜二の眼には涙が滲み出た。

情けなくて泣いているのか、悔しくて泣いているのか、嬉しくて泣いているのかは分からない。

ひょっとしたら異世界に飛ばされて、今の今まで孤独に耐えてきた虚勢から解放されたからかもしれない。

けれど、ハッキリしたことがある。

ラプトリアに会えて良かったということ。

ラプトリアが竜二を信用してくれる限り、自分もまた彼女を信じよう。

単純ではあるが、竜二の中で何かが白黒ハッキリついたような気がした・・・







竜二が乗っているラプトリアの姿が月光に重なり、美しいシルエットになっている。

光沢のあるダークシルバーの体が、一種の優美さを醸し出しているようだ。

夜ではあったが、その姿を確かに見上げている一部の人がいたという。

そして瞬く間に一市民にまで広がることになる。








竜二が知るのは明日になるが、

上位ドラゴン、それもBランク以上の竜と契約した竜使いを尊敬と畏怖の念を込めて



人は、それを『強竜を自在に操りし者(ドラゴンライダー)』と呼ぶ。



お気に入り登録件数100件超過!

20話以上の作品でも10件に満たない作品が多い中、感激です!


アクセス数も順調に伸びているようですが、私としましてはライトユーザーの御方より、ヘビーユーザーの御方のほうを大事にしたいと思ってますので、お気に入り件数及びお気に入りユーザー登録してださっている人の増加のほうが嬉しいです(笑)



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