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ドラゴンライダー立身伝~銀翼の死神~  作者: 水無瀬 凜治
第1章 異世界召喚編
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秘密道具

ここレッドゴッド連邦西部のドラゴンキャッスルについての説明をすると、

広大な樹海である。


中盤まで行くと迷いやすくなる。案内板のようなものが立ってはいるが、申し訳程度である。

メインコースから外れると迷子確定しそうな場所だ。


そのため、地図と磁石が必須だ。地図は支給されており、野宿推奨ポイントが書かれている。

だがジキスムントは相変わらず野鳥たちと交信しているのか。

どんどん進んでいく。


最初に地竜ばかりがいるサウスエリアがあり、どこに行くにしろ全ての竜使い候補はここを通らなければならない。

そして飛竜が多いイーストエリア、比較的ランクの高い竜がいるウエストエリアがある。

ノースエリアがBランク以上がひしめく上位のドラゴン達の根城だ。

ノースエリアは活火山があり、周期的に噴火している。

それゆえ冬でも暖かい。そのうえ複数のカルデラ湖があり、水の確保も十分で、さらに北には険しい高山が連なっており密猟者も北からは中々入れない。しかもノースエリアに行くにはウエストエリアかイーストエリアを通過しなければならない。


まさに1等地に陣取っているんだな。


隙無しのエリアだと思ったが、ジキスムントは意外なことを言った。


「野生味が強いならば寄ってくる人間に手当たり次第に襲ってくるでしょうが、上位のドラゴンは賢いがために欠点があります。まさかここまで来れる人間はいないだろう、まさか自分を捕えられる人間はいないだろうという油断がね。」


確かにそれは1理あるが竜二は信じていなかった。

それだけなら、もっと効率よく上位のドラゴンを捕まえられる竜使い候補がいていいはずである。

今の話だと忍び足でノースエリアに侵入した竜使い候補は誰でもできることになる。


おそらくジキスムントは自分に気休めを言っているとおもった。


「イーストとウエストどっちを通過したほうがいいと思う?やっぱりイーストかな?」


イーストエリアの方がランクが低い傾向があるのでそう提案した。

しかしジキスムントはウエストを進めてきた。

理由は前に来たとき、ウエストエリアに来たので道案内はウエストの方ができるからとのこと。


ここまで聞いて


「!」


竜二の直感が働く。


「ジキスムント。もう隠し事はやめよう。今までストレートに聞かなかった俺も悪いけどさ。」


竜二はジキスムントの右手の手のひらを掴んで返してみせた。


「!!」


手のひらには刻印があった。そう竜使いなら誰でも刻まれる刻印が。

こんなにくっきり残るのは、神殿で契約を結んだ証拠だ。公式な竜使いだ。

仮契約の段階なら薄く残る。竜二はすでに書記官から教えてもらっていたのである。


「ばれてしまいましたか・・・・・・隠すつもりはありませんでした。これだけはご理解ください。」


「わかっている。奴隷は嘘はつけないんだ。俺が質問しなかったのが悪い。だけど、君の竜は?」


「書記官から聞いていると思いますが竜と竜使いの関係性で決定的に違うのは生命の関係性です。お聞きになってますか?」


「ああ、竜が死んでも竜使いは苦痛は伴うけど死なない。だが竜使いが死ぬと・・・」



竜も死ぬ。



これが、もっとも不公平ともいえる契約だ。

本来は、契約においてお互いにプラスにならなければならないが、生命の関係はリスキーなのだ。


竜使い同士の戦闘は、竜にウェイトがかかる。竜が主役といっても過言ではない。

だが竜使いさえ殺せば戦いは終わるのだ。

戦争ではいかに竜使いを殺すかにかかっている。どんなに竜が頑張っても竜使いが無能なら竜にとっては泣くに泣けない結末になる。契約した竜の生殺与奪は敵の強さ次第だが、パートナーにもかかっているといえるわけだ。

竜二は、書記官から聞いたときは大きな衝撃をうけたものである。

苦痛を伴うのは、竜を死なせた戒めの意味があるとされている。だが仮契約の状態では痛みさえない。冷淡な竜使いなら竜を消耗品と割り切る事もできてしまうという。


「私もそれでドジを踏んだ一人です。私の竜は死にました。いや奴隷商人の仕入れ業者に殺されたのです。・・・・・・・私だけのんきに生き残ってしまったのです。」


「その・・・悪い。そんな重い話だとは・・・」


ジキスムントの奴隷秘話にはそんな裏が・・・

気分がダークになってしまった。気づかないフリしとけば良かったかな。

ジキスムントが余りにも詳しすぎるので追及しただけだったのだが・・・


「まあ、過ぎたことです。とにかく進みましょう。」


「そうだね。」



本当は契約していた竜とは、何ランクなのか聞きたかったが、気まずい雰囲気の中では無神経極まりない。

すんでのところで飲み込んだ。


何より自分が竜と契約してないのに、相手の竜について聞きたがるのも厚かましい。


その後は、再び進み始める。

野生の竜が襲って来ても、さすがと言うべきかジキスムントは、どんどん撃退する。

ブレスを吐いて来る竜にも魔法をぶつけ、対抗していた。竜は死んでも魔法は威力こそ落ちるが、使うことができる。


尤もそれは、一部の竜であり、大半の野生の竜はジキスムントと対峙しても、彼が睨み付けたり、手をかざしただけで竜達は制止したり、平伏したり、トンズラした。


おかげで拍子抜けするくらいハイペースな探索速度だ。


サウスエリアを出る直前で、野宿することになった。この辺一帯には夜行性の竜がいないためだ。

支給された地図にも、いくらかの野宿推奨ポイントの一つとして記載されている。


「明日はノースエリアに入ってしまいましょう。」


「やっぱり、ノースエリアに行く?」


「おや、行きたくないのですか?」


「・・・・情けない話だけど今になってCランクくらいで良いんじゃないかと思えてきた。俺に扱えるかどうか。」


「マスター、理由がどうであれ異世界から召喚させられたのです。私生活を奪われた鬱憤もあると思います。ですが上位の竜と契約できる資格を持ちながら生かさないなら宝の持ち腐れです。実際に会って出来なかったら下位の竜と契約すれば良い。現状ではAランクの竜と契約できる以外にマスターがこの世界に召喚された意義がないのですから。契約しても結論が出ないなら弱音を吐くのも良いです。自分の可能性を信じましょう。マスターがこの世界に来た理由もきっとなにかあるはずです。」


「そうか、そうだな。けど、今だから言うけど俺がAランクの竜と契約できるなんてリリアという素人の女性が判断したに過ぎないんだ。俺が竜に認められる保証はどこにもないんだ!」


「それは心配ないと思います。私の推測ですがマスターは契約できると思います。経験者の私が言うのですから。 おそらく明日か明後日辺りに結果が出るでしょう。」


ジキスムントにとっては確信に近い推測だったのだが、竜二には言わないでいた


「・・・・・・わかった。」


それ以上は両者なにも言わず就寝した。


翌朝、ウエストエリアに入ったが、午前中の内にノースエリアに入った。


竜が行きたがらない砂利だらけの道でところどころに岩がある。

人間でも回避しそうな未開の道だが、二人の巨馬には大きな障害にならない。

ジキスムントがその道を知っていたため、昼になる前にノースエリアに入れたのである。




しかし、問題なのはそのあとだった。


見つからない。というか竜の気配がないのだ。


相性が良い竜は竜使い候補が近づくと様子を見たり、距離をとったり、大人しくなったりするが、逢わない事には、それさえ出来ない。


まるでノースエリアだけ無人島のようだ。

ほとんど密猟者にやられたのか?


「そんな事はありません。ちゃんと気配はします。警戒してるのか、我々が休むのを待って攻撃しようとしてるのか、諦めて立ち去るのを待っているのか・・・・」


竜の好きがるような餌を仕掛けたが現れる様子もなかった。

ランクの高いドラゴンは人間より強いのではないのか?

半分がっかりし、半分安堵した複雑な心境だった。


「前に来た時はどうだったんだ?」


「・・・・前に来た時は、これからノースエリアに入ろうとしたとき、ノースエリアのドラゴンが襲ってきたのです。・・・・そのドラゴンに認められ契約を結びました。情けないことですがノースエリアにはほとんど入ってないのです。」


そういえばジキスムントはキャッスルに来たことはあると言ったけど、ノースエリアに行ったとは言ってない。確かに嘘は言ってないが、狡猾な気がする。


「このノースエリアのドラゴンに立ち向かって死んだ竜騎士候補は多いといいます。そんな竜の方から姿をくらますとは・・・」


確かに途中で竜使い候補とみられる死体は何回も見かけたが・・・

ジキスムントは入って早々、竜が襲ってくると思ったのだろう。してやられたという顔である。


結局探し回っても竜は現れず野宿する羽目になった。

無防備なところを狙われたら一たまりもない。

そこで馬に鈴をつけ、自分達が寝てるところを襲われないように、少し放して手綱を固定した。


これなら自分達を食べるよりも馬を喰おうとするだろう。その時、鈴が鳴り目が覚める。

それで休もうとするが、なかなか寝付けない。今まではジキスムントが万全の警戒をしてくれた。

だが、そのジキスムントも今は焦っているように見える。竜二も気が気でなかったのである。


その日の夜、このまま消耗戦に突入されて寝不足と過労で弱っている時にやられるのか?

明日の夕方までで一度撤退か? そんな事などをジキスムントと打ち合わせしていると、


「!」


竜二の直感が働く。


そうだ、ジキスムントは気配はしていると言った。

それなら夜に現れる可能性は高い。竜二はリュックを漁った。


あった!これこれ!



取り出したのは熱源検知のモジュールが内蔵された『ナイトスコープ』である。


サバゲーの副産物であった。この世界に来る直前のサバゲーでは夕方から開始の夜間戦闘想定だったのである。竜二は狙撃手だったので必要だと判断し持ってきた。


一番の理由はチームのメンバーに自慢したくてお金をはたいて買ったのだが。


「それは何ですか?」


「この状況を打開できるかもしれない秘密道具だよ。」


竜二はスコープを装着し、テントを出て周りを見渡した。







すると・・・・いた!






竜二の目と鼻の先に竜が居座っていたのである!


熱検知のナイトスコープは大変高価です。軽く五万円以上します。

光検知のは、簡易的な物は一万円以下で買えます。


今回の場合、竜二君が自慢したい故の奮発です。

バードウオッチングなら光検知のナイトスコープで十分だと思います。


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