1章06
向かったのは今しがた少女を誘拐した公園。
細かく言うと、少女がいた滑り台の中だ。
大人が一人中に入ったら窮屈に感じるくらいの広さ。
その中にあったのは先ほどと変わらずダンボールだけ。
狭い中を見回しても、やっぱりそれ以外が出てくることはなかった。
本当にダンボール一つであの少女はこの寒い中ここにいたらしい。
「…………いつから居たんだろう」
確か今日は夕方まではそこまで寒くなかったはずだ。
信用していいのかはわからないけど、空は帰り道の間ずっと膝上のスカートと長袖の体操服一枚だった。
でもアイツは普通におかしい奴だから一般人としてカウントしていいものかわからない……。
対する俺も普通に動きまくってたからどちらかっていうと汗かいてたし、正直どれくらいなのかはわからない。
ただ陽が沈んでからは温度が急に下がったのは覚えている。
あんな小さな子が夕方からここにいたんだとしたら、寒さから体力の消耗が凄いはずだ。
……大丈夫かな、あの子?
無理矢理誘拐した俺が言うのもなんだけど、こんな場所で一日過ごしたらあんな小さな子だったら本気で危なかったと思う。
何であの子はここにいたんだろう。
やっぱり、家出かな?
でも、見た感じあの子10歳いくかどうかぐらいだったよな……。
そんな歳で家出なんかするものなのか?
自分にそんな経験がないから、比べようもない。
一番古い付き合いの空は家出紛いの事を何回もしてたけど、もって一時間のプチ家出だったしこれも例外だ。
最近の子は……言っても6、7歳くらいしか違わないだろうけど、家出なんて日常茶飯事なのかな?
…………わからない。
「はぁ、手がかりになりそうな物は――ん?」
俺がここに来たのは何かあの子の情報になりそうな物が落ちていないかを探す為だった。
さっきあの子がいた時はパッと見しか出来なかったからもしかしたら何か落ちているかもしれないと思い、もう一度しっかり探そうと思って来たんだけど、残念ながらそれらしい物は何も見当たらない。
諦めて帰ろうと思ったその時、俺はダンボールに軽くぶつかった。
その衝撃で、先ほどまで重石となっていた少女がいないダンボールが動く。
すると、ダンボールと地面の間に小さな紙切れが挟まっていたのが目に入った。
「……?何だ、これ?」
――最初、それをゴミだと思った。
あ、ゴミが挟まってる……それくらいにしか思えない、そんな紙。
正直な所、この紙を見て手紙だと気づく人はおそらくいないと思う。
それくらい、小さな紙切れだったんだ。
俺は――その紙切れに手を伸ばした。
「ゴミ、だよな?」
手に取ると、その紙は余計にゴミにしか見えず、俺はすこし落胆する。
だって手に取ったそれはルーズリーフを無理矢理破ったような、そんな小さな紙切れ一枚だったから。
サイズは手のひらより小さめ。
それが一枚。
表面には何も書かれていない。
「やっぱり、ゴミか……」と呟きながら裏返してみると、そこには文字が書かれていた。
『幸せにしてあげてください』
そこには、そんなふざけた内容が殴り書きされていた。




