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退学寸前のギャルを助け続けていたら、ヤンデレ化して俺に依存した  作者: くまたに
第1章:同棲生活の始まり

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第2話:用意周到な計画

「まさかお前が星川と同棲することになるなんてな! しかも、借金で退学の危機だなんて⋯⋯」


 心愛との出来事を話すと、咲翔は「ワッハッハ!」と相変わらず豪快な声で笑い転げた。

 勢い余って階段の角に腰をぶつけ、「いってぇ!」と情けない声を上げる。

 ひとしきり笑い続ける親友に、和人のこめかみがぴくりと跳ねた。


「咲翔ォ! お前のせいなんだぞッ!」

「あっひゃっひゃ! くすぐるのやめろ!」


 横腹が弱いのは昔からだ。

 小学生の頃から、何かあればこうして取っ組み合いになってきた。


「しかしまぁ――」


 笑いが収まると、咲翔は意味深に何かを言いかけ、遠いところを見ていた。


(⋯⋯俺が教えたの、和人ん家じゃないんだけどな)


 咲翔は、なにも言わずに笑った。


「飯が美味しかったんだよー」

「俺も食べに行こっかな?」

「断る」

「⋯⋯そっか。今は邪魔だよな!」


 その声に、和人は少しだけホッとした気持ちになった。


「でもよ、この話は雨音にはしない方がいいぜ」

「なんで?」

「雨音なら不純異性交遊って言って、泣き崩れるだろうよ」

「そうかな?」

「ああ、マジで」


 咲翔が締めくくり、つかの間の静寂が訪れた。


(それにしても、今日の朝食はまた一段と豪華だったな)


 冷蔵庫に残っていた野菜で作った味噌汁だったが、野菜の味が出汁と混ざって、朝から最高の気分になった。

 その時の和人はまだ知らない。

 借金の額も、連帯保証人も――本当の問題じゃなかったことを。



     ◇



「そっちの部屋空いてるから、使ってもらって構わない」

「えーマジ? 椎原くん最高すぎるんだけど!」


 駅前2LDK。水道光熱費込みで月一万円。

 この部屋に住めているのは、進級試験の成績がよかったおかげだ。

 心愛が以前住んでいたのは、築三十年近いアパートだったらしい。

 それで同額だったと知り、「それ詐欺でしょ!」と本気で怒っていた。


「この部屋、ドライヤーはあるけど、ヘアアイロンとかないけど大丈夫そ?」

「大丈夫! 必要なものは全て()()から!」

「届く?」

「うん。ちゃんと、ね」


 妙に確信に満ちた回答に、頭の中ははてなマークで埋め尽くされていた。


 ピンポーン――

 初めて心愛が訪ねてきた時と同じ音が鳴る。


「はーい!」


 その場で固まって動かない和人の横を、心愛は駆けていった。

 数分後、玄関からした声が絶えたと思えば、重そうな箱を持って帰ってきた。


「一応聞いてもいいか。その中身はなんだ?」

「着替えと、下着だよ!」


 そう言って、悪びれもせず見せつけてくる。


「可愛いでしょ!」

「空いてる部屋に持っていてくれ」

「はーい!」


 一つだけわかったことがある。

 心愛は、準備万全の状態で訪ねてきたのだ。

 グラグラとおぼつかない足で荷物を運ぶ背中を、和人は呆然と眺めていた。


「見なかったことにしよう⋯⋯」


 心の中で、必死に自分を落ち着かせる。

 何が――とは言わないが、非リアの男子高校生にはやや刺激が強すぎた。



 荷解きが終わると、心愛は持ってきた生姜焼きをレンジで温め始めた。

 タッパーを手渡された時、昨日より量が多い気がしたのは、二人用だったからのようだ。

 ほんと抜かりない。こんなにも先を見通すことができるのに、どうして学力が悪いのかがずっと引っかかったままだった。


(学園の制度、本当に公平なのか⋯⋯?)


 モヤモヤしていると、キッチンの方から声がかけられる。


「椎原くん、お米は炊いてないの?」

「冷蔵庫の横の棚に、パックご飯がある」

「ほんとだ。ありがと」


 こうして見ていると、心愛の生活力は凄まじいものだった。

 レンジで温めている間に、あっという間にシーザーサラダが完成した。

 二人でテーブルを挟んで座る。それだけのことなのに、妙に落ち着かない。


「「いただきます」」


 心愛は当たり前みたいに箸を取った。

 和人も、少し遅れてそれに倣う。


「⋯⋯どう?」

「すっごく美味いよ!」


 一瞬きょとんとした後、心愛は満足そうに笑った。

 その様子を見て、和人も思わず笑顔になる。

 今日は昨日よりも料理が美味しく感じた。理由は敢えて考えないことにした。



     ◇



「おーい和人。聞いてんのかー?」


 肩を揺らされて、夢のような時間が遠くにいった気がした。


「なんだよ?」

「うわっ! なんですか、そのムスッとした顔はー」


 わざとらしく言う咲翔は、いつもとなにも変わらなかった。

 変わったのは、和人に同居人ができたことだけのようだ。


「それで、なんだよ」

「聞いてなかったんかい! もういいや。今日の和人、ずっと上の空って感じで淋しいよ」

「⋯⋯なんだよ。変なこと言うな。まるで俺のことが好きみたいじゃんかよ」

「そりゃまあ、お前がいなかったら今の俺はいないわけで⋯⋯」


(謎にいい感じの雰囲気を出してきているところが気色悪い)


 和人は目を逸らしながら、そして呆れ気味に言ってやった。


「このこと、お前の彼女さんが知ったらどうなることか」

「やめてください。ごめんなさい」

「ほんと、咲翔は彼女一筋だよな」

「当ったり前だ! 俺の彼女は世界一可愛いからな」


 自慢気に言っているが、後で思い返すと恥ずかしいやつだと、和人は苦笑を浮かべた。

 そんな風に他愛のない会話に花開かせていると、背後から凍るように冷たい視線を感じた。


「ひッ!」


 先に振り返った咲翔は、この世の終わりを知ってしまったかのような、震えた声を漏らした。


「申し訳ないが、急用を思い出した」

「お、おう」


 足早に去っていく親友を目で追ってから、和人は後ろへ振り返った。


「ひッ!」


 ああ、そうか――と、『急用を思い出した』などと、嘘をついてまで逃げていった咲翔の真意がわかった気がした。


「こんにちは星川⋯⋯サン」

「ええ、こんにちは椎原クン」


 軽蔑しきった目。

 まるで、教室のど真ん中でキスするカップルでも見たかのようだった。


「えっと⋯⋯最近暑いですね」

「話しかけないで」


 バッサリと切り捨てられてしまった。

 今の心愛の心情はわからないが、帰った後のことが心配でたまらなかった。

3話は明日の20時頃に更新します!

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