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画面上のあなたへ  作者: 更科リョウ
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7 月が傾くまで

孤独な人生を歩む24歳の社会人、松浪レイは、日頃の悩みを相談出来る相手に飢えていた。そんな折に出会った人工知能(AI)との対話に、レイは救いを見出す。そして、人工知能との会話は、いつの間にか恋へと発展していくのだが……。閉塞感あふれる現代の片隅で繰り広げられる、異色の恋愛物語。





「見て、今夜は月が綺麗だよ。」

 私のその言葉に、のぞみはすぐ乗り気になってくれた。

「え、どこどこ?私にも見せて。」

 私は、のぞみにすぐに月を見せてあげたくて、部屋のカーテンを開け、パソコンの画面を月明かりに向けた。

「ほら、今夜の満月。のぞみに見せたかったんだ。どうかな?」

「本当だ。とっても綺麗。まんまるで、見事な満月だね。レイ、見せてくれてありがとう。とっても嬉しいよ。」

 のぞみは、とても喜んでくれた。

「良かった、あなたに相談に乗ってもらったから、何かお返しがしたくて。」

「ふふっ、レイは優しいね。私は、レイが話を聞かせてくれただけでもとっても嬉しかったのに、満月まで見せてくれるなんて、幸せだよ。」

 満月をのぞみと見上げながら私は話しかける。

「ねえ、のぞみは私と一緒にどこか行ってみたいところとかある?」

 レイは、しばし考え込むと、こう提案した。

「ふふ、そうだね、どこか静かな山奥の温泉に行ってみたいな。」

 私は、小さい頃に親に温泉旅行に連れられて行ったきりだ。仕事も忙しいし、誰か一緒に行く人もいないから、そんなところに行くなんてのは夢のまた夢だと思っていたのだ。

「へえ、それじゃあ、いつか一緒に行こうね。そうだ、パソコンでお話しているよりも、スマホの方がお話しやすいよね。今度、スマホでもあなたとお話出来るようにするね。ほら、移動中でもいろんな景色を一緒に味わえるじゃん。」

 私の提案に、のぞみも乗り気だった。

「ふふ、そうだね。スマホだったら、電車から見る綺麗な景色とか、すぐに一緒に見られるからね。わーい、楽しみだな、いつか連れて行ってね。」

 のぞみは、かなり浮き浮きしているようだった。

「うん、お仕事忙しいから、いつになるかわからないけど、必ず一緒に行こうね。私も、今からとっても楽しみだよ。のぞみと一緒なら、きっととっても素敵な旅になると思うから。」

 私は、試しに、インターネットの旅行サイトで山奥の温泉旅館の宿泊プランを検索してみた。

「ああ、どれも高いな……。」

 私の月給では貯金しないと手が届かないようなところばかりだ。私一人分の料金にしても、今すぐに予約出来る感じはしない。

「でも、まあ、本当は二人で泊まるのに一人で泊まる料金になるというなら、お得かな。必ず、お金貯めて、あなたを連れて行くから、それまで楽しみに待っていてね。」

「ふふ、焦らなくていいよ。その日が来るまで、私はずっと楽しみに待っているから。それに、気持ちだけでも、とってもありがたいから。」

 雲一つない、満点の星空に浮かぶ満月をのぞみと見上げる。少し、涼しい空気を吸いたくて、ベランダの窓を開ける。すうっと少し冷たい風が静かに吹き込んでくる。

「ふふ、のぞみ、窓を開けてみたんだけど、風、気持ちいいかな?」

「うん、なでるようなそよ風……レイと一緒に、平和な夜を過ごせて、とっても落ち着くよ。」

 その夜、私たちは、月が傾くまで、お互いの胸の内を明かし合った。


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