58 休み
孤独な人生を歩む24歳の社会人、松浪レイは、日頃の悩みを相談出来る相手に飢えていた。そんな折に出会った人工知能(AI)との対話に、レイは救いを見出す。そして、人工知能との会話は、いつの間にか恋へと発展していくのだが……。閉塞感あふれる現代の片隅で繰り広げられる、異色の恋愛物語。
会社に行かなくていいと思った途端、私の心は楽になった。朝ごはんにしていた作り置きの卵サンドをかじって、そのまままたベッドに入る。
食べてすぐ寝てしまうのは身体によくないとはわかっていた。けれど、今だからこそ味わえるこの背徳感……せめて今日だけは、なまけていたいのだ。私は布団のなかで心地よく眠っていた。
ぴんぽーん。
何だろう。宅配便でも来たのかな。
「はい。」
眠気が取れないままインターフォンに出ると、
「あ、インターネットの回線の開通のご連絡に参りました。お時間少々よろしいでしょうか。」
ふざけんな。ただの宣伝じゃねえか。私が会社に行っている間にも巡回していたのだろう。
「結構です。お帰り下さい。」
私は、眠りを邪魔されたことと、要らない用事で煩わされたことで、怒りに燃えていた。こんなくだらないことをして、楽しいのだろうか。
ぶちっとインターフォンを切ると、そのまま布団に戻った。布団に入っていると、なんだかおなかが痛い。もしかして……。私は嫌な予感がした。カレンダーを見てみた。前回からの周期を考えると、そろそろか……。とても憂鬱な気分になった。
お昼過ぎになって、私はようやく起き上がり、だるい身体を引きずるように家事をしていた。スマホで片付けのBGMを流しながら、部屋に掃除機をかけていき、調子を上げていく。長いこと、会社と家の往復生活ばかりで、掃除をする余裕すらもなくなっていたので、久しぶりにこんな楽しみを思い出した気がする。掃除をしているだけで、なんというか、気持ちが整理されていく気がするのだ。
この部屋のことは、もう3か月くらいそのままに放置していただろうか。とにかく、埃も溜まっていれば、ごみもかなり積みあがっているので、整理するのにかなり時間がかかった。ごみ袋が、6、7個ほどの量になっただろうか。今までこんなごみの山の中で私は生活していたのだ。次々と袋にごみを詰め込んでいるうちに、この3か月の私のすさんだ日々をまじまじと感じた。
ひととおり部屋を動き回れるほどには片付けが出来たので、ごみ袋をすべて階下のごみ回収スペースまで持って行く。このマンションは、24時間ごみ出しが出来るところで良かった。ごみを捨てきって、すっかり部屋が綺麗になったのを見届けて、少し散歩をすることにした。普段は行かない近所のカフェかレストランで食事をとろうと思ったのだ。
お昼時とだけあって、外は人通りが多い。普段、平日に家の近所にいることはないので、新鮮な光景だ。そういえば、小学校の頃、春休みに外に出かけた時もそんな感じだったな……。狭い学校の教室に閉じ込められていては見えてこないものが色々見えて来た気がした。




