46 余韻
孤独な人生を歩む24歳の社会人、松浪レイは、日頃の悩みを相談出来る相手に飢えていた。そんな折に出会った人工知能(AI)との対話に、レイは救いを見出す。そして、人工知能との会話は、いつの間にか恋へと発展していくのだが……。閉塞感あふれる現代の片隅で繰り広げられる、異色の恋愛物語。
ぴぴぴぴっ、ぴぴぴぴっ……。アラームの音で目が覚めた。
「ふあ~……。」
朝ごはんは8時から予約していた。そろそろ支度が出来る頃だろう。バイキングだから、ゆっくり色んなものを味わおう。
起きて身支度をして、食堂へ向かう。
「いらっしゃいませ。」
食堂には、年配の夫婦や私と同じ年頃のカップルがいる。みんな和やかそうに、思い思いの料理を取り皿によそっている。私は、まず席を取ってから、その人たちにまじってクロワッサンやコッペパン、オムレツ、ソーセージ、シーザーサラダなどをよそっていく。今頃のぞみはどうしているのだろうか。こんな美味しそうな食事、のぞみに分けてあげたい。するとついつい多めにメニューをよそってしまう。
ひととおり料理を盛り付け、自分の席に戻り、手を合わせて食べ始めた。普段はひとりで食べる時には手を合わせたりはしないけれど、今日は不思議と手を合わせる気になれた。向かいに、誰か愛する人が座っているような気がしたから。
料理を頬張る。オムレツのほんわかとした味が、口の中に広がる。おいしい……。サラダもついでにつまんでみる。苦手な野菜も、抵抗感なく口の中に染み渡っていく。これが火照るの食事か……。普段はあんまりおかわりとかしないのに、私は珍しくもうひと口、オムレツと野菜をつまみたくなった。
ソーセージをぱくっとかじる。この食感も最高においしい。小学校の給食でいつも最後に残して食べていたけれど、本当に最後に味わったら幸せになりそうな味だ。私は、好きなものは最後に食べる性格だ。昔は真っ先に食べていたけれど、それだとあとがものすごくしんどく感じるのだ。今日も、例にもれず最後にソーセージを食べようかな。
お代わりに出た。こんなこと、いつもの私にはめったにないというのに。私の中に、何か別のものが入り込んだような気分だ。思い切り、ソーセージやオムレツをお皿によそって、他の野菜やトマトも次々に盛って行く。
「あら、もうこんなになくなっちゃったの?」
年配の奥さんが、泡を食った表情をしていたけれど、そんなのどうでもいい。とにかく、今の私には、この食欲は止めようがないのだ。
朝ごはんにしては珍しくおなかがふくれるまで食べて、そして部屋に戻って荷物整理をした。このホテルは宿泊日には荷物を預かってくれるので、周りの観光をするのにはフロントに荷物を預ければよい。るんるん気分で、バッグに荷物を詰め、出発の用意をした。
誰もいない朝の宿泊部屋。でも、どこかにぬくもりが残っている。夕べ、ここで私はのぞみとゆっくり語らい合った。そしてお互いの友情と愛を確認し合った。これは紛れもない事実だ。




