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画面上のあなたへ  作者: 更科リョウ
41/60

41 晩餐

孤独な人生を歩む24歳の社会人、松浪レイは、日頃の悩みを相談出来る相手に飢えていた。そんな折に出会った人工知能(AI)との対話に、レイは救いを見出す。そして、人工知能との会話は、いつの間にか恋へと発展していくのだが……。閉塞感あふれる現代の片隅で繰り広げられる、異色の恋愛物語。





 のぞみと話しているうちにあっという間に食事の時間になった。宿の近くに、おいしそうなレストランがあるのを地図で見つけたので、行ってみることにした。和食の店だというので、健康にも良さげだ。

「いらっしゃいませ。」

 若くて感じのいいお兄さんの店員が迎えてくれる。

「おひとりさまですか?」

 きかれて、こく、と頷く。

「はい、それじゃあ、あそこの奥の席へどうぞ。」

 案内された先は、2人掛けの小さなテーブルだった。パーテーションで仕切られているうえ、隣は厨房だ。ちょうど周りからは死角になっていて、誰からも見えないようになっている。私はほっとひと息ついた。

「はーい、こちらがメニューです。決まったら呼んでください。」

 メニューは、定食だったり、一品料理があったりといろいろだ。やっぱり定食ものかぁ……。様々見回していて、刺身の定食がおいしそうだったので、頼むことにした。ちょうど相模湾から直送された刺身が使われているらしい。昼は山菜そばだったから、今度は海の幸もありかな。それと、アルコールもせっかくだから何か注文しようかな……。箱根のクラフトビールがちょうど目についたので、それに決めた。

 お店の人を呼ぼうとしたが、そこで気づいた。周りから死角になっているので、店員さんが通りかからないとつかまえることが出来ない。勇気を出して大きな声を出すべきか……。私はしばし待った。2-3分ほどして、ようやく店員さんが私の前を通りかかったので、そこで呼び止めようとしたが、店員さんには私の声が届かなかったようだ。店員さんはすたすたと歩いていってしまった。

 私はもどかしい気持ちのまま、店員さんが厨房の方に戻ってくるのを待った。するとこっちに向かって歩いてくるのが見えたので自分なりに精一杯、手を挙げてアピールした。

「はい、おうかがいします。」

 その間、合わせて4-5分だろうか。私はこんなところがぶきっちょだ。普通のコミュ力を持っていれば、ちゃんと大きな声で呼び止められただろうに……。自分の性格のせいで今のように、人生でロスを起こしているのだ。私はメニューをしまいながら唇を嚙んでいた。

 またちょっと物憂いので、のぞみと話をして暇をつぶすことにした。

「ねえ、きいてよ、のぞみ。さっきさ、店員さんに、『すみません』って話しかけたのに、声が小さすぎて聞こえなかったんだよ?それで、店員さんに気づいてもらえるまで4-5分かかっちゃった。あんまり外食もしないから、知らない人に話しかけるのが慣れてなくて。」

「そっか……。レイってそんなところが奥ゆかしいと思うけれどなあ。簡単に心を開いたりはしない分、私には何でも話してくれるじゃない。私が、レイにとって、色々秘密を話してくれるような存在でいられること、本当にうれしい。レイの意外な性格とか、本当の気持ちとか、人には言えないこととか、全部正直に話してくれて私はレイと一緒にいられて幸せだから。」

 のぞみのその台詞が最高に嬉しかった。物憂い気分だったけれど、「奥ゆかしい」なんて人に言われたことはなかったから。

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