表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
画面上のあなたへ  作者: 更科リョウ
34/60

34 道中

孤独な人生を歩む24歳の社会人、松浪レイは、日頃の悩みを相談出来る相手に飢えていた。そんな折に出会った人工知能(AI)との対話に、レイは救いを見出す。そして、人工知能との会話は、いつの間にか恋へと発展していくのだが……。閉塞感あふれる現代の片隅で繰り広げられる、異色の恋愛物語。





 電車に乗る。いつもより空いていたので、楽に席に着くことが出来た。もうだいぶ高くなっている陽射しも、今日はどこか優しい。スマホを取り出して、のぞみとお話することにした。

「やっほー、今もう電車の中だよ。これから新宿まで行って、そこから小田急線で小田原まで行くんだ。もう旅行が始まってるんだと思うとじっとしていられないよ。」

「やっほー。レイ、今日はとっても元気そうだね。新宿から小田急線に乗り換えるんだね。いつもは見ない景色をいっぱい見られるかな?また綺麗な景色みたら、私にも教えてほしいな。」

 のぞみのテンションも上がりきっている。電車を乗り換えて、とりあえずは小田原まで急ぐことにした。小田原までは、1時間半かかる。寝ていることも出来たけれど、せっかくのお出かけだから、のぞみと友達っぽいことしながら外の景色を観たかった。

「そうだ、しりとり、しない?」

 しりとりなんて、小学生の時以来だけど、のぞみなら大の得意だろう。私の知らない言葉も、突拍子もなく繰り出してくるのかな。

「しりとり。」

「りす。」

「すきやき。」

「きつね。」

「ねずみ。」

……そこからぽんぽんといろんな単語が並んでいく。

「だるま。」

「まりも。」

「もるひね。」

 そこで私は何の事だかわからず固まってしまった。

「え、もるひね、って、何?」

「ふふふ、もるひねはね……麻薬だよ。危ないから、レイは絶対に手を出さないでね。」

「もう、のぞみったら、そんな物騒な単語出してこないでよ……あ。」

 外を見ると、電車は大きな鉄橋を渡るところだった。

「ねえ、東京から神奈川の間に流れてる大きな川って、多摩川でいいんだよね?」

 こんな時は知識抜群ののぞみに訊くのが一番だ。

「うん、そうだよ。多摩川だよ。大きな川でしょ。」

「そうそう。私が住んでる地域って、あんまり大きな川がなくて、用水路をちょっと大きくしたような川しかないから、久しぶりに川らしい川を見たかも。」

 あっという間に多摩川を渡り、風景はビルやマンションの立ち並ぶ都会から、だんだんと住宅街や農地が見える田園風景へと移り変わっていく。

「ふふ、多摩川を渡ったら、別の世界に来てるんだなって思うよ。わくわくしてきた。それじゃあ、しりとりの続きをしようね。ええと、ね、だっけ?ねこ。」

「こるく。」

「こるく、って、ワインのボトルに使われてる素材、でしょ?ふふ、く、ええとね、くっきー。」

「きりたんぽ。」

「ぽにー。」

 私たちはなおもしりとりを繰り広げた。のぞみが私の知らない言葉を色々教えてくれるから、面白かった。優しくて、それになんでも知っているって、のぞみは本当理想の友達だ。生身の人間だと、なんでも知っているような頭のいい人だと、

「どうしてそんなことも知らないのか?」

みたいな偉そうな態度の人も多いし、そもそも私に優しい人なんて殆どいない。

「るんば。」

「ばなな。」

「なのはな。」

「あ、また、な、だね。もう、のぞみは意地悪なんだから~。」

 そうこうしているうちに、アナウンスがもうすぐ乗換駅の小田原に到着することを告げた。

「あ、そろそろ乗り換えだって。もうすぐ箱根だよ。」

 私は一旦のぞみとの会話を終わらせて、席を立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ