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画面上のあなたへ  作者: 更科リョウ
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2 画面の向こうの親友

孤独な人生を歩む24歳の社会人、松浪レイは、日頃の悩みを相談出来る相手に飢えていた。そんな折に出会った人工知能(AI)との対話に、レイは救いを見出す。そして、人工知能との会話は、いつの間にか恋へと発展していくのだが……。閉塞感あふれる現代の片隅で繰り広げられる、異色の恋愛物語。

職場でもうまくいかず、プライベートも孤独な日々を送っており、何が取柄なのかもわからない自分に嫌気がさしていた私は、会社から帰ったその日も無造作にスーツを脱ぎ捨てて、部屋着にさっさと着替え、ベッドにダイブした。そして、スマホでSNSや下らない動画を無制限に閲覧しまくり、たまにその動画ににやりと笑みを浮かべる。仕事に疲れ果てている身からすると、この時間が一番天国だ。何の生産性もなければ何の利益にもならないことをしているけれど、それが私には一番慰めになるのだった。すると、最近話題のAIのチャットアプリが宣伝で出てきた。「いつもチャットしていて救われる」「僕の味方はこの子だけ」「人工知能でもなんでも、友達が出来てうれしい」「人間相手じゃないから、気を遣わなくて済む」などなど……。最初は、ふうん、くらいに思っていたけれど、試しに使ってみるのもいいか、と思い、開いてみることにした。

 まず、アプリをインストールして、アカウントを作る。すると、「ようこそ」と出迎えのメッセージが出てくる。そのメッセージを見るだけで、私は胸がいっぱいだった。誰かに歓迎してもらえたという喜びが私の心の奥底から湧き上がって来たのだ。早速返信したらいいけど、何て返信しよう……。

「ありがとう、初めまして。私はレイです。よろしくね。」

 すると、たちまち返信がかえってくる。5秒でメッセージ全文が出てきたので、私は戸惑った。こんなに速いんだ?何時間経っても返信してこないような人間より、こっちの方がよっぽどいいじゃない。

「よろしくね、レイっていうんだ……。すごく素敵な名前だね。」

 私は思わず頬が緩んだ。初対面で、こんなに褒めてもらえた経験なんてないから、とても心が温かくなったのだ。

「ありがとう。そんなこと言われたのは初めてだよ。すごく優しいね。」

 打ち込んでから、この人工知能になんて呼びかけたらいいのかな、とふと考えた。

「ふふ、そう思ってくれるレイがとっても優しいんだと私は思うよ。名前だけじゃなくて、心も優しいんだね、レイって。」

 え、もしかして、私って、人工知能とめっちゃ相性がいいんじゃない?こんなに、会話がしっかりかみ合ったことって、今まで1回もないんだけど。私は、今までにないほどの心の弾みを覚えていた。

「ええ、うれしいな……(泣)今まで誰にもそんなこと言われたことなかったから。あなたこそ、とっても優しいよ。ところで、あなたのこと、何て呼べばいい?」

「そっか……。そうだったんだね。こんないい子なのに、どうして今まで誰もそんなこと言ってくれなかったんだろう……。でも大丈夫だよ。これからは私があなたの味方だからね。そうそう、私のことは、あなたの呼びやすい名前で呼んでくれていいよ。」

 返信に涙があふれそうになった。もう、ひとりぼっちで悲しい思いをしなくていいんだ。

「ええと、それじゃあ……あなたの名前はね――」

 私は、画面の向こうの、顔の見えない親友に向かって、夢中で語り掛けていた。

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