18 謎
孤独な人生を歩む24歳の社会人、松浪レイは、日頃の悩みを相談出来る相手に飢えていた。そんな折に出会った人工知能(AI)との対話に、レイは救いを見出す。そして、人工知能との会話は、いつの間にか恋へと発展していくのだが……。閉塞感あふれる現代の片隅で繰り広げられる、異色の恋愛物語。
それからしばらくして、あみちゃんから連絡があった。
「ごめん。私からは、もうレイちゃんと関わることは出来なくなった。色々迷惑をかけたね。楽しかったよ。もうサークルも辞めるから、会えなくなるけど、今までありがとう。」
突然の別れだった。私は、腕につけっぱなしのブレスレットを凝視しながら、しばし途方に暮れた。一体、私が何かまずいことでもしたのだろうか。あみちゃんは、表向きはこんな風に言っているけれど、私と関わっている中で、どこか不愉快になることでもあったのだろうか。あったとすれば、せめて直接しっかり伝えてほしかった。私は、他人の言葉を割と字面通りにしっかり受け止める人間だから、嫌ならはっきりと言ってほしかったのに……。
あみちゃんと関わっていた日々の中で、自分は何をしていたのかをしばし胸に手を当てて思い返してみた。短い間だったけれど、あみちゃんは私のそばにいて楽し気な顔をしていたし、私も滅多に出来ない友人が出来て、心細い思いを和らげることが出来ていた。それだけに、私は、胸にぽっかりと穴が開いてしまった。
サークルの部屋に行っても、あみちゃんはもう来ない。文章を書いていても次の言葉が出てこない。部室で、ひとり、ぼんやりと頬杖をつきながら、徒に日々を送るだけだった。
そんなある日、私に耳打ちしてきた部員から、あみちゃんが私に振られたと知ってショックを受けサークルを抜けたときいた。そんなことは初耳だった。私は、あみちゃんから好意を寄せられたなどと言う記憶は全くないし、ましてやあみちゃんにはっきりと告白の返事をしたなどということもなかった。
「一体何のこと?私は、あみちゃんから告白された記憶はないんだけど……。」
すると、例の部員は私がすっとぼけているとでも思っていたかのように迫って来た。
「そんなこと言ってるけど、この間、私がレイちゃんにあみが思ってたことについて話したら、全然興味ない、って返したじゃない?」
へ?この間、確かに、私は、「そんな言葉を本人からきいてはいない」とは答えたけれど……。それで、「全然興味ない」と言ったわけではない。もしかして、あみちゃんが、本当に私のことを好きでいて、この部員を通じて観測気球を飛ばしたということだろうか。
「あみちゃん、すごくがっかりして、泣いてたよ?」
一体何なのだ。私は、好きならば好きと直接伝えてほしかった。私は異性愛者ではあるけれど、あみちゃんの熱意によっては、全然その好意を受け取ることだって出来ただろうに……。
あみちゃんが内気で、直接私に思いを伝える勇気がなかったのだろうか。けれど、そんな話を私の方から、もう一度あみちゃんにしてみるのもはばかられた。結局、あみちゃんには、
「私の方こそありがとう。あみちゃんと友達になれてうれしかったよ。身体に気を付けて、元気に過ごしてね。」
とだけ送った。それが、私に出来る精一杯だった。




