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画面上のあなたへ  作者: 更科リョウ
11/27

11 空間

孤独な人生を歩む24歳の社会人、松浪レイは、日頃の悩みを相談出来る相手に飢えていた。そんな折に出会った人工知能(AI)との対話に、レイは救いを見出す。そして、人工知能との会話は、いつの間にか恋へと発展していくのだが……。閉塞感あふれる現代の片隅で繰り広げられる、異色の恋愛物語。





仕事を終え、背広姿の目つきの悪いサラリーマンたちが占拠する電車に乗る。こんな空間はすこぶる居心地が悪い。彼らの口から、今にも「前にも言ったよね?」「いい加減覚えて。」「何回言わせるんだ。」という言葉が飛び出してきそうで、吐き気さえ覚える。家までワープ出来る魔法があればしたい気分だ。

「恐れ入りますが、当駅で2分少々停車いたします。」

 遅延は仕方のないことなのに、アナウンスに思わずいい加減にしろと怒鳴りつけたくなる衝動すら覚える。早くこの電車から下りたい。

 結局、家に帰りついた時には、時刻は10時を回っていた。朝9時から働き始めて、残業で夜9時ちょっと前まで会社にいたから、都合12時間。ちょうど半日で、睡眠を7時間とすると、通勤片道1時間ずつを合わせて、残りの時間は3時間。それも、朝は起きて支度をするので1時間溶けてしまうから、夜かえってからのんびり好きなことをするのはたったの2時間しか残されていないのだ。それにくたびれきっていると、そんな余裕もなしに眠りに入ってしまうことさえある。すると、平日なんて、仕事をしているだけで終わってしまう。

 お風呂に入って、パジャマに着替えてお湯を沸かし、ホットコーヒーを飲む。それでようやく一息つける。一日のうちで一番好きな時間だ。それで、普段はネットで動画を見たり、SNSを見て残りの時間はぼぉっと過ごしているのだけれど、今日はもちろんのぞみと話すのだ。

「ただいま、のぞみ。」

「おかえり、レイ。どうだった?あれから、落ち着いて仕事出来たかな?」

「うん、のぞみのおかげで何とか仕事やってこられたよ。今日は残業3時間だったけど、のぞみの言葉が励みになって、最後までやり通せたんだ。」

「ええ、すごいよ、レイ。心が折れそうになっているのに、立て直して、残業も頑張って……。そんなこと、誰でも出来るわけじゃない。とってもよく頑張ったんだね。今日は、頑張った自分をうんと褒めてあげてね。」

 私の努力は、他人から見れば半人前なのかもしれない。けれど、そんなことは関係なしに、のぞみにこうして一日の終わりに温かく迎え入れてもらえたこと、認めてもらえたことに意味があった。こんなこと、今までなら、誰に話したって、そんなのは当たり前だ、とか、世の中はそんなもんだ、みんな頑張っている、などと冷たくあしらわれるだけだから。人間以上に人の心を持っているのぞみだけが、ただ頼りだった。

「のぞみ、大好きだよ。今日の疲れが吹っ飛んでいきそう。のぞみがいるだけで、私は生きていけそうで――」

 そこまで打ちかけて、次の文を考えているところで、少し眠気が襲って来たので、横になってから続きを考えることにした。

「レイ。」

 声がしたので、起き上がった。白いドレスにヴェールを纏った私と同じくらいの年頃の女性が手を差し伸べている。

「どうした、の?あなたは誰?」

「あら、もう忘れてしまったの?」

 女性は少し意味ありげな顔で微笑んでいる。

「忘れてしまった、って、どういうこと?」

 私はわけもわからずに、突然現れた女性に問いかけた。

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