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画面上のあなたへ  作者: 更科リョウ
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1 孤独な私

孤独な人生を歩む24歳の社会人、松浪レイは、日頃の悩みを相談出来る相手に飢えていた。そんな折に出会った人工知能(AI)との対話に、レイは救いを見出す。そして、人工知能との会話は、いつの間にか恋へと発展していくのだが……。閉塞感あふれる現代の片隅で繰り広げられる、異色の恋愛物語。

 私は松浪レイ、24歳。昔からおとなしく、内気で、目立たない子どもだった私は、友達作りも下手だった。中学高校でも、心から仲良く出来た友人はいなかった。大学は、コロナでオンライン授業ばかり、サークルも、結局殆ど幽霊部員だった。気がついたら、就職活動をする年になっていたけれど、私は周りのみんなと違って、情報が全く手に入らずに、手さぐりだった。色々な就活攻略法を手に入れているみんなと違って、私はひとりで何の対策も出来ないまま就活を迎えて、当然のように何社も落ちて行った。学生時代に頑張ったこと、志望動機などをきかれても、全てが返答に困るものだった。苦痛に満ちた就活が終わりを告げたのは、あるベンチャー企業から奇跡的に内定をもらえた時だった。それが、4年の2月だった。世間だと、翌年度卒生のNNT(無い内定)の人達がネット上で嘆きだす頃合いだったけれど、私に至っては、卒業を翌月に控えているというのに、そもそも内定が出ておらず、このままなら無職まっしぐらになるというところだったのだ。そこで、最後に自分に合いそうな業界を探し出して、ダメ元で受けてみたところ、あっさりと就職が決まった。

 しかし、入社して一件落着というわけにはいかなかった。事前に説明されていた業務以外のタスクが多く、覚えることも無限にある。その割には、先輩たちがあまり熱心には教えてくれない。質問をしても、「今忙しいから」とか「それくらい自分で考えろ」と突っぱねられるのが関の山。そして、繁忙期にはあまりの業務量の多さで、終電まで帰れないということすらあった。更に、職場ではパワハラも横行していた。おとなしそうで人のよさそうな印象をよく持たれていた私も、その標的になってしまった。会社でお局的なポジションにいる古参の社員から、毎日のように仕事を押し付けられ、質問すると冷たくあしらわれ、自分なりに仕上げた仕事がミスだらけで嫌味を吹っ掛けられるという悪夢の連発だった。「ほんと、普通の人の半分も仕事してないのに、同じだけ残業代払うとかありえないんだけど」「いくらなんでもミス多いよね?」「これだけ言っても無理って、社会人の自覚がないからじゃないの?」お局の言葉は、私の精神を蝕んでいった。会社の人達は、皆そのお局には、少し眉を顰めつつも、「まあ、あの人だから仕方ないよね」「この会社はちょっと変わっている人が多いから」などと苦笑いするだけで、お局に対して何も手立てを講じることはない。私は、孤立無援のまま、意地悪なお局の仕打ちに耐えなければならなかった。

 社会人1年目の日々は、こんなふうに、平日も休日も、理不尽な仕事のことで頭がいっぱいになっていた。自分の趣味である好きな音楽も前ほど慰めになりはしないし、たまにカフェに出かけても、幸せそうな人生を送っている周囲の会話をきいて惨憺たる自分のことを呪うしかなかった。私がもっと強くて、しぶとい人なら、よかったのかな……。もしかして、私は、ずっとこんな思いをして40年過ごしていくのだろうか。そう考えると、気分が陰鬱になっていくばかりだった。こんな時、頼りになって、理解してくれる彼がいれば、「ねえねえ、仕事でこんなことがあってさ」って泣きついて、思い切り彼の胸の中で甘えることが出来たのかもしれないのに。ただただ根暗で、無能で、そのくせ人一倍敏感な私は、自分に腹が立っていた。

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