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悪役令嬢シャーロットは知っている ~この国、私が変えなきゃ終わるってこと  作者: 妙雨


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第12話:動き出す同志たち

夜会での一件は、王都の社交界に大きな波紋を呼んだ。グランディエ公爵令嬢シャーロットが、公然とドールマン男爵の不正を指摘し、それを王太子レイモンドが擁護したという事実は、腐敗した貴族たちに動揺を与え、同時に、一部の貴族や平民たちに、微かな希望の光を灯した。


しかし、シャーロットは満足していなかった。ドールマン男爵のような末端の貴族をやり込めたところで、国の根深い腐敗が解決するわけではない。彼女の真の狙いは、その背後にいる、より大きな権力を持つ貴族たちだった。特に、シュワルツ侯爵家は、長年にわたり国王派の政治に反発し、様々な利権を貪ってきた。彼らの不正を暴き、力を削ぐことが、改革を進める上で不可欠だった。


夜会の翌日、グランディエ公爵邸のシャーロットの秘密の執務室には、いつものように同志たちが集まっていた。ルーク、マリー、フィン。彼らはシャーロットの指示で、夜会で得られた情報を整理・分析していた。


「マリー、昨夜の夜会での貴族たちの反応を詳しく報告しなさい」


シャーロットは、肘掛け椅子に座り、優雅に紅茶を傾けながら命じた。


「はい、ドールマン男爵の件で、シュワルツ侯爵は露骨に不快感を示しておりました。また、侯爵の派閥に属する数名の貴族も、同様に動揺の色を隠せない様子でした。一方で、国王派に属する貴族の中には、殿下の言葉に安堵し、グランディエ公爵令嬢様のご見識を褒め称える者もおりました」


マリーは、完璧な記憶力で、夜会での貴族たちの表情や言葉の端々を再現した。


「なるほど。やはり、シュワルツ侯爵は動揺しているわね。フィン、ドールマン男爵の領地の税収に関する記録と、彼の過去の商取引の記録を詳しく調べて。特に、シュワルツ侯爵家との関連性を」


シャーロットは、フィンに新たな指示を出した。リリアが持つ数字の才能が、ここで大いに活かされることになるだろう。


「承知いたしました。ただちに図書館と、可能な限り公文書館の記録を調査いたします」


フィンは、無駄のない動きで部屋を出て行った。彼の記憶力と、情報収集能力は、シャーロットの改革において不可欠なものとなっていた。


「ルーク、貴方はシュワルツ侯爵家の周辺を重点的に調査しなさい。特に、夜間に出入りする怪しい人物や、隠された取引の情報に目を光らせて。必要であれば、王都の裏社会の人間にも接触しても構いません」


シャーロットの言葉に、ルークの瞳が鋭く光った。彼は護衛騎士としての訓練に加え、シャーロットから教えられた潜入や情報収集の技術を磨き続けていた。


「承知いたしました。必ずや、侯爵家の裏を暴いてまいります」


ルークは、力強く頷いた。


「リリア、貴女はマリーと共に、ドールマン男爵の領地の農民たちの現状を詳しく調査してください。特に、実際に徴収された税額と、彼らの生活状況に関する具体的な数字を集めるのです。貴女の数字の才能が、ここで最も必要となるわ」


シャーロットは、リリアに直接指示を与えた。リリアの顔には、緊張と同時に、シャーロットの役に立てるという喜びが浮かんでいた。


「はい、シャーロット様! 全力で務めさせていただきます!」


リリアは、強く拳を握りしめた。彼女の才能が、ついに大きな舞台で活かされる時が来たのだ。


同志たちがそれぞれの任務へと散っていった後、シャーロットは一人、窓辺に立ち、王都の街並みを見下ろしていた。きらびやかな貴族街の向こうには、平民が暮らす密集した区画が広がり、さらにその奥には、貧困にあえぐスラム街が広がっている。前世の知識で、彼女は知っている。この美しい王都の地下には、泥沼のような腐敗と、民衆の深い絶望が渦巻いていることを。


そして、彼女は、もう一つの重要な問題に直面していた。


「どれほど明確な証拠を集めたとしても、今の王国の体制では、腐敗した貴族は、その証拠をもみ消し、自分たちを守ろうとするだろう……」


シャーロットは、冷徹に現状を分析した。アルカディア王国の司法は、貴族の権力に大きく左右される。特に、シュワルツ侯爵家のような有力貴族は、裁判官や官僚を買収し、不利な証拠を簡単に揉み消すことができる。それでは、どれほど苦労して集めた証拠も、無駄になってしまう。


「必要なのは、証拠をもみ消すことができない、絶対的な公平性を持った『体制』よ」


シャーロットの頭の中で、前世で学んだ「三権分立」や「監査機関」といった概念が、具体的な形を帯びていく。しかし、それをこの世界で実現するには、あまりにも大きな壁がある。既存の権力構造を根本から変えなければならないのだ。


そのためには、国王エドワードと、王太子レイモンドの絶対的な信頼と協力が不可欠だった。そして、彼らを動かすためには、シャーロット自身の「悪役令嬢」としての評判を利用し、世論を味方につける必要がある。


シャーロットは、大きく息を吐いた。


「そのためには、まず、より強力な味方を作る必要があるわ。そして、その味方を動かすための、確かな証拠をね」


彼女の脳裏に浮かんだのは、王都でも屈指の清廉潔白さを誇る「聖女の家」と呼ばれる公爵家、そして、学園内で出会った、とある子爵令息の顔だった。

彼らの協力があれば、シャーロットの計画は、さらに大きく前進するだろう。


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王城の一室、レイモンドの執務室。


「クラウス、ドールマン男爵の件だが、詳しい状況を調べてほしい」


レイモンドは、書類から顔を上げ、クラウスに命じた。夜会でのシャーロットとドールマン男爵のやり取りが、彼の頭から離れない。


「かしこまりました。ドールマン領の税制、収穫量、そして農民たちの状況について、早急に調査を進めます」


クラウスは、レイモンドの言葉に何の疑問も抱かず、即座に答えた。彼は、レイモンドがシャーロットの言葉を真剣に受け止めていることを理解していた。


「特に、今年の収穫量が例年並みであるにも関わらず、なぜ増税が行われているのか。そして、それによって農民たちがどれほどの苦境に陥っているのかを、詳細に報告してほしい」


レイモンドの表情は、真剣そのものだった。シャーロットの言葉が、彼の王としての正義感を強く刺激していた。


「承知いたしました。ドールマン男爵が、シュワルツ侯爵の派閥に属していることも考慮し、その裏に何か繋がりがないかも併せて調査します」


クラウスは、レイモンドが言及する前に、すでにシュワルツ侯爵家の関与を疑っていた。彼の冷徹な分析力は、レイモンドの思考のさらに先を行っていた。


「頼む、クラウス。ロティが、あそこまで公衆の面前で問題提起をするのは、よほどの事態なのだろう」


レイモンドは、シャーロットの行動の裏に、単なる「悪役令嬢」としてのパフォーマンスだけではない、深い危機感があることを感じ取っていた。




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