年上としてのプライド
「お父さーん。ダイチさん連れて来たよー」
ここはココアの実家でもあり、村にある一軒だけの鍛冶屋。
「おう、おかえり。ダイチもよく来てくれたな、今持ってくるから茶でも飲みながら待っててくれ」
ガタイのいい中年の男性。
ココアの父親で、名は「ガストン」
作業場へ移動するのを見送ったココアは、俺の手を引きながら家の中に入った。
「今お茶を入れるので、座って待っててください」
「わかった」
俺は椅子に腰を下ろし、一息つくとボーッと時間を潰した。
台所から紅茶のいい匂いがしてきた。
ちなみに茶葉も俺は育てている。
それに希望者には種を配布し、家庭菜園的な事をしてもらっている。
ココアも自分で育てたものを使用している。
俺は能力のせいか、匂いを嗅ぐだけで野菜や茶葉の出来の良さが分かる。
前回は微妙だったが、今回のは良い出来のようだ。
「お待たせしました~。どうぞ」
「ありがとう」
何も入れず、一口啜った。
うん、やっぱり良い出来だ。
向かいの椅子に座ったココアは、砂糖を三杯加えた。
相変わらず甘いのが好きだな……。
この砂糖も、俺の畑で育てたサトウキビから生成している。
砂糖は、俺がこの村での信用を勝ち取ったきっかけでもある。
大したことはしておらず、ただ砂糖を作って配布しただけだ。
それにより、女性陣からの俺の評価が「余所者」から「砂糖を作れる男」に変わった。
たったそれだけだが、この村では役割を得るというのは、住人としての第一歩でもある。
その後、果物やサツマイモなどの野菜をお裾分けしていき、この村での「野菜を作る人」の地位を確固たるものにした。
それからちょこちょこと、人が来るようになり、次第に野菜と別の物とで物々交換をするようになった。
中でもココアが一番多く来ている気がする。
目当ては甘い物だろうが、それでも話し相手になってくれているので、正直嬉しい。
いつか彼女も恋人を作ったら、来る頻度は減るんだろうな……少し寂しいが、仕方のないことだけど。
残りの紅茶を啜っていると、扉が開き、親父さんが顔を出した。
「結構重いから、荷車の上に積んでおいたぞ。一人で引いて帰れるか?」
「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」
「荷車はそのままお前の家に置いておいてくれ。ココアが次に行った時に回収するから」
コップの中の紅茶をグイッと飲み干し、席を立つ。
「もう帰るんですか?」
「プニ雄が一人で畑仕事してるからな。それに、小屋も早く見せてやりたいし」
「そうですか……では家までお見送りを――」
「何度も往復させるのは悪いからな。一人で帰るよ、それじゃまたね」
俺はサッサと鍛冶屋から出ると、外に置いてあった荷車を見た。
荷車の上には、大きめの犬小屋が置かれていた。
俺が犬小屋のデザインでお願いしたからな、プニ雄も気に入ってくれるだろうか。
荷車の取っ手を持つと、力を込める――あれ……お、重いな。
ココアにああ言った手前、力を借りるのは年上としてのプライドが許さない。
「やっぱり私も行きましょうか?」
「……大丈夫だ。問題ない」
心配そうに見つめるココアに、一番いいセリフを吐き、気合を入れて力を入れた。
俺だって元冒険者なんだ……これくらいわけないさ!
その後、10分の道のりを30分かけて帰った。




