私も住む!!
「誰ですかその女」
一夜明け、プニ雄を抱えたルナと共にロイの家へ向かう途中、ココアと遭遇した。
「あー、いや、、この人はだな……」
なんでか知らないが、やましい事をしたような気持ちになってしまった。
下手な言い訳はするだけ無駄だろう。
そもそも言い訳をする必要はないんだけどな。
「プニ雄……そう、プニ雄を知っているらしくてな! それで昨日会いに来てくれたんだよ!」
「プニ雄ちゃんの、ですか……」
「プニ雄じゃなく、魔王様よ」
「そうですか……」
ココアはそれだけ言うと、何かを考え初め。
口を開いた。
「初めまして、ダイチさんと凄く仲良くしてもらっている。ココアといいます」
「そうなの。私はルナ・シルヴァ、魔王様の側近よ」
へえ、それは初めて聞いた。
もしかしたら、プニ雄は本当に元魔王なのかもしれない。
実際初めて会った時はかなり弱っていたしな。
勇者との戦いで、命からがら何とか逃げきれたって感じか。
ルナの腕の中で、鼻ちょうちんを出しながら寝ているプニ雄を見る。
うーん……もう少し様子を見てみよう。
普段の様子を見ていても、とてもじゃないが魔王らしい振る舞いをしていないので、判断に困る。
「ダイチさん。ルナさんは何時まで滞在するんですか?」
「いや、一緒に住む予定だけど」
俺がそう言うと、ココアは目を見開いた。
「な、な何でですか!? 一緒に住むんですか?!」
「ええそうよ。本当は魔王様とがいいのだけれど……魔王様がこの男の傍を離れたがらないんだもの。仕方なくよ」
「そう、ですか……。ダイチさん」
「なんだ?」
「私も住んでいいですか?」
「え、いや、普通にダメだろ」
普通に考えてダメでしょ。
ココアは村に家があるんだし。
それに俺の家は、大人が三人も住むには狭すぎる。
昨日だってベッドはルナに使わせて、俺はソファー代わりにしている長椅子で寝たんだ。
おかげで体がガチガチに固まって痛いんだ。
「何でですか! その人はいいのに私はダメなんですか?!」
「ココアは村に家があるだろ。それに親父さんたちが許可しないって」
ココアは「ぐぬぬ」と唸り、くるりと体の向きを変えると言った。
「許可貰ってきます!!」
そう言うと駆け出して行った。
は、速い……。
「元気な子ね」
「そうだな。良い子だから仲良くしてやってくれ」
「……仲良くするのはアナタの方じゃない?」
「――? それなりに仲良いぞ?」
……仲良いよな? 会えば会話はするし、畑仕事だって手伝ってくれている。
汚れたからって言って、風呂も貸してるし……仲が悪かったら、こうはならないよな? うん、仲良いな。
ルナがあからさまにため息を吐いて、歩き出した。
「ほら、行くわよ」
「――はいはい」
◇
そのあとは、誰にも会うことなくロイの家に辿り着いた。
扉をノックすると、ロイが現れた。
「どちら様――ダイチか、昨日ぶりだね、っとそちらは?」
「俺の家に住むことになったルナだ」
「……え……え? いつ、え?」
ロイが何故か混乱している。
昨日プニ雄の知り合いの女がうちに来ていると話していたはずなんだが。
そこにリネッタがやってきた。
「なんだい、ダイチはまた来たのかい? ……誰だいその女ぁ」
「今日から俺の家で暮らすことになったルナだ。昨日下ぎぐえっ!」
言い終わる前に首を捕まれ持ち上げられた。
ぐ、ぐぐ……ちょ、なん、で……。
俺はリネッタの手をタップするも、離してもらえない。
あ、やばい、意識が……。
「リネッタ! 離してあげて!」
「――ちっ」
手を離され、崩れ落ち咳き込む。
「ゴホッゴホッ、な、何すんだよ……」
「ココアというものがありながら、他の女を連れ込むたぁいい度胸じゃないか」
リネッタは拳の骨をボキボキ鳴らしながら、空間が歪むほどの闘気を出していた。
な、何を勘違いしてんだこのゴリラ……! ここだ死んでたまるか!
ゆらりと立ち上がり、能力を使い木の根を地面から突き出す。
いくらこのゴリラウーマンのフィジカルが強かろうとも、俺の能力で完封してやるよ。
そんな二人の間に割って入る影が――。
「……はぁ。待ちなさい。アナタは言葉が足りなすぎよ。私はこの魔王様と一緒に住むために、この男の家に住むのよ。理解した?」
「……魔王? その子はプニ雄じゃないか」
「この女がそう言ってるだけだ」
「……そうかい、詳しく話しな」
急に知性を上げやがって……。
その理性的な判断を、俺の首を掴む前に発揮して欲しかったな。
俺は昨日の出来事を話した。
◇
「なるほどぉ、理由はわかった。ところでココアにはこの話しはしてあるだろうね?」
「ココアか? ここに来る前に会って話したな。自分も住みたいからって、親父さんたちの許可を貰いに行ったな。まあ無理だろうけど」
リネッタとロイは揃って肩を竦めて「やれやれ」といった態度をとった。
「なんだよ」
「君はもう少し学んだ方がいいよ」
「まったくだねぇ」
「うるさいなあ、それよりも今日は用があってきたんだよ。実は――」
今日来た目的を伝えた。
「ああ、下着か。たしかに昨日は服だけだったからね。僕も気付けばよかったね」
「そういうことなら中に入りな――そう言えば名前はなんて言うんだい?」
「ルナ。ルナ・シルヴァよ」
「私はリネッタだ、よろしく。それじゃぁルナ、下着の採寸は私の担当だからこっちに来な」
そう言ってるルナを家の中へ連れて行った。