表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/16

二人目の同居人

「一緒に住む? なんでだ?」


「ここ以外に住むところなんてあるの?」


「あるよ」


 普通にある。


 まあ、あるといっても小屋を建てないといけないけど。


 それまではうちに住まわせてもいいが……ずっとというのは、ねえ。


 俺も男なんだし、何かあってからでは遅い。


 だがルナはこう言った。


「魔王様の傍を離れる気はないわ」


 お互いプニ雄をチラリと見る。


 自分の皿に残ったソースをペロペロ舐めて綺麗にしている。


 魔王がこんなことするだろうか……。


 誤解の可能性も高いが、今は目先の問題から解決しよう。


「まあ……一緒に住むのは構わないが――」


「え? 一緒には住まないわよ?」


 おやー? そういう意味じゃなかったのか?


「ここに住むって言ったじゃないか」


「ええ、この家に住むからアナタは出て行ってね」


 おっと、想定外の答えだ。


 どうやらこの女の言う「一緒に住む」とは、“プニ雄と“一緒に住むことで、そこに俺は含まれていないようだ。


 女のとんでもない発言に、俺は頭を抱えた。


「出て行ってとは言ったけれど、助けて貰った恩は必ず返すから安心して」


「いや、俺の家なんだから出てくわけないだろ」


「な、なんで?!」


 こっちのセリフだよ、イカれてんのかこの女。


 少なくとも与えた恩を仇で返す人間――魔族に優しくする気はない。


「魔王軍が再興した暁には、アナタのことはちゃんと保護するし、良い待遇で迎え入れてあげ――痛い!」


 そんな女の言葉を遮るように、女を叩いた。


 プニ雄が。


 プルプルボディから鞭のように伸ばした腕を振り回し、女をシバキ倒す。


「痛い痛い痛い! ま、魔王様おやめ下さい!」


 どうやらプニ雄も女の要求が理不尽だと理解してくれたようだ。賢い子だ。


 ペチンペチンと小気味いい音が部屋に響き渡る。



    ◇


「申し訳ありませんでした……どうかこの家に置いてください……」


 プニ雄にシバキ倒された女は、土下座しながらそう言った。


 まあ……ムカつきはしたが、プニ雄が代わりに怒ってくれたのでチャラにしてやろう。


 実際に家を乗っ取られたとか、そういう被害を受けたわけではないんだし。


「わかった許すよ。ただし、この村の決まりは必ず守ってくれ」


 俺の言葉にルナは腫れ上がった顔をパアッと明るくした。


 思った以上にボコボコにされてるな……。


 タンスから回復薬を取り出し、ルナに差し出す。


「回復薬だ、使っていいぞ」


「自分で治せるからいらないわ」


 するとルナが指先に魔法陣を描くと、見る見るうちに顔の腫れが引いていった。


 驚いた……回復魔法まで使えるのか。


 魔王を崇拝しているのに、神を信じているのか。


 この世界の回復魔法は教会に所属している者か、信心深い者だけが使える。


 要は、神を心の底から崇拝する者にのみ与えられる奇跡の魔法なのだ。


「もしかして、元教会関係者だったのか?」


「なんで私があんな所に所属するのよ」


「え、だって回復魔法使ったし」


「……ああ、これって別に崇拝するものは人間の神じゃなくてもいいのよ。私は魔王様を崇拝しているから使えるの」


「そんな仕組みだったのか……」


 知らなかった……俺がこの世界に来て聞いた話とは全然違うな。


 ということは俺も誰かを崇拝すると使えるようになるのかな?


 頭の中に転生した際に出会った人物が浮かぶ。


 感謝はしてるが、あいつのミスで死んだからな……。


「ところで」


 ルナはそう言うとモジモジし始めた。


「なんだ?」


「その……下着は新しいのないの?」


「すまん、そこまで頭が回らなかった」


 明日またロイの所に行こう。


 そのついでにルナも皆に紹介して回るかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ