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第5話 追跡ッ!鬼ヶ島──ッ!

 環状線に入ると、トラックや乗用車、バン等の一般車が行き交っていました。

 ですが、前方はもちろん、バックミラーにも、「鬼ヶ島」と思われる車は見当たりません。

 MOMO太郎は、特に踏み込んだりする事もなく、制限速度を守りながら、平和な環状線を楽しんでいました。

 しばらく走っていると、バックミラーに一つ、様子のおかしいヘッドライトが写りました。やがてそれは二つ、三つと数を増やしていきます。

 それらの光は、道幅一杯を左右に大きく揺れながらこちらに迫って来ました。

「ああ、ついに来た。間違いない、“鬼ヶ島”だ」

 一般車の間を、鬼のようなスラロームで追い抜きながら、甲高いエキゾーストノートを奏でている車。時折パッシングのようなことをしているのも見えました。

 めちゃくちゃな走り方であることは一目でわかります。間違いありません、チーム「鬼ヶ島」です。同時に、場の空気が張り詰めたのがわかりました。

 ぐんぐんと距離を詰めてくる後続車。近づいてくる排気音、スキール音。

 MOMO太郎は、ステアリングを握る手が少し震え、汗ばんでいる事に驚きました。胸の鼓動も激しくなり、自分の車の音すら聞こえなくなってしまいました。

 一呼吸をしているうちに、その車らはMOMO太郎の真横を通り過ぎました。

 車種は、魔改造が施されいて断定はできませんでした。

 時折火花を上げて走るほどのベッタベタの車高、そこから僅かに覗くネオンの光、空に向かって伸びる数本のマフラー、ギラつくホイール……。走行性能を求めた改造のみを施してきたMOMO太郎の目には、異様な物としか映りませんでした。

 ですが、セダンである事は間違いなさそうです。

 すると、お供のパトカー、覆面がサイレンを鳴らし、追跡に入りました。スピーカーからは「止まれ!危ないから止まれ!止ーまーれー!」「みっともないから止めろ!サーキットちゃうぞここはァ!」と、必死に警告しています。

 MOMO太郎との連携など知ったこっちゃない、という声が聞こえてくるようです。

 この異常すぎる光景を目にしたMOMO太郎ですが、少しの間を置いて、なんとか混乱から解放されました。

 同時に、臨海に達していた闘争心が激しく燃え上がるのがわかりました。

 ギアを2速にぶち込み、アクセルを限界まで踏み抜きました。

 猛然と加速するグランド。MOMO太郎はシートに張り付けられたように錯覚しました。

 周りの景色が恐ろしい速度で流れていきます。80km/h巡行の一般車が異様にトロくなり、頭上を通り抜ける街灯、ビルのネオン広告が線のように伸びて見えます。

 路面の小さな凹凸で車体は激しく揺れ、それを抑えるために、常にステアリングと格闘していました。

「止まれ!いい加減にせんかい!事故るぞお前らァ!」

 このけたたましいサイレンとスピーカーの声は想像以上に大きく、グランドの音も半分ほど掻き消される程でした。

 それに気がついたMOMO太郎は、ある作戦を思いつきました。

「奴らの車もそれなりにうるさい……。そしてサイレン、お巡りさんの声もある。排気音でこっちの場所が察知されるとしたら、それは射程距離に入った時だな」

 鬼ヶ島の車達は派手さを求めるあまり、フルスモークだったのです。

 視界が制限されているなら、他車の存在は音を頼りにしていると思ったのです。

 それに加え、彼らの車も爆音です。周りの音すら聞き取りづらい状況ならば、こちらの音を聞くことすらままならないでしょう。

 お供2台が縦に並んで走っている後ろに、MOMO太郎はテールトゥノーズさながらの距離で張り付き、スリップストリームの姿勢をとりました。ほんの少しでも距離感を見誤れば、お供諸共クラッシュするのは明白でした。

 しかし、お巡りさんは前方の鬼ヶ島しか見ていないのか、焦る様子は全くありません。MOMO太郎にとっては好都合でした。距離が詰め放題だからです。

「前方の様子は見えないが、お巡りさんの動きでわかる。この2台が減速する時、それは奴らが減速した時だ。その一瞬の隙に距離を詰める。奴らの退路を断つ。勝負はそこからだ」

※スモークは法令で定められた濃さというものがあります。施工する場合はしっかりと確認を行いましょう。また、視界が悪化する為、周囲の確認が困難になる場合もあります。全て自己責任です。それでもスモークをつけたいのであれば、それらを全て理解し、切符を切られる覚悟の上で施工を行いましょう。というかそもそも真似しないでください。

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